育成馬ブログ(生産⑤)
冬期に枯れた放牧草の栄養価
雪のない放牧地
今シーズンは例年になく暖冬で、JRA日高育成牧場のある浦河町を含め日高管内の牧場地帯では1月末まで放牧地に雪がない状態が続きました(図1)。通常だとこの時期の馬たちは雪の上に置かれた乾草を食べていますが、今年は放牧地内の枯れた草を食べ続けていました。この状況が栄養学的に問題はないのか調べるため、枯れた放牧草の栄養分析を行いましたので今回はその結果についてご紹介したいと思います。
図1 1月末まで放牧地に雪はありませんでした
牧草の栄養分析
牧草の栄養分析は日本軽種馬協会が実施しています。分析には乾草では250g、青草(放牧草)では500g程度のサンプルが必要です(図2)。ご自身の牧場の乾草もしくは青草の栄養分析を行ってみたいという方は、お近くの農協もしくは役場までお問い合わせください。
図2 栄養分析用に採材された枯れ草
栄養分析の結果
当場の放牧地6面(下表A~F)に生えていた草を本年1月14日に採材し、栄養分析を行いました。結果を表に示します。放牧地Aのみ数値が低くなっていますが、この放牧地は雑草が多くそもそもの栄養価が低かったためと考えられました。チモシー主体の放牧地B~Fでは、蛋白質・各種ミネラルともにチモシー乾草より高く、青草より低い範囲でした。以上の結果から、枯れた放牧草の栄養価は、乾草と青草の中間であると言えます。
表 枯れた放牧草の栄養価は乾草と青草の中間でした
今回の結果から、今シーズンのように冬期に雪が積もらず馬が枯れた放牧草を食べ続けても、栄養学的には特に問題はないと言えます。しかしながら、例年より深く土壌が凍結しているため、放牧草の冬枯れや早春の生育不良が懸念され、放牧地によってはローラーによる鎮圧等の処置をした方が良いかもしれません。心配な方はお近くの農協までご相談ください。