育成馬ブログ 生産編⑨(その1)
●1歳馬のセールス・プレップについて(その1)
○生産牧場で行われるセールス・プレップ
今回は、ケンタッキーで行われている
1歳馬のセリに向けての準備(セールス・プレップ)についてご紹介します。
最初に、用語の確認です(図1)。
セリ(Sales)に向けて準備(Preparation)すること、
具体的には、毎日手入れをして馬をきれいに磨き、
躾や引き馬の練習を入念に行ってセリ会場で
お客様の前でしっかり展示できるようにすることを
セールス・プレップと言います。
そしてセリ本番での販売を委託(Consign)されること、
具体的には、広告(ホームページへの馬の写真や動画の掲載など)、
セリ会場での下見対応、上場手続きなどを行うことを
コンサイニングと言います。
そして、コンサイニングを請け負う牧場のことをコンサイナーと呼びます。
日本の馬産地では育成牧場がコンサイナーとなり、
セリの1~2ヶ月前に生産牧場から馬を預かって
セールス・プレップを行うのが一般的です。
一方、ケンタッキーでは育成牧場が
少なく(米国の育成の中心はフロリダ州オカラ)、
生産牧場がセールス・プレップを行っています。
そして、同じく生産牧場がコンサイナーになります。
日本と同じくコンサイナーに預けられてセールス・プレップが
行われることもありますが、自分たちでセールス・プレップを行って
セリ本番のみコンサイナーに預けるというパターンも多く認められます。
大手の牧場ばかりがコンサイナーとなっているかといえばそうとも言えず、
大手の牧場の中でもセールス・プレップのみ行い、
セリ本番は他のコンサイニングを行っている牧場に
預託するということが多々あります。
少々話がそれましたが、今回はケンタッキーで行われている
生産牧場でのセールス・プレップについてご紹介します。
図1 セールス・プレップとコンサイニング
○セリに上場される馬とされない馬の飼養管理の違い
日本と同じく、1歳の段階ですでにオーナーが決まっていてセリには
上場されない馬と、新たな買い手を求めてセリに上場される馬の
2パターンがあり、それぞれ管理方法が違います。
まずセリに上場されない馬ですが、ケンタッキーにはライムストーンと
呼ばれる石灰岩の層の上にアルカリ性の土壌が広がっており、
ケンタッキーブルーグラスを中心とした青草から
天然のミネラル分(カルシウムなど)が補給される恵まれた環境にあります。
また、新潟市と同じくらいの緯度にあり、
夏は暑過ぎず冬は寒過ぎない快適な気候を有しています。
ですので、セリに上場されない馬は悪天候時などの例外を除き、
基本的には24時間放牧が行われており、馬が怪我をしていないかなど
馬体のチェックを兼ねて朝夕2回放牧地で飼付されます。
一方、1歳セリは日本と同じく7~10月の夏季に開催されるため、
24時間放牧しているとどうしてもたてがみや体毛が
日焼けしてしまいます(図2)。
これは馬の成長には全く影響しませんが見栄えが悪くなるため、
セリに上場される馬は昼間の日光の強い時間を馬房内で過ごして、
夜間放牧(19時から翌朝7時まで)されています。
図2 セリに上場される馬は日焼けを防ぐため夜間放牧される
(つづく)