育成馬ブログ 生産編⑨「その1」
ホルモン剤で泌乳誘発した乳母の活用
サラブレッドの生産現場で乳母が必要なケースとしては、母馬の死亡や子馬への虐待が上げられます。海外では、泌乳量不足や母馬の他国への種付けなどに乳母が利用されることもあります。
日高育成牧場では、これまで、子馬を虐待する母馬や、泌乳量不足の母馬などの代用母として、人工的にホルモン剤を投与により泌乳誘発した乳母を活用してきましたが、
本年については、蹄疾患を有した母馬の代用として、この方法を用いました。
蹄疾患を有していたとしても、出産することは可能です。
しかし、健康な母馬と比較して、放牧地での運動量が不足するため、子馬が競走馬として成長するためには大きな弊害となります。
当場の繁殖牝馬ダンスウィズジェニ(以下ダンス)は、妊娠末期になっても蹄の状態が思わしくなく、このまま子馬を産んでも、放牧地で十分な運動ができないだろうと判断し、乳母付けの実施に踏み切りました。
乳母は18歳の空胎馬ワンモアベイビー(以下ワンモア)、これまで11頭の子馬を産み育てているベテラン母さんです。
ワンモアは、乳母として使われたことはありませんでしたが、これまでも放牧地で他の子馬に哺乳を許すなど、その適正が十分あると判断しました。
ダンスの予定日は3月20日。
3月初旬からワンモアに対してホルモン処置による泌乳誘発を行い、予定日前には1日あたり3リットル以上を搾乳できるようになりました。
予定日を10日過ぎた3月30日、無事出産、
ダンスから初乳を採取したところ、十分量の免疫グロブリンが含まれていましたが、運動不足からくるものか、乳房が硬く、子馬が十分哺乳することができません。このため、保存初乳を経鼻投与し、移行免疫不全症の予防に努めました。
無事出産したダンス
保存初乳の経鼻投与
つづく