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隊列の使い分け(宮崎)

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桜が咲くと春の到来を感じます。朝夕もほとんど冷え込まなくなってきました。

 JRAブリーズアップセール開催まで約1ヶ月となりました。宮崎育成牧場では、育成馬のスピード調教が計画通り順調に進められています。現在は内馬場(500m馬場)でのウォーミングアップ後、1600m馬場にて1200mのキャンター2本(ベーススピードは1ハロン19秒程度)を実施しています。スピード調教(インターバル2本目をラスト3ハロン45秒程度)を週に1~2回、ハロン20秒で2000mを一本で走りぬくスタミナ強化調教を週に2回実施しています。ほとんどの馬が手綱を抑えて走りたい気持ちを温存させながら、指示どおりのタイムで走れるようになってきました。イメージどおりの調教ができた日には思わず頬が緩んでしまいますが、日々のケアを怠らず万全の体勢でセールに望みたいと思っています。

 宮崎育成牧場では、調教内容や馬の精神状態を見て4つの隊列を使い分けます。休み明けの月曜日や馬がピリっとしてきた時などには「一団」で調教を行います。これは群れの中で走らせることで馬はリラックスし、自然な動きをみせてくれるためです。騎乗調教を開始した直後にも、前後左右に馬がいる環境に慣れさせ前馬のキックバックに抵抗しない精神力を養うことを目的として、一団調教を多用します。

 スピード調教の際には「併走」で調教を行います。隣を走る馬に負けない気持ち(闘争心)を養うことが目的で、各馬の能力や調教進度、相性の良し悪しを考慮してパートナーを決定します。パートナー選びはかなり慎重に行っています。というのも、相手の選択を間違えるときれいな併走調教ができないだけではなく、大きく遅れた馬が心に傷を残してしまうことになるためです。最終的にはstirrup-to-stirrup(アブミとアブミがぶつかる位の間隔)で走れることが目標なので、スピード調教をしながら横の間隔を詰める練習が続きます。

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1600m馬場での3頭併走調教。外(右)がカリカーの11(牡:父カリズマティック)、中がエンゼルアーチの11(牡:父ゴールドアリュール)、内(左)がエンジェルステージの11(牡:父ブラックタイド)。横の間隔を詰める練習をしているところです。

 縦列調教は、4頭程度のグループで前の馬と指定された間隔を開けて走行します。先頭を走る馬は騎乗者の指示に従いひるまず前にいく練習ができ、後続の馬たちは馬の後ろで走りたい気持ちを我慢することで推進力を養うことができます。先頭は毎日交代し、どの馬も先頭ができるようになることが目標です。

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1列での調教。先頭がカメレオンの11(牝:父バゴ)、2番手がウエスタンバスターの

11(牝:父ブラックタイド)、3番手がビッグキャンドルの11(牝:父ダンスインザダーク)。今後、前馬との距離を徐々に開いていきます。

 調教の最後のステージで行うのが「単走」調教です。一列調教ができるようになったら、前の馬との間隔を少しずつ開いていき、最終的には2ハロン程度開けてスタートできるようにします。周囲に馬がいないことに不安を感じる馬もいますが、騎乗馴致のときから培ってきた騎乗者との信頼関係があれば問題ありません。不安に思う馬をなだめ、走ることに集中させて真っ直ぐ走らせることが騎乗者に求められます。ブリーズアップセールでの騎乗供覧は、基本全馬が単走です。セール出発までの残り1ヶ月、全22頭を単走でお披露目できるようにしっかり練習をつんでいきたいと思います。

 セールまでの残された時間をカウントダウンするようになると、22頭との様々なエピソードが思い出されます。放牧から帰るのを嫌い逃げ回った馬、治療が嫌いで全力で抵抗し1本の注射をするために1時間近く格闘した馬、多頭数での調教が苦手で騎乗者を何度も振り落とした馬など。当時は今後のことを考えて眠れないほど悩んだりもしましたが、今振り返ると懐かしく感じます。

 曖昧になった記憶を辿る際、昨年売却馬から開始した各馬別の「育成馬の日誌」をみると当時のことが鮮明に思い出されます。その日騎乗した職員が記入する日誌には、毎日の調教内容や治療経過などに加えて調教時の問題点や明日への課題なども記入し、騎乗者が替わる際には引継ぎでも使用しています。ある新鋭厩舎で使用しているのを真似てはじめたこの日誌、とても役に立っています。

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毎日記入している日誌。短いながらも、その馬と歩んできた歴史が詰まっています。

 さて、宮崎育成牧場では3月25日(月)13時から馬主・調教師の皆様を対象とした育成馬展示会を開催いたします。当日は13:10頃から6班に分けて全馬をご覧頂く「比較展示」を、14:10頃から10頭程度の調教状況をご覧頂く「騎乗供覧」を行います。騎乗供覧終了後にはご指定の馬を再度ご覧頂ける自由展示も行います。ご購買をお考えの皆様、是非温暖な宮崎の地へ足を運んでいただけたらと思います。また、昨年までは展示会で騎乗供覧をしない馬の調教を当日の朝実施していましたが、本年は育成馬展示会終了後の13:40頃から行います。お時間が許しましたら是非ご覧ください。

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暖かい宮崎の地で、皆様のお越しをお待ちしております。

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