育成馬ブログ 日高⑨(その2)
(その1 はこちら)
○調教方針の一新と従来との比較
本年上場予定の日高の育成馬の調教で、昨年までと異なる点は
坂路の馬場状態だけではありません。調教メニューも大きく変更しました。
過去に競走馬総合研究所で行った調査において、
成績上位の厩舎は下位厩舎に比べて駆歩以上の速度における
走行距離が少ないにも関わらず、有酸素エネルギー系に強い運動負荷が
かかっていることが報告されました。
この結果から、短い距離で負荷のかかる調教を高頻度に行うことで、
競走馬としての能力をより引き出すことができる可能性が考えられました。
そこで、本年は調教時の負荷および走行距離について方針転換を行いました。
昨年までの2月から3月にかけての調教は、屋内800m馬場を中心とし、
坂路調教の頻度は週に2回でした。坂路調教は2月開始時点では
F19を2本程度であり、その後はタイムを徐々に縮め、
3月は1本目F17、2本目F16程度で行ってきました。
一方、本年は調教の中心を坂路に移行しました。週に3回坂路調教を行い、
3月になると週に2回はほとんどの馬の乳酸値が10mmol/lを超える、
負荷の高いトレーニングを行いました。
また、翌日にはF30程度のハッキングを取り入れ馬を
リラックスさせることで、調教にメリハリをつけました。
走行距離に関しては、調教場の中心が坂路になったことにより、
従来の800m馬場を中心とした調教に比べて
トータルの走行距離を短縮しました。
2月下旬某週の調教メニュー(黄色が強調教日)
本年の育成馬の能力を評価する参考として、
3月下旬に測定したV200の結果を以下に挙げます。
V200とは、Velocity at heart rate of 200 beats/minの略称であり、
”心拍数が200拍/分に達した時のスピード”を意味します。
1980年代にスウェーデンのパーソン教授によって提唱された
馬の持久力(有酸素能力)の指標で、育成馬や競走馬の体力評価に
利用されています。V200の詳細については以前の記事をご参照ください。
https://blog.jra.jp/ikusei/2011/02/v200-ff85.html
https://blog.jra.jp/ikusei/2011/03/v200-a3ca.html
過去10年のV200の数値比較
本年18年の結果は過去10年と比較して最も高値でした。
V200値のみで競走馬の能力を語ることはできませんが、
本年の育成馬の有酸素能力が高いことは、
乳酸値が上がるトレーニングをしっかりと行ってきた結果が
反映されたものと考えることができます。
2018年ブリーズアップもいよいよ目前に迫っています。
生まれ変わった坂路と、従来とは異なる調教の効果が
存分に発揮されることにより、今後の活躍が期待される
JRA育成馬の動向にぜひともご注目ください。