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23ー24育成馬ブログ(日高④)

馬の重心の上に乗るために(新人やBTC生徒に対する指導)


 日高育成牧場では、毎年5~7名ほどの新人(馬取扱技能職)が春の定期人事異動で転入してきます。また、例年25名ほどのBTC研修生を受け入れ、育成馬に騎乗してもらっています。前者は馬術の腕は確かですが、サラブレッド競走馬には乗った経験がない者がほとんどであり、後者は4月の入講から馬に乗り始め、乗馬経験が半年ほど経った後に初めて競走馬に乗ることになります。今回は、彼らにまずどのような点を意識して育成馬に騎乗してもらっているかについてご紹介いたします。

 まず2枚の写真を見比べてみてください。写真1は過去のBTC生徒(今年の生徒ではありません)がJRA育成馬に乗りに来た初日のものです。フォローしておきますが、当然最初から上手く乗れる人はいません。たいていの場合、騎手を真似してアブミ革を短くして乗ろうとするのですが、乗馬でいう「椅子座り」の姿勢すなわち脚が前にいきお尻は後ろの状態になりがちです。一方、写真2は育成馬に乗り慣れたJRA職員のものです。お尻の位置が前にあり、脚の上にお尻がきていることがわかります。

Photo_9 (写真1)初心者(過去のBTC生徒初日)   

Photo_10 (写真2)上級者(JRA職員)

 図1では、よりわかりやすいように補助線を引いています。左の初心者(過去のBTC生徒初日)はお尻から下に実線を引くと、脚の位置である破線よりかなり後ろにお尻が位置してしまっていることがわかります。一方、右の上級者(JRA職員)は実線と破線が一致し、お尻の位置が前にあり、脚の位置と一致して(脚の上にお尻がきて)います。このことから、新人やBTC生徒が初めて育成馬(競走馬)に騎乗する際には、まずお尻を前へ位置することを意識してもらっています。

Photo_5 (図1)育成馬(競走馬)に乗る際はお尻を前へ位置すること意識する

 馬の重心は第12肋骨付近にあると言われています(図2)。騎乗者がお尻を前へ位置することを意識して乗ることにより、かかと・鞍壺(鞍のカーブが最も深い部位)・お尻が重心の上に来る(直線上に並ぶ)ことになり、馬の重心の上に乗る(人と馬の重心が一致する)こととなります。このように騎乗することができれば、馬は鞍上で人が暴れない(ぶれない)ため快適となり、騎乗者を受け入れ、リラックスして走行するようになります。

Photo_4 (図2)馬の重心とお尻の位置

 自分に合ったアブミ革の長さですが、これは長い方が合う人と、短い方がしっくりくる人がいるようです。図3の左は長い人、右は短い人です。アブミ革の長さが変わるのでお尻の高さは変わりますが(長い人は下がり、短い人は上がる)、前後の位置は変わりません。やはりかかと・鞍壺・お尻が重心の上に来て(直線上に並んで)います。好みの問題ですので、自分に向いているアブミ革の長さをそれぞれ見つけてもらえればと思います。

Photo_7 (図3)自分に向いているアブミ革の長さはひとそれぞれ

 以上、今回は当場で取り組んでいる新人やBTC生徒に対する指導についてご紹介いたしました。現在、JRA育成馬たちはブリーズアップセールの上場およびその先の2歳戦での早期デビューを目指し、スピード調教を重ねてどんどんたくましく仕上がってきています。展示会およびブリーズアップセールで皆さんとお会いできることを心よりお待ち申し上げております。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。