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ゲート馴致について(日高)

3月も半ばを過ぎると、雪の日には「これが今年最後の雪だろう」と話しながら、春の訪れを楽しみにしています。北の大地である浦河の春はもうそこまで来ているようです。

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今年最後の雪であることを願いながら、春の訪れを心待ちにしています。北海道の春はもうそこまで来ているようです。

●育成馬の近況 ~Work調教の開始~

育成馬達はブリーズアップセールに向け順調に調教メニューをこなしております。前回、お伝えいたしましたとおり、800m屋内トラックでの調教をベースとしながら、週2回の坂路調教を実施し、1週間の調教の流れをパターン化させ、調教コースによるオンオフの区別の理解を馬に促すことを引き続き行っております。2月から開始しているこの調教パターンによって、多くの馬が調教のオンオフを理解してきたように感じています。また、体力面および心肺機能も強化され、坂路調教では“on the bridled”での2本のステディキャンター(54秒/3F)を安定して走行できるようになってきました。

このように、体力面と精神面の安定が図られてきたので、3月中旬からはwork調教と呼んでいる坂路の2本目に2頭併走での少し速めのキャンター(48秒/3F)を開始しております。この時にも、単なる走行タイムよりも最後まで“on the bridled”の手応えを重要視しています。この調教のパターンを3週間ほど継続し、安定した走行が可能となった段階で、次のステップに進んでいきたいと考えています。同じことの繰り返しが調教であると理解しつつも、それが難しいことを感じざるを得ない今日この頃です。

 

坂路コースでは1本目は4頭を1つのロットとした縦列でのストリングを組んでのステディキャンター54秒/3Fを、2本目は併走での少し速めのキャンター(48秒/3F)を実施しています。縦列調教画像は先頭からオテンバコマチの10(牝 父:ケイムホーム)、メジロマルチネスの10(牝 父:デュランダル)、スルーパスの10(牝 父:サウスヴィグラス)、フラワーサークルの10(牝 父:アルデバラン)、併走調教画像は左がヒカルヤマトの10(牡 父:アドマイヤジャパン)、右がユメノセテアラムの10JRAホームブレッド 牡 父:ケイムホーム

ゲート馴致について

さて、今回はゲート馴致について触れてみたいと思います。一般的に馬、特にサラブレッドは警戒心が強い動物であると考えられ、新しく見聞きするものや初めて経験することに敏感に反応しがちです。また、閉じ込められる様な閉鎖空間や束縛される環境に対しては、恐怖や警戒心から逃避しようとします。このような馬の性格を踏まえて、ゲート馴致のみならず全ての馴致過程において、焦らずに馬が理解するまで根気よく馴らす必要があります。

ゲートに対する馴致

まずはゲートが安心できる場所であることを馬に学習させるために、ゲートは日常の運動中に身近に見える場所に設置します。引き馬やドライビングの段階において十分ゲートを通過させ、可能な限りゲートに対する恐怖心を取り除くようにします。次に騎乗して幅の広い練習用ゲートを通過させます。ゲート通過が可能になれば、毎日の調教時に通過し、ゲート通過に馴らします。徐々に競馬で使用するのと同じ幅のゲート通過に馴らしていきます。

ゲートでの駐立と扉の閉鎖

 ゲート通過に馴れた後は、ゲートの扉を開いた状態で駐立することを馴らします。その後は前扉が開いた状態で駐立させ、後躯を十分にパッティングしてから後ろ扉を閉めます。この時に馬が落ち着いているようであれば、騎乗者の扶助で少し後退させて、後ろ扉に臀部が触れることを経験させます。このときに、馬が前に突進する可能性があるので注意して行います。最後に前扉を閉めて最終的なゲート内での駐立に馴らします。

発進馴致

 前後の扉を閉鎖しても馬がリラックスした状態で駐立できたら、以下の手順で最終確認を行います。

1)騎乗した状態で前扉を閉めたゲートに入れる 

2)後ろ扉を閉める 

3)ゲート内でおとなしく10秒程度駐立させる 

4)前扉を開け、騎乗者の扶助により常歩で発進する 

JRAではジャンプアウトまでの馴致は行っていませんが、ゲートの前扉が開くとともに、騎乗者の扶助により常歩でスムーズに出ることができるところまで練習しています。この発進馴致の確認は12月末に日を改めて2回行った後、3月上旬に再確認を行っています。また、その後も毎日、扉のないゲートを落ちついた状態で常歩通過しています。このような状態でトレセンにバトンタッチできるよう心掛けています。

 

警戒心が強いサラブレッドは初めて経験することに敏感に反応しやすいため、ゲート馴致のみならず全ての馴致過程において、焦らずに馬が理解するまで根気よく馴らす必要があります。

最後になりますが、日高育成牧場の育成馬展示会は49日(月)10時~に開催を予定しております。実馬の立ち馬展示後には、1600mトラック馬場において騎乗供覧という形でブリーズアップセール上場予定馬のトレーニングを皆さまに披露させていただきます。

また、日高育成牧場では、軽種馬育成調教センター(BTC)が行う騎乗者養成コースの研修生に対して1月から実践研修の場を提供してきましたが、育成馬展示会はその研修の総仕上げの場ともなっています。研修生も展示および騎乗供覧に参加しますので、彼らの研修の成果もご覧いただければ幸いです。多くの皆さまのご来場をお待ち申し上げております。

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49日(月)の日高育成牧場の育成馬展示会ではBTC騎乗者養成コース研修生の騎乗ぶりにも注目して下さい。写真は2011年の育成馬展示会BTC研修生を背に軽快な走行を披露したダンツミュータント号(先頭、父:マイネルラヴ)とモンストール号(2番手、父:アドマイヤマックス