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虹の彼方に駆ける Over the Rainbow(宮崎)

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雨上がりの旧競馬場スタンドを背に、育成馬たちは「虹の彼方」の大きな夢に向けてトレーニングに励んでいます。

JRAブリーズアップセールまで1か月余りとなり、毎年のことながら育成牧場は慌しくなってきました。馬たちは逞しく成長していますが、牡馬の中には噛み付いてきたり、運動中に立ち上がるなどの反抗的な態度を示す馬も出てきます。このような馬には人間が毅然とした態度で臨み、必要に応じて懲戒を与えることで、人がリーダーであることを再認識させなければなりません。

また、調教では走りたい気持ちを抑えきれないといった前向きさや、併走時の負けん気の強さが目立ってきており、騎乗者も手を焼いています。ただし、馬が走りたいと思うスピードで速く走らせるのではなく、騎乗者がスピードをコントロールして馬の力をためて、ある程度の我慢を教えつつ走らせることが重要です。これは、競馬において馬込みの中で折り合いをつけるための調教であり、オーバーワークを防ぐためでもあります。オーバーワークになると故障につながることはもちろん、かえって馬の走りたい気持ちが萎えてしまいます。

言い尽くされた言葉かもしれませんが、馬を常にフレッシュかつハッピーな状態に維持することが重要なわけですが、これは本当に難しい課題です。ちょっとした馬の変化も見逃さないように馬を毎日見続けることは、この仕事を与えられた我々の義務であり、若馬たちが競馬場にいってからの「活躍する可能性の芽」を摘むことのないよう、日々取り組んでいます。

さて今回は、最近の調教~クーリングダウンの様子を写真で紹介します。

500 

最初に500mトラックコースでのウォーミングアップを実施します。写真は速歩中の牡馬群です。このコースではゆっくりとした速度でリラックスした調教を心がけており、3列併走の馬たちもゆったりと速度をそろえて運動できるようになりました。

1600 

続いて1,600mトラックコースに移ります。このコースでは速い速度で走行できることを覚えていて、育成馬たちの雰囲気も「競走モード」に変わります。ここでは1,0002,000mの駈歩を実施しますが、ベースとなる内容は1ハロン2120秒の速度で4ハロンを平均的に(4F8480秒)走行することです。また、週12回実施する強め調教では1ハロンを1716秒で3ハロン(3F5148秒)の走行を行います。写真は前からプレゼントの07(牡・父は新種牡馬バゴ)とタヒチアンブリーズの07(牡・父:ボストンハーバー)。

体力があり、脚元の頑丈な馬は週2回の強め調教を実施しますが、無理をするべきではないと判断した馬は強度を落とす、というように個体ごとに調教量の差をつけています。幸いなことに、ここまで跛行等の運動器疾患で長期の戦線離脱を余儀なくされる馬は出ていません。

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調教後のクーリングダウンでは、日替わりで様々な場所を通過して、馬の気分転換をはかっています。写真は「ミニ坂路」を1列で進んでいく育成馬群。

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クーリングダウンを終え、騎乗調教から開放された馬たちは、グラスピッキングで無心に青草をほお張ります。リラックスした雰囲気でさらなる気分転換がはかられています。手前はスラムインの07(牡・父は新種牡馬ゼンノロブロイ)

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最後に腕節までの深さの脚浴場を通過してクーリングダウンは終了です。四肢を冷却するための脚浴場の水には、肢の汚れを落とし清潔に保つ(皮膚炎の予防)目的で硫黄成分などが混ぜてあります。写真中央はスーパードレスの07(牝・父:キングカメハメハ)