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2022年2月

2022年2月18日 (金)

エクリプスとRVCの関係

 こんにちは、イギリスに滞在している臨床医学研究室の田村です。

 前回、Royal Veterinary College (RVC;王立獣医大学) にはエクリプスの骨格標本が保存されていることを紹介しました。
 なぜ、エクリプスがRVCに保管されているのか?という質問を頂きました。
 実は、エクリプスの存在そのものがRVCを設立するきっかけになったからです。

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 これまでに見たことのない圧倒的なスピードと体力があったエクリプスの存在は、当時の人々に難問を投げかけました。
 現在の競馬ファンにも通じるその疑問は、いたってシンプルです。
 「なぜ、あの馬はあんなに速いのか?」

 その疑問に対して、科学的に向き合うために設立された研究機関、それこそがRVCだと言われています。当時の最先端の知識や検査道具を用いて、様々な観点から研究が実施されたようです。
 そうした研究成果や経験が基礎となり、今日のRVCおよび獣医学の発展に繋がっていることを考えると、エクリプスの功績は相当なものであり、偉大な存在であったと考えられます。

 さて、「なぜ、エクリプスは速いのか?」。
 この疑問への回答は様々です。心臓が大きかったとする研究者や、骨格形状と関連付ける研究者もいます。
 しかし、まだ完全な正解には至っていないようです。
 なぜなら、Eclipse と名付けられたRVCの主要研究棟には、彼の骨格標本や貴重な試料が保存されており、現在においても最先端の知識や検査道具を用いて研究が継続されているからです。
 一つの参考としてRVCのWebページ(外部サイト)をお教えしますので、「RVCのWebページ」の部分をクリックしてみてください。

 200年以上が経過しても答えが出ないことに、競馬のロマンを感じることができます。
 日本にいる大多数の競走馬がエクリプスの血統を引き継いでいます。競馬を通じることによって、彼らの速さの秘密を考えることは興味深いことかもしれません。

2022年2月 7日 (月)

動作解析のはじまりはウマ

 運動科学研究室の高橋です。


 現在ではヒトのスポーツ界で様々な動作解析技術がありますが、動物の動作解析の始まりがウマだったことは皆さんご存じでしょうか。


 1800年代後半に、高速疾走するウマの四肢が地面から離れる瞬間があるかないか、という議論がドイツを中心にヨーロッパであったと言われています。


 それに決着をつけたのがアメリカの写真家であったMuybridgeだと言われています。ギャロップで疾走するウマの連続写真を撮影して、四肢が地面から離れている瞬間と肢の着地順を客観的に証明したということです。ちなみに、この連続写真はアメリカで「世界を変えた100枚の写真」にも選ばれ、国際バイオメカニクス学会では2年おきに最も優秀な論文を選び、その著者に”Muybridge Awards” という賞を授与しています。


 ヒトの目の解像度はそこまで良くないので、速い動作の観察には測定機器が必要ということですね。そして、様々な測定機器と組み合わせて私たちはウマの動作の理解を深めています。写真は野外走行中にハイスピードカメラと筋電図を組み合わせた実験風景です。

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 さて、野外での実験において最も気を使わなければいけないことの1つは天気です。晴れ間に雲がかかると、せっかく合わせたカメラの絞りが合わない、雨が降ると中止、などなど。写真の実験時には快晴に恵まれましたが、数日前から天気予報を逐一気にして、実験中も雨雲レーダーチェックが欠かせませんでした。Mugbridgeの頃よりは格段に映像を撮影しやすくはなったと思いますが、自然を相手にしなければいけない辺りの難しさは残っていますね。