25-26育成馬ブログ(日高④)
育成馬の調教とは「競馬の因数分解」
日高育成牧場では、61頭の今年の育成馬たちの調教が順調に進み、現在は800m周回トラックでコーナー速歩・直線ハッキングのルーティーンの後、1600~2400mのステディキャンター(20秒/F程度)での調教をベースに、週2回は坂路に行き、1本目として2列縦隊で18秒/Fで3ハロン走り、2本目に2~3頭併走で14~16秒/Fで3ハロン上がるというスピード調教を消化しています(写真1・動画1)。ブリーズアップセールそしてその先のトレセンでの調教、競走馬デビューに向けて更に仕上げてまいります。今回は育成馬の調教とは「競馬の因数分解」というテーマで、調教全体についてのお話をしたいと思います。
https://youtu.be/Mq6yYdCp5sc
(動画1)坂路での調教
馬がレースに出走した場合、まずはスターティングゲートに入り、おとなしく駐立し、前扉が開いたら速やかに発進しなくてはなりません。JRA育成馬に対するゲート馴致は、下記の基準が達成できた場合、ゲート目標クリアとしています。12月と3月の2回、確認しています。
1)前扉を閉め、騎乗した状態でゲートに入れる(補助者が引いても構わない)
2)後ろ扉を閉める
3)ゲート内でおとなしく10秒程度駐立させる
4)前扉を開け、騎乗者の扶助により常歩で発進する
日高育成牧場では、上記の基準に加え、22-23シーズンからまず騎乗者の扶助だけで枠入りさせ、入らなかった場合のみ引き馬にて枠入りするという方法にしています。引かずに枠入りできた馬が23-24シーズンは8割(49/60)、24-25シーズンは10割(61/61)、25-26シーズンも12月の時点で10割(61/61)でした。より難しい条件でゲート馴致を行うことで、トレセン入厩後速やかにゲート試験に合格し、早期デビューできることを目指しています。
https://youtu.be/xMVreMBY1ms
(動画2)ゲート馴致
続いて、レースでスタートした後は、馬が馬群の中で折り合って走らなくてはなりません。日高育成牧場では22-23シーズンから坂路および1600m周回馬場での集団調教時に3列縦隊での走行を取り入れました。走行中に横の馬に蹴られる等のリスクを避けるため、具体的には18秒/F程度で馬が集中してまっすぐに走れることを確認してから行っています。このことに実戦により近い状況で調教できるようになり、レースに行って前後左右に馬がいてもひるまないで走る馬を作ることを目指しています。また、この時期の調教のタイム指示についてはステディキャンター(馬が落ち着く速度で安定した駈歩を続ける)となるように設定することで、馬が精神的に常に落ち着いた状態で調教を実施することを心掛けています。前後左右に馬がいる状況、前からキックバック(ウッドチップや砂の塊)が飛んでくる状況に調教の段階で慣れさせておくことは、その後競走馬としてデビューする上で大きなアドバンテージになると考えています。
https://youtu.be/MwmFfvWJDQ0
(動画3)坂路での3列縦隊の調教
(写真4)1600m周回馬場での3列縦隊の調教
https://youtu.be/detJO_4al5c
(動画4)1600m周回馬場での3列縦隊の調教
レースも終盤に入ると、3・4コーナーで加速し、最後の直線で自分だけでなく他の馬たちがみんな苦しい中で頑張って最後まで走ることが要求されます。JRA育成馬はブリーズアップセールでの騎乗供覧で最終2ハロンを13.0-12.5秒というタイムを目安にスピード調教を実施しています。国内の他のトレーニングセールが「2頭併走」であるのに対し、ブリーズアップセールではトータルの馬の仕上がりをアピールするため、より難易度の高い「単走」での騎乗供覧を行っています。この調教を通して、馬は最後の直線において1頭で抜け出してもいわゆる “ソラ”を使わず、苦しい中最後まで走りぬくことを覚えます。
https://www.youtube.com/live/dRMhI65KiP8?si=52JZT7Pmrv5dvn9y
(動画5)ブリーズアップセールでの騎乗供覧
今までの話ですが、我々は「競馬の因数分解」と呼んでいます。競馬で必要とされる要素をあらかじめ経験させておくことが競走馬の調教である、と考えています。競馬で必要とされる要素とは、ゲートに入りおとなしく駐立し勢い良く飛び出ること、集団の中で折り合って走ること、3・4コーナーで加速すること、最後の直線みんなが苦しい中で頑張って最後まで走ること、などが挙げられます。模擬レースのようなものをやれば一度に経験させられるかもしれませんが、実際には難しいので例えばゲート馴致だったり、3列縦隊で走らせたり、ブリーズアップセールのように3・4コーナーで加速し直線最後まで走る調教をするなど、1つないしは2つの要素に分けてそれぞれ順をおって経験させていく、ということが競走馬を調教する上で重要ではないかと考えています。
以上、今回は育成馬の調教とは「競馬の因数分解」というテーマで、調教全体についてのお話をいたしました。今回の記事がブリーズアップセールでJRA育成馬のご購買を考えてくださっている馬主・調教師の皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。





