育成馬ブログ 日高⑥
●育成馬の蹄鉄について
日高育成牧場では9月に騎乗馴致を実施し、
おおむね1ヵ月後には坂路調教を開始します。
その後、徐々に速度を上げていき、
12月からはハロン18秒程度の負荷をかけるトレーニングを実施しており、
2月からはさらに負荷をかけていく予定です。
屋内坂路馬場での3頭併走によるスピード調教
(左)アンムートの16(父 キンシャサノキセキ)、
(中央)セイウンクノイチの16(父 キングズベスト)、
(右)ユリオプスデイジーの16(父 ケイムホーム)
育成馬のような若馬に対して調教強度を増していく過程で生じる問題として、
蹄の著しい摩滅や挫跖などの疾病発症が上げられます。
これらを防ぐ目的で育成馬全頭に対し12月下旬から装蹄を行っています。
そこで、今回は育成馬の「蹄鉄」に関するお話をしようと思います。
一言に蹄鉄といってもさまざまな種類がありますが、
乗用馬などに装着する「鉄製の調教蹄鉄」(写真1)と、
育成馬や競走馬などに装着する「アルミニウム製の兼用蹄鉄」(写真2)の
おおむね2種類に分けられます。
写真1(調教蹄鉄)
写真2(兼用蹄鉄)
一昔前までは、競走馬がレース出走時にだけ装着する
「競走ニウム(勝負鉄)」というものもありましたが、
現在では調教でもレースでも使用できる兼用蹄鉄が普及し、
レースに出走する競走馬のほぼ全頭が装着しています。
なぜ育成馬や競走馬に装着する蹄鉄は、
乗用馬のそれと種類が異なるのでしょうか。
それは馬たちの運動の違いに大きく関係しています。
乗用馬と違い、育成馬や競走馬は速いスピードで走ることを求められます。
このため、軽量の蹄鉄を装着することにより、
馬の肢や蹄にかかる負担を軽減させ、安全に走行させることができるのです。
また、育成馬の調教を進めていく中で蹄のトラブルは付き物です。
特に多いのは「挫跖(ざせき)」と言い、
蹄底や蹄叉などといった直接的に地面と触れる部分に
小石や不整地などで異物を踏みつけ起こる炎症です。
また、走行中に後肢の蹄が前肢の蹄底にぶつかることで起こる
「追突」を発症することも少なくありません。
このような場合、鉄板を用いた鉄橋蹄鉄(写真3)を装着することで、
踏着時の蹄の痛みを緩和します。
写真3(鉄橋蹄鉄)
このように、
個々の馬の肢や蹄の状態に応じた蹄鉄を装着することが重要ですので、
目の前にいる馬に一番合った蹄鉄を選び、
イメージ通りに装蹄を行う柔軟な考え方と、
それに伴った技術が必要になります。
特に育成馬の場合、
騎乗馴致初期は跣蹄馬(蹄鉄を装着していない、いわゆる「はだし」の状態)
で調教を進めていきます。
また、成長期でもあり、
馬体に伴って蹄も大きく成長する重要な時期なので、
慎重かつ的確な装削蹄を行う必要があります。
装蹄風景