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育成馬ブログ(日高②)

○1歳馬によく見られる蹄病

 8月の最終週、日高育成牧場にはサマープレミアムセールおよびサマーセール

で購買した1歳馬44頭が入厩しました。入厩時には、馬体照合や体重測定など

の後、獣医師と装蹄師で馬体検査を行いますが、今回のブログでは、その際に

装蹄師が確認しているポイントのうち、よく見られる蹄病について説明します。

 

①蟻洞

 蟻洞とは、蹄の中にある分厚い丈夫な組織と軟らかい組織の結合が分離した

ものです。蹄の成長バランスの偏りや、硬い地面での激しい運動、急激な乾燥

や湿潤も原因もひとつです。痛みを認めない軽症例から、著しい痛みで歩様が

悪くなるような重症例まで症状によって様々です。

 治療法としては、鑢やナイフで患部を取り除き焼烙、消毒し、広範囲のもの

には蹄鉄を装着することもあります。図1のように小さな亀裂のみに見えても

患部を取り除いてみると広範囲で進行していることがあります(図2)。

  

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図1.蟻洞(処置前)

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図2.蟻洞(処置後)

 

②白線裂

 白線裂とは白線が分離したものです(図3、4)。蹄が真っ直ぐではなく

広がって伸びるような「広蹄」や、蹄質不良、特に白線の組織が脆い蹄などが

発症しやすくなります。不潔な馬房、蹄の手入れ不足、蹄の持続的な湿潤、蹄

の過度な摩滅や伸びすぎ、あるいは硬地上の激しい運動などの要因が考えられ

ます。白線裂の内部には不潔な角質や土砂などを含んでおり、割目が浅いもの

では跛行しませんが、割目が深く神経や血管のある部分まで達するものは歩様

に支障をきたします。

 治療法としては割目をナイフなどで綺麗に削り、消毒をします。普段から

などが詰まらないよう清潔にすることが重要です。痛みが強く肢が地面に着け

ないような症例には蹄鉄で保護することもあります。

 

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図3.正常な蹄の白線 

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図4.白線裂

 

③裂蹄

 裂蹄とは蹄壁の一部が割れて裂けたのです。蹄が真っ直ぐではなく歪んで生

えてくるような蹄に多く見られ、冬場など乾燥して蹄に水分が少なくなり硬く

なると割れやすくなります。(人間の爪が冬場に乾燥し割れやすくなるのと同

じです)。軽症例では痛みほとんどありませんが、重度になると裂け目が神経

や血管のある部分まで達し、出血し痛みが出る場合があります。

 治療法としては蹄のバランスを整え、裂け目が現状以上進まないよう綺麗に

削り、蹄用の接着剤などで抑えることもあります。

 

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図5.裂蹄

 

 入厩時は初めて見る馬達ばかりなので、この様な疾病等を見逃さないように

注意してより深く観察し、重症化する前に早急に対処する必要があります。

そのため日高育成牧場では獣医師と装蹄師が連携して様々な疾病の早期発見・

早期治療に努めています。