育成馬ブログ 生産編⑦
今回は、米国ケンタッキー州での
特に当歳から1歳にかけての冬期の飼養管理方法についてご紹介します。
●米国と日本の地理の比較
米国のサラブレッド生産の中心地であるケンタッキー州レキシントン地区は、
日本でいうと新潟市と同じ緯度に位置しています(図1)。
最も寒い1月で平均気温が最高5℃、
最低マイナス4℃と北海道日高地方と比べて温暖です。
図1 生産の中心地レキシントンは新潟市と同じ緯度
●離乳後から明け1歳の管理
離乳後の放牧管理は、離乳前から引き続き24時間放牧が基本です(図2)。
ただし、11月に開催される当歳セリ(Keeneland November Saleなど)や
1~2月に開催される1歳セリ(Fasig-Tipton February Saleなど)に
上場される馬は昼放牧に切り替えられ、馬房内で馬服を装着し、
冬毛が伸びて見栄えが悪くならないように管理されていました。
放牧地内には
我が国では繁殖牝馬に用いられている草架(hay feeder)が置かれ、
中にはルーサン乾草が入れられていました。
JRA日高育成牧場では
危険防止および運動量の減少を防ぐため草架は使用していませんが、
米国の牧場ではこの時期の放牧地内での運動量は考えていない様子でした。
また、屋根付きの三面が壁に囲まれたシェルターのある放牧地もありました。
ケンタッキーの冬は北海道日高地方より温暖で、
気温は一時的にはマイナス10℃くらいまで下がることはありますが、
内陸に位置するため日中に気温が上昇し、
雪が降っても1週間程度で融けてなくなります。
感覚的には北海道より冬が2ヶ月短いイメージでした。
図2 ケンタッキーの牧場での冬期の管理
●繁殖とイヤリングの草地の違い
細かい話ですが、同じ生産牧場でも
繁殖牝馬用の放牧地と離乳後の当歳馬や1歳馬用の放牧地に
蒔いている牧草の種類が異なっていました。
具体的には、トールフェスクという牧草を妊娠馬が食べると、
胎盤に異常(シストの形成)が起こることが報告されており、
繁殖牝馬用の放牧地には
フェスク類は蒔かないこととされていました(図3)。
一方、フェスク類は寒さに強く冬でも放牧地を緑に保てるという理由で
当歳馬や1歳馬用の放牧地には積極的に蒔かれていました。
図3 繁殖の放牧地には胎盤の異常を引き起こすフェスクを蒔かない