育成馬ブログ 生産編⑧ 「その2」
育成馬ブログ 生産編⑧ 「その2」
子馬の引き方①
「日本と比較して海外の馬は大人しい」
よく耳にする言葉ですが、これは事実でしょうか?
答えは「No」だと思います。
世界有数の馬産国アイルランドにおいては、多くの馬が大人しいのは事実かもしれませんが、取扱いに苦労する馬もいないわけではありません。
そのような例外の原因として、生まれ持った気性もあるかもしれませんが、多くは生まれてから手をかけられることなく、四六時中放牧されていた馬でした。
では、どのように手をかければ、「大人しい」すなわち人に対して従順な馬に育て上げることができるのでしょうか?
その答えは簡単ではありませんが、生後から継続的に実施する「引き馬」が、良いトレーニング方法の一つといえます。
生後直後の引き馬
アイルランドにおいては、生後から母子を1人で引く方法が用いられています。
とはいえ、生後直後の子馬は自ら前進しないため、もう1名が後方からサポートして前進を促します。
これを毎日継続的に実施することで、子馬の肩の左側に人間がいる「引き馬の位置関係」を覚えさせるとともに、人馬の信頼関係を構築することができるのです。
生後直後の母子の引き馬
(アイルランド キルダンガン・スタッド)
その後も基本的には、子馬の保持にはリードを使用せずに、
「両手で抱える」
「頚もしくは肩の外側に手をかける」
などの方法を用います。
両手で抱える
頚もしくは肩の外側に手をかける
リードを使用しない理由は、生後間もない子馬の頸部に対するダメージが危惧されるためです。
アイルランドでも、牧場によってはリードを使用していますが、その場合であっても、目的は「リードに対する馴致」であって、決して馬を保持するために使用しているわけではありません(つづく)。
生後直後のリード使用の目的は馴致
(強く保持することはない)