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2025年11月

2025年11月27日 (木)

オニグルミを拾ったことありますか?

こんにちは。

微生物研究室の岸です。

 皆さんは、クルミを拾ったことはありますか?

 私は先日出張で訪れた帯広畜産大学でオニグルミを拾いました。

 自然豊かな校内に山林で見かけるオニグルミの木も生えています。

 買うのではなく、自然なクルミを拾うのは小学生の時に海に行った時以来、22年ぶり2回目でした。

 オニグルミは縄文時代から食べられてきた木の実で、実は9月中旬に熟し10月ごろに落果し始めます。落果した果実を拾い集め、しばらく置いて果皮を腐らせてから硬い核を取り出し食用とします。

Photo_3画像1.オニグルミ(右から、落果したばかりのクルミ、果皮が腐ったクルミ、腐った果皮が破けたクルミ、殻だけになったクルミ)

 大学の敷地内では、エゾリスが器用に殻を割って食べているのを見かけましたが、人間が石で割るのは少し大変でした。やはり、くるみ割り器を使うのがよさそうです。もし道具がなくても、オーブンで熱するとひび割れ、そこから開けられると知人に教えてもらいました。ちなみに、賢いカラスは、道路に落として車に踏ませて殻を割るようです。また、クマは、割ってから中身を取り出したりせず、固い殻のままバリバリ噛み砕いて食べてしまうそうです。

 今年は山の中で木の実が不作なのですが、クルミはそこそこ実っているそうです。そこが問題で、クルミの木は山裾や河川沿いに生えていることが多く、クルミを求めて山から出てきてしまうクマが、河川を伝って市街地に出てくるケースがあるのではないかと危惧されているそうです。

 北海道や長野、東北地方など涼しい地域に生えていることが多いようなので、来年見つけたらチャレンジして食べてみてはいかがでしょうか。ただし、クマには気をつけましょう。

Photo_4画像2.オニグルミを持つエゾリス(分かりにくくてすみません)

2025年11月18日 (火)

全国牛削蹄競技大会で初の女性選手が入賞!

企画の桑野です。

 先日、11月11日(火)に鯉渕学園・瑞穂農場分場にて全国牛削蹄競技大会が実施され、護蹄管理を考える蹄の研究者として見学に行ってまいりました。牛削蹄競技大会については、昨年もこのブログで紹介したのですが、今年はちょっとビッグなトピックがあり、筆を取ります。

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 トピックとは、大会始まって以来、初めて女性牛削蹄師が参加したというものです。今回、鳥取県代表として中国・四国地区予選会を勝ち上がってきた川村真美選手は、中国地方の牛農家を足元から支える若い力です。さらにクジによる抽選で宣誓係にも選出され、女性牛削蹄師として力強く選手宣誓を実施。これだけでも目立つのですが、なんと競技大会で準優勝しました!これは快挙です。

Dsc_7595力強い選手宣誓をする川村選手

 というのも、ウマと違ってウシは人が触れることで自発的に足を上げる訓練をされていません。削蹄のため足を持ち上げようとすると(単独保定と言います)、抵抗するものです。「保定は力ではない」という格言めいた原則があるものの、中には結構な力でイヤイヤするウシさんも。暴れられたら削蹄できませんから人の方にも力が必要です。そのため、単独保定で牛の蹄を切る削蹄師は屈強・骨太で掌が厚く指も太い男性が圧倒的に多いです。そんな中、身長160cmほどの小柄な女性が、ウシへの当たりの柔らかさで上手に保定し、正確な判断力と繊細な削蹄技術により牛蹄を切っている姿は見るものを驚かせました。機械に頼らず、当たりの柔らかさでウシに対応するため、ウシも安心して身を任せているように見えました(下図)。

Photo競技中の川村選手。保定も上手いのですが、削蹄技術も優れていました。

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僅差で優勝を逃しましたが、準優勝は立派!

 近代になってから発達した牛削蹄の歴史は、まだ100年ほどしかありません。そのため、「どうしたら、より牛に快適な削蹄になるのか」の問いに完全には答えが出ていません。また、牛にとって良い削蹄を研究する機関も世界的に少ないのが現状です。その意味で、発展途上にある牛削蹄技術には改良と発展の余地があり、面白い仕事とも言えるでしょう。ウマもウシも蹄がなければ生きていけない動物です。ウマだけでなく、ウシの護蹄管理も発展していくことを祈念しています。そうして、ウマの装蹄とウシの削蹄の技術協力ができるような時代が来ればいいのにと願っています。

2025年11月12日 (水)

競走馬医療の秘密基地 ~臨床医学研究室とは?~

臨床医学研究室の石川です。

 皆さん、競馬を見ていると、馬がケガをしたり体調を崩したりすることがありますよね。そんな時、「早く元気になって、またターフを走ってほしい!」と願うファンの方は多いはず。

 実は、そんな競走馬たちの健康を守り、最先端の医療でサポートしている、「競走馬医療の秘密基地」それが、「臨床医学研究室」です。

 この研究室の最大の目標は、ケガや病気で走れなくなった競走馬を、再びレースに復帰させること。

「どうしたら、もっと早く、確実に治るんだろう?」

「そもそも、どうやったらケガを予防できるんだろう?」

を日々研究し、医療技術向上に向けた取り組みをしております。

 中でも運動器疾患の診断、予防、治療の開発に関する研究に力を注いでいます。近年では高度な画像診断によって、骨折や腱靱帯炎を早い段階で発見することができるようになり、レースや調教中の大きな事故が少なくなりました。MRIやCTといった人で使用される機器を応用することで、診断技術の向上に役立てています。Img_3647   MRI検査(四肢専用)        CT(手術専用)

 また、競走馬には「屈腱炎」と呼ばれる競走生命を脅かす病気があります。人で例えるとアキレス腱断裂と似たものですが、長年、効果的な治療法が見つかっていません。そうした中で人で注目を浴びている再生医療(幹細胞や多血小板血漿)の研究に着手し、現在ではリハビリテーションを含めた効果について研究を行っています。

 その他には、抗菌薬や各種治療薬の効果的な投与法や、さまざなま病気の治療に関するカルテを分析し、最適な予防や治療法の検討を行っています。

 こうした研究室で生まれた研究成果がJRAのトレーニングセンターにいる競走馬の獣医師へと共有され、臨床現場の医療技術を向上させています。

 我々臨床医学研究室は、競走馬の健康を支えるいわば「縁の下の力持ち」なのです。

2025年11月 3日 (月)

アイルランドでの宿泊先と食事(Irish Equine Centre 訪問 - 番外編)

分子生物研究室の川西です。 

 アイルランドのIrish Equine Centre(IEC)を訪れたことは先に掲載しましたが、その時に宿泊して出会えたいくつかのアイルランドの顔についてもお知らせしたいと思います。

Bed and Breakfast(宿泊先)

 滞在中はBed and Breakfast(B&B)と呼ばれる宿泊サービスを利用しました。家族経営による小規模な宿泊施設で朝食だけ提供されます。美味しいのは食事だけでなく、手作りパンをいただく朝食時に、施設のオーナーと会話しながら温かな家庭を感じられるところにもありました。なんと、そこのオーナーも馬好きで、館内には馬の絵や写真が多く飾られていました。

3B&B館内にはたくさんの馬や写真が飾られていました

Irish Beef(アイリッシュ・ビーフ)
 アイルランドは国土の多くが牧草地であり、牛はビタミン・ミネラルが豊富な牧草で育ち、良質なお肉になります。時間をかけて煮込まれたBraised Beef Feather Blade(牛肩甲骨内側の肉の煮込み)をいただきましたが、ナイフが不要なほど柔らかく、旨味の濃厚な牛肉だったです。

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緑、白とオレンジの配色がアイルランド国旗を彷彿させる一品でした

Irish Coffee(アイリッシュ・コーヒー)

 ただのコーヒーではなくアイリッシュ・ウイスキーをベースに、コーヒー、砂糖、そして生クリームをフロートさせた温かいカクテルです。これはびっくり! ウイスキーの芳醇な香りとコーヒーのコク、生クリームのまろやかな甘さがマッチしており、アイルランドの厳しい寒冷期には体を温めてくれるアイルランドならではの飲み物でした。ウイスキーで眠くなるかと思いきや、コーヒーのパンチで目が覚めるという、手強い飲み物でした。

5時差ぼけもありましたが、アイリッシュコーヒーに負けて眠れなくなりました

 以上、IECの高度なウイルス検査技術とアイルランドの馬文化について学びながら、現地の食文化をも知る機会となり、馬を育む国民性を垣間見ることができた貴重な4日間でした。

Irish Equine Centreを訪問しました

分子生物研究室の川西です。

 先月、アイルランドのIrish Equine Centre(IEC)を訪れました。JRA競走馬総合研究所(総研)は、IECと2024年に学術交流協定を締結しています。私は、馬インフルエンザと馬鼻肺炎の調査・研究活動に関する理解を深めるとともに、総研の代表として研究者との交流を通じて今後の協力関係を構築することを目的に訪問しました。また、滞在中に、Irish National Studも見学しました。アイルランドに滞在した4日間について簡単にご紹介したいと思います。

IECについて

 IECはキルデア県のネース町に所在し、馬伝染性子宮炎の流行によりアイルランドの馬産業に大きな経済的損失が生じたことをきっかけに1983年に設立された検査施設です。現在は、馬をはじめとする動物(家畜、伴侶動物)、環境(土壌、植物、水)や食物の各種検査や診断業務を行っています。運営費の多くは、検査・診断料金に加え、アイルランド競馬統括団体やアイルランドサラブレッド生産者協会などの組織や団体からの支援で賄われています。

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IECのメインエントランス

 IECでは、正確な測定・結果を出す能力を証明する国際規格ISO/IEC 17025を30検査項目以上で取得しています。特に馬のウイルス感染症のうち、馬インフルエンザと馬鼻肺炎に関しては、欧州唯一のWOAH(国際獣疫事務局)リファレンスラボラトリーとしての役割を担っています。筆者はVirology Unit(ウイルス部門)の研究者から、馬インフルエンザの血清診断法やウマヘルペスウイルス1型の遺伝子解析法について指導を受けました。

Irish National Stud(アイリッシュ・ナショナル・スタッド)の見学

 Irish National Studは、1900年にスコットランド出身のウィリアム・ホール・ウォーカー大佐が購入し、競走馬の生産・育成を始めたのがきっかけです。敷地内には、大佐の日本人庭師により造られた「人間の一生」をテーマとした日本庭園があります。
 Irish National Studで特に印象に残ったのは、"The Irish Racehorse Experience"という、競走馬の一生をバーチャルで体験できる施設です。ここでは、タブレット操作で1歳馬の選択、調教メニューや騎手の決定を行い、自分だけの競走馬を育ててレースに出走させることができます。レース時には、体験者自身が騎手として模型の馬に騎乗できるため、初めて競走馬に触れる人でも楽しみながら、その誕生から引退までの軌跡を深く学べるシステムに感銘を受けました。

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バーチャルでのレース画面。体験者は木馬に跨いでいます。これからゲートインです。