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日高にも1歳馬が入厩しました (日高)

昨年購買した育成馬たちは428日に開催されたブリーズアップセール等を経て元気に巣立ち、6月中旬から行われているメイクデビュー競走(新馬戦)に続々と駒を進めてきています。馴致段階から心を注いできた我々育成牧場の職員にとって、育成馬の出走とそのパフォーマンスは大きな喜びの瞬間であると同時に、多くの反省が生まれる時でもあります。

さて、7月に行われたセレクトセール、北海道セレクションセールの1歳セリでJRAが購買した17頭(セレクト3頭、セレクション14頭)のうちの15頭が、730日に日高育成牧場へ入厩しました。

馬体検査と写真撮影を行い、5頭以下のグループに分け放牧を開始します。その際、新しい放牧環境に慣れて群れの内の順位が決まるまではしばし争いが絶えないため、最初の放牧では怪我やアクシデントの心配が絶えません。これは特に牡馬で顕著な傾向があります。しかし、騎乗馴致開始までの間に昼夜放牧を経験させておきたいという考えから、我々はこれを必ず通過しなければならないポイントと考えています。少しでも放牧時のリアクションを小さくするために、放牧地を牧柵に沿って引き馬で1周回り、放牧地に慣らします。この時しっかりと馬を御すために、必ずチフニーと呼ばれるハート型のハミを用い、放す直前にはずします。安全のため、人は柵を背にしていつでも外に出ることのできる体勢をとり、全馬一斉に離します。

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放牧地外周を引かれる馬達。必ずチフニーを装着します。新しい環境で早く放してほしいため、少しいらいらしています。

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フレッシュな馬たちの走りです。放牧地のチェックが一段落し、みんなで出入り口に戻ってきました。右からエンドレスチャントの07(牡、父:オペラハウス)、インキュラブルロマンティックの07(牡、父:ボストンハーバー)、ブルーブロッサムの07(牡、父:ストラヴィンスキー)

今回入厩した牝馬は放牧地を軽く1周しただけで馬同士のいざこざはほとんどなく落ち着きました。牡馬の闘争も比較的少なかったのですが、みんなで走る際に群れから押し出された1頭がフェンスにぶつかり、ちょっとヒヤッとする場面がありました。しかし、大きな事故はなく無事に初日の放牧を終えました。

この時期の放牧で頭を悩ませるのが吸血昆虫です。特にこの時期はアブの発生が多く見られます。日高はアブの発生源となる沢地が多いため、ピーク時のアブの数は半端ではありません。放牧されている馬はおいしく草を食むというよりも、団子状の馬群を作りほとんど動かず、落ち着きなく尾を振り地団太を踏みながらアブを追うという、まさに我慢大会の様相を呈します。

この対策として、日中を避け夜間に重点を置いた放牧になるべく早く移行します。今回の入厩馬は、群が落ち着いた入厩3日後から、夕刻4時から朝8時までの夜間放牧としました。

欧米では私の知る限りアブや吸血昆虫の発生は比較的少なく、こういった悩みはあまりないようです(単独の放牧で、顔にたかるハエを防ぐために頭巾を被せているのを見たことはありますが)。放牧前には既存の忌避剤(虫よけ)の塗布などの対策はしていますが、現状の市販品では忌避力と持続時間が短く、期待するほどの大きな効果はないようです。コスト面にも課題が残ります。新たな忌避剤の開発なども含めた、放牧時の吸血昆虫対応は今後取り組んでいかなければならないことかもしれません。

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アブは皮膚に傷をつけ染み出てきた血液を舐めるため、吸血後も血がにじみます。

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アブに刺されてボコボコになった下腹部。