キャンドル競走馬への道 その6 ~ キャンドルの卒業式 (宮崎)
先日ご案内したBig Dream Stables宮崎育成牧場での育成馬展示会(宮崎)。これまで注目してきたビッグキャンドルの07(通称キャンドル、牝、父は新種牡馬 バゴ)ですが、展示会数日前になって39度の熱を出し、やや食欲も落ちてしまいました。小学生のように式に向けて張り切りすぎたわけではないのでしょうが、「卒業式」への参加が危ぶまれました。
幸いにも発熱から回復し、「卒業式」の比較展示に颯爽と入場してきたキャンドル。展示中も落ち着いて堂々とした振る舞いでした。
いよいよ騎乗供覧。緊張のスタート直前です。ゲイリーアミューズの07(白帽・父はボーンキング)とともに前の組の走りを見守るキャンドルと騎乗者(青帽)。
2頭併走で、ラスト2ハロン14.2-13.9を記録。堂々とした走りをみせ、無事に卒業式を終えたキャンドル(青帽)。
○ブラックタイプ(血統情報)について
今回はブリーズアップセール前の掲載最終回となりますので、キャンドルをもっと深く知っていただくために、ブラックタイプ(血統情報)の話をさせていただきます。
セリ名簿のほか、インターネット情報でも公開されているブラックタイプ。皆様もご覧になったことがあるのではないでしょうか。「文字ばかりでつまらない」と思われた方、ここには実に多くの情報が詰まっているのです。それではキャンドルのブラックタイプを使って説明します。
まずは上段の血統表からです。血統表は文字通りその馬の父、母、さらには父の父、母の父などが記された一種の家系図です。上段に父が、下段に母が記されます。この表は3世代を遡って記してあり、3代血統表と呼ばれます。キャンドルの父は、フランスの競走馬で凱旋門賞やパリ大賞典など1,600~2,400mのGⅠを5勝した名馬バゴ。2006年にJRAが導入し、現在は日本軽種馬協会・胆振種馬場で繋養されています。父バゴにとって、2007年生まれのキャンドルは最初の世代の子供であり、バゴは今年の「2歳新種牡馬」としても注目されています。
バゴの父は1989年、英2000ギニーとエプソムダービーを制してニジンスキー以来のイギリスクラシック二冠を達成したナシュワン。さらにその父は1,100~1,600mのGⅠを5勝し、種牡馬としても大成功を収めたブラッシンググルーム。この様に、父、父の父、父の父の父・・・・とつながる一番上の行をサイアーライン(父系)とよび、母ビッグキャンドルから続く一番下の行をファミリーライン(母系、牝系)とよびます。どうしても、名馬が綺羅星のごとく並ぶサイアーラインに目がいってしまいますが、実はファミリーラインにも馬の競走能力に大きな影響を与える重要な情報が隠されています。
仔馬の素質は母から55-60%を、父から40-45%を受け継ぐという研究報告があり、優秀な仔馬を生み出すためには母馬の資質や要因が大きいとされているのです。その母系の活躍度合いをひと目で理解できるように、近親馬名の書体や太さを競走成績のよいものほど目立たせるにようにした表記基準こそが「ブラックタイプ」であり、サラブレッドを売買する世界各国のセリ名簿で採用されています。
ブラックタイプでは、出生年、種牡馬と競走成績等について、母、2代母、3代母・・・さらにその子供たちを辿ります。
ビッグキャンドルの07
再びキャンドルのブラックタイプをみますと、まずは母ビッグキャンドルの解説があります。母は岩手競馬で3勝を挙げました。そして、注目していただきたいのは母馬名のすぐ下の初仔(はつご)という表記です。これは読んで字のごとく初めての子供という意味です。キャンドルの場合、お母さんが9歳の時に初めて産んだ子供、ということになります。
2代母、おばあちゃんの欄には、その息子であるイナズマタカオーという太文字の馬がいます。94年の中日スポーツ賞4歳S(GⅢ)、95年の北九州記念(GⅢ)などを制し、現在はJRA中京競馬場で誘導馬として活躍しています。この馬は重賞勝ち馬ですから、最も太く表記されます。実はこのイナズマタカオーは旧宇都宮育成牧場で育てられたJRA育成馬でした。つまり、おじさんにあたるイナズマタカオーが大活躍したビッグキャンドルの07は、JRAと相性のよい馬であるといえそうです。
ブラックタイプは一見するとただ名前を羅列しているだけでつまらないもののようですが、じっくり検証してみると本当に色々なことがわかります。その馬の血統背景が見えてくる、非常に奥深いものなのです。“あっ!この馬知っている!”とか、“この馬の近親なのか~!そういえばあの時・・・・”などなど、あなただけの競馬ロマンが見つかるかもしれません。
キャンドルをはじめJRA育成馬たちは、無限の可能性を秘め宮崎を巣立とうとしています。皆様、ブリーズアップセールにご注目ください。