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育成馬ブログ 生産編①

離乳後の当歳馬たち

 

9月中旬、ようやく北海道らしい涼しい気候になり、

日高育成牧場の当歳馬5頭は、

大きな病気もなく、順調に成長しています。

 

すべての当歳は8月末までに離乳が終了しており、

現在は「保母役」の牝馬(繁殖を引退した19歳の馬)に

見守られながら、22時間の昼夜放牧をしています。

  

9月15日現在、

放牧地の青草と1日1kgのバランサータイプの飼料のみで、

ADG(1日あたりの体重増加量)は

0.8~1.0kg/日と安定して推移しています。

  

心地よい気候の中で、

夢中で青草を食べる当歳馬達を見ていると、

この離乳期の当歳にとって放牧地の青草が

何よりも重要であることを実感します。

  

1 

 「保母役」の牝馬と当歳たち

 

2

虹をバックに青草を食べる当歳たち

  

  

ローソニア感染症に注意!!

 

この時期の当歳馬にとって、注意しなくてはならない病気は

「ローソニア感染症」です。

  

ローソニア感染症は、

Lawsonia Intracellurarisという細菌による感染症で、

症状は、

・元気消失

・食欲不振

・体重減少・削痩

・発熱(39℃以上)

・毛艶悪化

・皮下浮腫

・下痢

・軽度の疝痛

など多岐にわたります。

 

3

ローソニア感染症の主な症状

  

  

ただし、注意が必要なのは、下痢や浮腫などの症状がなく、

食欲低下や体重減少のみが認められる感染馬もいるということです。

また、当歳馬だけではなく、1歳馬も発症することがあります。

  

血液検査をすると、

特徴的な「低タンパク血症」を確認することができますので、

上記の症状を認めた場合には、

早めに獣医師に検査してもらうことが重要です。

 

なぜなら、重篤化した場合、

抗生物質を長期間投与することに加え、

大幅な体重減少・削痩により市場価値が低下し、

場合によっては死亡例も認められるためです。

  

この病気は、離乳や寒冷によるストレスが

引き金になっていると言われていますが、

現在までのところ感染経路や発症要因などは十分わかっていません。

  

なお、ワクチン接種の予防効果がある程度認められています。

当歳馬に投与する場合には、

離乳ストレスによる発症を予防する目的で、

離乳前に接種するとよいでしょう。

  

いまだに感染経路や発症要因が

解明されていない本疾患に対しては、

「早期発見・早期治療」と「ワクチン接種」が

被害を最小限度に止めるための重要な措置と言えます。

 

4

ローソニアワクチンの接種

  

  

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。

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下記メールあてにお寄せ下さい。

皆様からいただきましたご意見は、

JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

 

活躍馬情報(事務局)

9月25日、日曜日の阪神2R(2歳未勝利)で、

日高育成牧場で生産されたJRAホームブレッドであり、

宮崎育成牧場で育成されたミュークレックス号が優勝しました。

惜敗続きでしたが、4戦目を一番人気で勝ち上がりました。

同馬は本年4月に開催された

2016年JRAブリーズアップセールで取引されました。

今後の活躍を期待しております。

 

201609252r 

 9月25日 4回阪神競馬6日目 第2R  2歳未勝利 芝 1,200m

ミュークレックス号(スノーボードロマンの14) 牡

【 厩舎:藤沢 則雄 厩舎(栗東) 父:バゴ 】

育成馬ブログ 宮崎①

○  「馬に親しむ日」の開催とサマーセール購買馬の入厩(宮崎)

 

宮崎育成牧場における馬事普及業務の最大のイベントともいえる

「馬に親しむ日」を8月28日に開催しました。

 

50%を超える降水確率のとおり、

開始前には激しい雨が降りましたが、

開場となった9時には雨も止み、開会式がスタートしました。

 

「馬に親しむ日」の名のとおり、

メインイベントとなる全国ポニー競馬選手権「ジョッキーベイビーズ」の

九州地区代表決定戦や草競馬のみならず、

乗馬試乗会、流鏑馬(やぶさめ)、装蹄実演、

ホースショー、ポニーショーなど盛りだくさんのイベントが行われました。

 

Photo

写真① 高校生によるミニチュアポニーのプリン(左)とモック(左)のショー

  

メインイベントであるポニー競馬は、

予選3組を勝ち上がった人馬6頭が決勝戦に進出することができます。

決勝戦では10月9日(日)に開催される

「第8回ジョッキーベイビーズ」の九州地区代表の

1枚の切符をかけた熱いレースが繰り広げられました。

 

結果は鹿児島県から参加の「ユキノビクトリー号」に騎乗した

上薄君(小学6年生)がスタートダッシュを決めて、

そのまま先頭を譲ることなくゴールし、九州地区代表の座に輝きました。

 

Photo_2

写真② ポニー競馬決勝では11番ユキノビクトリー号(左)に騎乗した

上薄君(小6)が優勝し、10月9日に東京競馬場で行われる

「第8回ジョッキーベイビーズ」の九州地区の代表に輝きました。

 

昨年に引き続き、今年もスペシャルゲストとして

名古屋競馬で活躍する木之前騎手をお招きし、

トークショー、ポニー競馬のパドック解説や

優勝騎手へのプレゼンターのみならず、

草競馬の誘導馬の騎乗までお手伝いいただきました。

ご存知のように、木之前騎手は宮崎県三股町の出身であり、

小学6年生から当場の乗馬スポーツ少年団で

乗馬をされていたという縁があり、

凱旋といった感じでお越しいただきました。

 

このイベントの前の週には、地元のテレビ局で

木之前騎手の名古屋競馬場での密着取材の模様が放送されており、

多くの来場者が記念撮影やサインを頼んでいました。

笑顔で対応する木之前騎手の表情はとても印象的でした。

 

Photo_3 

写真③ 優勝騎手の上薄君と関係者による口取り写真(左)、

スペシャルゲストの木之前騎手から

「第7回ジョッキーベイビーズ」の招待状を受け取る優勝騎手の上薄君(右)。

 

終了間際に小雨に見舞われましたが、

日中は晴天に恵まれたことも手伝い、

お蔭様で約6,000名(うちお子様約2,000名)を

超えるお客様が来場されました。

 

このようなイベントを通じて馬と触れあうことによって、馬のみならず

競馬への興味を深めていただけるのではないかと思っております。

この場をお借りいたしまして、ご来場いただきましたお客様、

ならびにご協力いただきました関係者の皆様に感謝申し上げます。

 

馬に親しむ日が終わると、いよいよ育成馬の馴致がスタートします。

9月3日には日高育成牧場で生産されたJRAホームブレッド2頭のほか

サマーセールで購買した馬15頭が入厩しました。

これにより、

本年度の宮崎育成牧場繋養馬22頭(牡10頭、牝12頭)がすべて揃い、

今後は牡から順次、騎乗馴致を開始していく予定です。

次回は馴致の様子をお伝えいたします。

 

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写真④ 最初の放牧で初めての仲間と挨拶を交わし、序列を確認する育成馬たち。