育成馬ブログ 生産編⑩「その2」
・電気牧柵の利用
サラブレッドの生産現場では、鹿の放牧地への侵入防止策として電気牧柵が利用されています。日高育成牧場でも、3年前ほど前から設置しており、一定の効果をあげています。
鹿対策として設置している電気牧柵
一方、本年からの新たな試みとして、放牧地内の「間仕切り」を目的として電気牧柵の利用を開始しました。これは、アイルランドなどの牧場で一般的に行われている方法を参考にしたものです。
「間仕切り」をしている放牧地は、生後間もない子馬が利用します。
これまで当場では、母子の放牧地として、「砂パドック(1アール以下)」「インドアパドック(約1アール)」「約2ヘクタールの放牧地」「約4ヘクタールの放牧地」がありました。
このため、狭い砂パドックやインドアパドックで過ごした後は、いきなり広めの2haの放牧地に放されることになります。
昨年までは、広い放牧地に放されて、勢いよく走る母馬の後を生後間もない子馬が追いかける光景をヒヤヒヤした思いで見ていました。
この場合、骨折や腱断裂など大きな事故が起こっても不思議ではありませんでした。
一方、2~4週間もの長期間に亘って、狭いだけではなく、衛生環境もあまり良くない砂パドックやインドアパドックに閉じ込めておくことは、母子いずれにとっても健康的とは言えません。
そこで、2ヘクタールの放牧地を1ヘクタール以下の大きさに間仕切りすることで、生後1週間の子馬が利用可能な放牧地を設置しました。
2ヘクタールの放牧地を間仕切りして、1ヘクタール以下の放牧地にリフォーム
電気牧柵で仕切られた放牧地
乾電池式のパワーユニット(電力装置)を使用
利用した電気牧柵は、馬にとって視認性が高い、幅4cmの帯状のものです。
あらかじめ、出産前の母馬を電気牧柵の放牧地に放して、良く見せておくことで馴致しておきました。
馬にとって視認性が高い、幅4cmの帯状の電気牧柵用テープ
興味本位でテープに触る子馬もいますが、一度電気を感じると怖がって近づかなくなります。
もちろん、何かのタイミングでパニックになった場合には、母子ともに突破するリスクは十分ありますので、あくまでも放牧地内の間仕切りに使用を限定した方が良さそうです。
電気牧柵の利点は、通常の牧柵と比較して安価で、一度設置した後も容易に移設できることです。このため、必要に応じて放牧地を何度でもリフォームすることができます。
また、放牧地の一部を養生したい場合や、何らかの理由で運動制限したい馬に対して、青草を食べさせたい場合にも有効かもしれません。
この場合であっても、突破されるリスクはありますので、その点を勘案した選択的な使用が推奨されます。
運動制限したい馬で、青草を食べさせたい場合にも有効
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