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22-23育成馬ブログ(日高④)

今シーズン新たに取り組んだこと

 

 早いものでブリーズアップセール(以下、BUセール)まであと1ヶ月となりました。育成馬たちは日々着実に成長し、現在坂路にて3F48秒程度のメニューをこなしています。

Photo (写真)坂路でのスピード調教

 さて、今回は育成馬たちを調教していく上で今シーズン新たに意識して取り組んだことをご紹介したいと思います。まず馴致段階では、我々は従来よりヨーロッパ式のランジング・ドライビングを取り入れたブレーキングを行っておりますが、今シーズンは常歩だけでなく“速歩でのドライビング”を積極的に取り入れました。常歩よりも速いスピードでドライビングを行うことにより、馬が本当にまっすぐ進んでいるか、開き手綱の扶助を理解しているかが明確になり、結果として騎乗調教開始後にまっすぐ走れる馬が増えました。例えて言えば、自転車を運転する際に、ゆっくり漕ぐとフラフラしてしまいますが、ある程度のスピードを出し続けることでまっすぐな状態を維持できるのと同じ理屈です。スタッフたちには速歩で進む馬と同じ速さで移動しなくてはならないため苦労をかけましたが、そのおかげで例年以上に騎乗調教へとスムーズに移行することができました。また、速歩のドライビングでは「左!」「まっすぐ!」「右!」「まっすぐ!」「左!」「まっすぐ!」「右!」・・・という風に、短時間で多くのコマンドを馬に出し続けることとなるため、馬が人にフォーカスし、人から出される命令にすぐに応えようと従順になる効果もあると感じました。その結果、昨シーズンより人の言うことをきく馬が増えた気がします。

https://youtu.be/6zMCZwW7Grw

(動画)速歩でのドライビング(9月中旬)

 次に取り組んだこととして、馬は同じパターンの調教をすると落ち着く性質を利用し、調教開始時に角馬場での速歩の後、“800m馬場での最初の1周を「コーナー速歩、直線ハッキング」と決め、毎日繰り返し”ました。例年、スピード調教を開始した頃から馬が強くなり、段々こちらの言うことをきかなくなりますが、このルーティーンを繰り返すことにより、馬が騎乗者のコマンドを待つ状態になり、冷静さを保つことができ、昨年よりも従順になった印象です。

https://youtu.be/Q_681vEs5jc

(動画)毎日のルーティーン(コーナー速歩、直線ハッキングで800m馬場を1周)

 最後に、“隊列の質を上げ”ました。坂路での集団調教時に昨シーズンまでは1列縦隊もしくは2列縦隊で走行していましたが、例年より馴致が上手くいき馬がおとなしいのと、騎乗スタッフのレベルが上がり2列縦隊の調教が楽々こなせるようになってきたため、今シーズンから3列縦隊を取り入れました。このことにより、より実戦に近い状況で調教できるようになり、レースに行って前後左右に馬がいてもひるまないで走る馬を作ることを目指しています。また、調教のタイム指示についてはステディなキャンター(馬が落ち着く速度で安定した駈歩を続ける)となるように設定することで、馬が常に落ち着いた状態で調教を実施することができました。
https://youtu.be/A9yi47AfFfQ

(動画)坂路調教の様子(1月下旬)

 以上、今回は今シーズンの取り組みをご紹介いたしました。JRA日高育成牧場ではBUセール後に競走馬として順調にデビューできる馬、勝てる馬を目指して日々調教に取り組んでいます。その過程で得られた知見はこのブログほか各種講演会や出版物で発信しております。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。