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育成馬ブログ(2020年 日高②-2)

ウマコロナウイルス(ECoV)感染症

現在、ヒトで新型コロナウイルス(COVID-19)が流行していますが、ウマにもコロナウイルス感染症が存在します。
10月15日に静内で開催された「第48回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」で、ウマコロナウイルス(ECoV)感染症に関する講演がありましたのでご紹介します。

Photoシンポジウムの様子。発表者がフェイスシールドを着用するなど、

厳重なコロナウイルス対策下で開催されました。

ECoVはウマ固有のウイルスで、ヒトには感染しません。日本では2004年以降に3回、重種馬で流行しましたが、本年春に初めてサラブレッドでの流行が確認されました。
主な症状は、発熱、食欲不振、元気消失、下痢などの消化器症状で、多くは数日で回復しますが、海外では神経症状を呈し予後の悪い馬も確認されているので注意が必要です。ヒトのCOVID-19で肺炎などの呼吸器症状がみられるのとは異なり、ECoVでは下痢などの消化器症状がしばしばみられます。
ECoVは感染馬の糞便で伝染します。競走馬総合研究所の研究によると、感染馬からは9日間以上も糞便にウイルスが排出されることがわかりました。また、ECoVに感染しても症状を示さない「不顕性感染馬」からも同程度の期間ウイルス排出が確認されていますので、これらも感染源になります。
本年春の流行は、JRA施設内のサラブレッドやさまざまな品種を含んだ41頭の馬群で起こりました。この中で症状が認められたのは15頭で、そのうち発熱は11頭、下痢は3頭で認められました。いずれも軽症で1~3日で治まりましたが、注目すべき点はその感染力の強さでした。症状のない馬も含め、全頭に抗体検査を行った結果、全頭が抗体を持っていた、つまりECoVに感染していたことがわかりました。
また、この流行の調査から、糞便中へのウイルス排泄期間は、サラブレッドでそれ以外の品種の馬よりも短い傾向があることがわかりました。サラブレッド感染馬では、糞便からウイルスが検出された期間が最長19日であったのに対し、サラブレッド以外の感染馬のうち5頭が19日以上、最長で98日間となりました。品種によって感染源となるリスクが違うのかもしれません。

馬を飼育する上で気を付けなければならない疾病は様々ですが、このような疾病の情報を常に勉強しておくことで、発生した際の適切な対応につなげていきたいものです。

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