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遅い初雪がようやく降ったと思ったら・・・

こんにちは、函館競馬場からHですpig

前回ずいぶん寒くなってきたことをお伝えしましたが、とうとう先週末函館でも初雪が降りましたsnow

今年の北海道の初雪は遅れていて、札幌では観測史上2番目の遅さ、旭川では125年の観測史上最も遅い初雪だそうです。

函館でも25年ぶりの遅さだそうですが、初雪が降ったと思ったら急に寒くなり、昨日の夜半過ぎから降り始めた雪で一面真っ白になっていました。

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秋から急激に冬に変わってしまいました。

さすがに日中はプラス気温なので根雪になることはなかったのですが、早朝の道路はツルツル。

これがまだ冬の入り口かと思うと、すでに春cherryblossomが来るのが待ち遠しくなってしまいます。

    

私たち人間が寒さでげんなりしている一方で、療養馬の方は元気いっぱいですsign01

最初は今シーズン初めて見た雪に戸惑いぎみでしたが、すぐに慣れてグイグイ厩務員さんを引っ張るように歩いていました。

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また、外が寒くても温泉の中はあったかくて気持ち良さそう。

みんな幸せそうですhappy01

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こんな精神的にも肉体的にもリラックスできる環境でできる限りのリハビリをして、早くレースの現場に復帰させてあげたいと思う今日この頃です。

   

今回は、北海道の初雪をご報告させていただきましたsnow

各所これから寒くなって雪の降りやすい季節になると思いますが、皆さま健康にはお気を付け下さい。

それでは、函館からHがお送りしましたpig

ウォータートレッドミル

最近は、寒々しい雨が時おり降るのですが

前回紹介した馬場補修工事のおかげで水はけもよく

馬たちも快適にトレーニングを行うことができています

 

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ところで、馬場補修工事中は馬はお休みしていたのかというと

もちろんそんなことはありません

 

ウォータートレッドミルという施設を使ったトレーニングを主体に

メニューを組むことにしました

 

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なんだか水の中でチャプチャプと楽しそうにも見え

こんな風に、温泉に入っているのと変わらないような気もしますが

 

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当然そんなことはありません

  

このウォータートレッドミル

水の中はどうなっているかというと

水路の底にベルトコンベアーが埋め込まれているのです

 

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写真はベルトコンベアーを持ち上げたところですが

このベルトコンベアーが油圧モーターで動くことで

馬は強制的に歩かされるという仕組みです

 

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ウォータートレッドミルの最大のメリットは

馬は体まで水に浸かることになるので、大きな浮力がかかるということです

 

皆さんもプールの中に入ると、体が軽くなることを実感できると思いますが

それにより、足への負担が小さくなることもわかるのではないでしょうか

体重が増えすぎた人が、膝への負担をかけずに行うダイエットトレーニングだったり

膝や足首等を怪我した人のリハビリだったり

人の世界でもプールでのウォーキングは広く利用されていると思いますが

それを馬に応用したのがこのウォータートレッドミルなのです

 

馬の大きさにもよるでしょうが

浮力により体重の約40%の荷重が軽減されるといわれています

この40%がリハビリを行っていく上で非常に重要な要素になるんです

 

そんなリハビリの話はいつかしようと思いますが  

次回はこのウォータートレッドミル

別の視点から見てみたいと思います

 

☆常磐支所からのお知らせ☆

常磐支所では現役競走馬を世話しながら、JRA厩務員を目指す研修生を随時募集しています。

詳しくはこちらのリンクをご覧ください

http://www.equinst.go.jp/JP/onsen/onsendayori.html

今年のノーベル生理学賞で有名になった万能細胞移植が競走馬でも!?

こんにちは、函館競馬場から少しご無沙汰のHですpig

しばらく更新せずに、申し訳ありません。

           

さてさて、今年の夏~秋はかなり暑かったのですが、さすがは北海道!

最近は最高気温が一桁の日が増えてきて、風が吹くとずいぶん寒くなってきました。

初雪の便りやスタッドレスタイヤ・暖房機のCMを見ていると、本格的に冬が近づいているんだなぁと感じています。

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芝馬場は青々していますが、函館山はずいぶんうら寂しい色になってきました。

比較的暖かい函館でも、昨シーズンは雪・雪・雪snowにずいぶん悩まされたので、今シーズンは雪の少ない函館になることを切実に祈っている今日この頃です。

             

ところで、前回第1号の温泉療養馬が入厩したことをお知らせしましたが、この2ヶ月間でさらに新たな仲間が3頭加わり、現在の温泉療養馬は4頭になりましたhappy01

最初に函館にやってきた牝馬は他に馬がいないので寂しそうにしていましたが、続けて牡馬が3頭やってきてハーレム状態になってきたので、ちょっとご満悦sign02といったところでしょうか。

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一番手前左側が最初に来た牝馬で、男たちを従えて女王様気分!?

4頭のうち3頭(すべて2歳馬)は腕節(人で言う手首の部分)を剥離骨折した馬ですが、残りの1頭は屈腱炎を発症した馬で、函館で初めて“幹細胞移植”を実施しました。

このブログでも、しばしば常磐支所のK支所長がこの幹細胞移植について書いていますが、函館では初めてのことなので、あらためて紹介させていただきます。

                     

まず、屈腱炎について、通常競走馬で屈腱炎を発症するのは前肢の浅屈腱で、腕節と球節の間の後ろ側にあります。

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腕節と球節との間の屈腱部というところに浅屈腱があります。

レースや追い切りでこの浅屈腱が強く引っ張られると、中で炎症が起こり腱細胞が壊れてしまいます。

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浅屈腱をエコーで輪切りにした断面図です。外側の白く線状に見えるのが皮膚、オレンジ線で囲んだ部分が浅屈腱で、黒塗りの部分が屈腱炎になった部分です。通常、この浅屈腱は1cm2ほどの厚さなのですが、炎症が起こると全体的に太くなり一部分の腱細胞が壊れて、エコー検査で黒く見えるようになります。

本年の日本ダービー馬・ディープブリランテ号が浅屈腱炎で引退したことをご存知の方は多いと思いますが、屈腱炎はしばしば“不治の病”と言われ、元通りに治療するのが難しい疾病なんですよ。

それを何とか元に近い状態に戻そうとする治療法が“幹細胞移植”です。

次に、『幹細胞とは?』について、屈腱炎の治療で利用されている幹細胞は“間葉系幹細胞”と呼ばれるもので、骨や軟骨・脂肪・腱などが傷ついたり古くなった時に組織を新しくするのに必要なものです。

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顕微鏡で見た馬の間葉系幹細胞で、細長くいっぱい見えるのが幹細胞です。

最近巷をにぎわしている“iPS細胞”との違いは、iPS細胞が分化する能力を持たない普通の細胞に特定の遺伝子を入れていろんな組織に分化できるように作成した細胞で、心臓などさまざまな組織に分化させてから移植する方法が考えられていますが、競走馬で利用している間葉系幹細胞は最初から各組織に分化する能力を持った細胞で、肋骨のつなぎ目にある“胸骨”から取り出し分離・培養したあと、そのまま屈腱炎の部分に注射器で注入して細胞移植します。

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幹細胞を採取している様子。ちょっと痛そうに見えますが、鎮静と局所麻酔をしているので、そんなに嫌がりません。

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胸骨から採取した幹細胞を2週間培養したもの。下に沈んでいる白いものが幹細胞です。

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局所麻酔をした患部に、エコーで確認しながら注射器で幹細胞を注入していきます。

ちなみに、1枚目と3枚目の写真は、以前常磐支所で書かれたブログの写真を拝借しました。

屈腱炎の治療は結構時間がかかるもので、1年以上の休養が必要になるケースも少なくなりません。

また、一度良くなってもレースや追い切りで再発して、引退を余儀なくされる場合もあります。

今回実施した“幹細胞移植”は、治療期間が短くなるわけではありませんが、再発しないように屈腱炎になる前の状態に戻そうとする治療法です。

この幹細胞を用いた屈腱炎の治療法はまだJRAでも調査・研究の段階で、屈腱炎が確実に治るとまでは言えませんが、今回実施した馬には無事レースに復帰できるようになってもらいたいものです。

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幹細胞後1ヶ月の状態。まだ熱感はありますが、腫れはずいぶん小さくなってきました。

そのためにも、私たちも良いリハビリができるように頑張らなければhappy02

またどこかで途中経過を紹介させていただきますので、お楽しみに。

                  

ところで、本日函館競馬場の馬温泉所をNHKさんが取材に来られましたsign03

函館・湯の川温泉に関する旅番組だそうですが、その中で馬温泉もご紹介いただけるとのことです。

放送日程は、以下の通りです。

  ※ 1124日(土) 7:30-8:00の中の10分弱 (北海道のみ)

  ※ 124日(火) 16:50-18:00の中の10分弱 (全国放送)

お時間に都合が付くようであれば、是非ご覧になって下さい。

私・Hpigも映っているようなので、お暇な方は探してみては・・・

                

次にご報告するのは、初雪snowのたよりかなぁ。

それでは、初雪間近の函館からHでしたpig