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育成馬ブログ(2020年 宮崎①)

1歳セリと放牧地管理について

 

○ 初めてのオンラインビッド

 梅雨明けして本格的な夏が始まりましたが、今年の梅雨は例年にない豪雨に見舞われ、熊本県を中心とした九州各地で大きな被害がありました。宮崎育成牧場では大きな被害はありませんでしたが、梅雨期の総雨量が1,000㎜と平年の1.5倍を超え、馬道の砂が流れるなど少なからず影響がでており、温暖化や雨の影響について考えさせられた季節でした。

 雨ばかりの6~7月でしたが、1歳馬のセリが始まる季節でもあります。本年のJRA育成馬の購買も6月23日に開催された「九州1歳市場」を皮切りにスタートしており、7月7日の「八戸市場」、7月13日の「セレクトセール」まで無事に終えることができました。

 いずれのセリも新型コロナウイルス対策として入場者を限定するなど様々な対策を講じており、例年とは違った雰囲気の開催となりました。なかでも九州市場では1歳セリでは初めてとなるオンラインビッドが活用され、我々も初めてのオンラインでの入札に緊張しながら参加し、その使用感を体験しながら2頭を購買することができました。

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写真1) 九州市場のオンラインビッド画面。2頭とも落札!

 

 これまでの3つのセールでJRAは7頭の1歳馬を購買しました。そのうちの6頭と日高育成牧場で生産したJRAホームブレッドのうち2頭の合計8頭が宮崎育成牧場に入厩しています。この育成馬たちは現在、16時から8時までの夜間に放牧しており、間もなく開始するトレーニングに向けて馬体や精神的な成長を促しているところです。

 

○放牧地の草種について

 この時期の育成馬は放牧地で1日のほとんどを過ごしていますが、サラブレッドの放牧地には「飼料としての牧草」と「自発的な運動場所」の2つを両立することが重要とされています。

 宮崎育成牧場では、本年から馬の放牧地の管理方法を変え、草種をこれまでのイタリアンライグラスからバヒアグラスに変更しました。一般的に国内の牧場では、チモシーやイタリアンライグラス、ケンタッキーブルーグラスなど比較的寒い地域に適した種類の牧草が多く利用されています。今回変更したバヒアグラスは、暖地型牧草に分類される多年草で、夏季の再生力が旺盛な点が特徴です。

 当場の放牧地は夏季~秋季の夜間放牧での利用が中心で、運動場所としての放牧を重視しています。そのような背景もあり、年間平均気温が17℃を超える九州の夏には暖地型牧草が適していると考え、今回の草地更新を行いました。

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写真2) 常に採食可能となるよう掃除刈りで草丈を一定に保ちます

 

 バヒアグラスは道路脇にも雑草として生えているような身近な草ですが、馬の嗜好性はやや劣るとされています。そこで、茎が硬くなりすぎないよう小まめに掃除刈りを実施したり、放牧地のボロ取りをこまめに行うなど丁寧な管理を心がけています。

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 写真3) 集団で草をはむ育成馬

 

 草地管理スタッフの努力の甲斐あって、当初懸念していた嗜好性も問題なく、写真のように放牧初日からおいしそうに食べてくれて一安心といったところです。今後は栄養面についても各種分析を行いつつ、定期的に馬体重やボディコンディショニングスコアなども確認していく予定です。