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今年もよろしくお願いします(宮崎)

皆様、新年あけましておめでとうございます。本年も「育成馬日誌」をよろしくお願いいたします。今年の冬は全国的に寒さが厳しいですが、南国・宮崎も例外ではありません。日中は10℃以上に気温が上昇する日もありますが、朝・夕の冷え込みはそれなりに厳しく、氷点下を記録する日も少なくありません。それでも放牧地には青々とした牧草が豊富にあり、JRA育成馬たちは調教後にフレッシュな牧草を食べることでリラックスしています。南九州地区は冬季の育成を行うのに好適な地であることは明らかです。

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青々とした牧草を仲良く食べるスリリングヴィクトリーの10(写真左、牝、父:ダイワメジャー)とフラワーブリーズの10(写真右、牝、父:ブラックタイド)。日中の気温が上がらない日には、被毛を薄く管理するため馬服を着用して放牧します。

 

調教進度が進むにつれ徐々にテンションが高くなってきていた育成馬たち。年末年始は調教を行わずランジングと放牧のみで管理しました。現在は短期休養でリフレッシュした育成馬たちの本格的な調教を再開しており、1群の10頭は500m馬場で準備運動(速歩500m、駈歩1,000m)を行った後に1600m馬場で1,200mのキャンター 2本(ハロン2218秒程度)のインターバルトレーニングを実施しています。また、1群より遅い時期に馴致を開始した2群は上記2本のキャンター調教(ハロン2220秒程度)を行う日と、2,000m連続したキャンター1本(ハロン22秒程度)を行う日を組み合わせてスタミナ強化に努めています。

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500m馬場で準備運動を行うデヴォアの10(写真右、牝、父:ハーツクライ)とスリリングヴィクトリーの10(写真左、牝、父:ダイワメジャー)。この時期になると準備運動から走りたい気持ちを剥き出しにする馬たち。我慢することを教える騎乗者も必死です。

 

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1600m馬場で併走調教を行うレジェルマンの10(写真左、牡、父:バブルガムフェロー)とステファノティスの10(写真右、牡、父:ファンタスティックライト)。当初は横に来る他馬を嫌い、横の間隔を詰められなかった2頭ですが、現在は併走調教のベストパートナーになりました。

 

 

昨年末に、毎年恒例となっているV200値の測定(参照:育成馬日誌)を実施しました。V200はヒトでは個体ごとの有酸素運運動能力の科学的指標として確立していますが、馬の場合は速度の規定が難しいことや、馬の情動・騎乗者の体重・騎乗技術などが影響し、個体ごとの有酸素運動能力の指標としては精度の高い検査とはいえません。そのため今回も群れ全体の調教進度を判定し、その後の調教内容を考える参考として実施しました。今回測定したのは調教が進んでいる110頭です。これはV200値の測定が、1分あたり200拍の心拍数となる速度を求める検査なので、調教進度の進んでいる1群の馬のみを対象としました。

測定の結果は下表のとおりでした。過去の育成馬達との比較をみると、昨年売却した育成馬に比べてかなり低い値とはなりましたが、過去5年の平均に近似した値となりました。今後有酸素能力を高める調教を順調にこなし、スタミナをつけていくことで、過去の馬たちに追いつき追い越してほしいものです。次回の測定は1月末を予定しており、どのような結果になるか、今から楽しみです。

 

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さて、最後に宮崎馬個別の近況を紹介したいと思います。今回はV200の測定値が最も高かった牡馬です。

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エムケイミラクルの10(父:ケイムホーム)

牡・青鹿毛・八戸市場購買馬(購買価格:840万円)

   

父ケイムホームは23歳時に7,9,10Fで米GⅠに勝利。昨年の2歳新種牡馬ランキングで総合5位(地方1位)にランクインしています。本馬の兄には岩手で大活躍したマヨノエンゼルがいます。八戸市場で注目を集めた好馬体は健在で、美しく薄い皮膚と全身に纏った軟らかい筋肉が自慢です。軽い脚さばきと強い前進気勢を持っており、スタミナも豊富です。

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単走調教を行うエムケイミラクルの10。調教には常に前向きで、前を走る馬がいると耳を絞って追い抜こうとし、騎乗者の腕を痺れさせます。現在の馬体重は492Kgです。