育成馬ブログ 生産編③「その1」
子馬の栄養管理 タンパク質①
10月現在、離乳後のJRAホームブレッド当歳8頭は、牧草豊富な広い放牧地
(8ha)で22時間の昼夜放牧を実施しています。
青草が豊富な放牧地での22時間の昼夜放牧
全頭いずれも集牧時(朝8~10時)に、バランサー型の飼料「スタム30」
(タンパク質含量30%)1kgを給餌しています。
現在、当歳に与えているバランサー型飼料「スタム30」
このような給餌方法に対して、時々、以下のような問い合わせがあります。
「タンパク質含量30%の飼料を子馬に与えた場合、タンパク質過剰によって
DOD(発育期整形外科的疾患)の発症リスクが高まるのではないか?」
はたして事実でしょうか?
この話を整理して考える場合、2つのポイントを考慮しなくてはなりません。
①タンパク質含量30%の飼料を与えると、タンパク質過剰を引き起こす。
②タンパク質過剰がDODを引き起こす原因である。
①については、飼料中のタンパク質含量ではなく、実際に子馬に与えるタンパク質の
量と質を考慮する必要があります。
軽種馬飼養標準においては、6ヶ月齢の子馬のタンパク質要求量は800g(1日当り)
であり、米国においてNRC(National Research Council)が作成した飼養標準
では、概ね680~810gの範囲とされています。すなわち、タンパク質含量30%の
飼料1kgを与えたとしても、タンパク質量は300gであり要求量の半分以下にしか
なりません。
22時間放牧中の当歳馬が1日に食べる放牧地の青草の量は約16kgと推定され
ます。放牧草(日高地区の平均)に含まれるタンパク質量は16kg中に約800gなの
で、タンパク質含量30%の飼料と合わせると要求量の約1.4倍の1100gのタンパク
質給与になります。
育成期の若馬、競走馬および繁殖馬など様々な馬のライフステージの飼養管理に
おいて、タンパク質給与量が要求量の1.5倍を超えることは珍しくありません。それ
だけ一般的なサラブレッドの飼料中には、タンパク質が豊富に含まれているということ
です。
海外の様々な指導書において、タンパク質の過剰摂取は避けるべきと言われます
が、その量について明確なガイドラインはありません。実際、国内で要求量の1.5倍
程度のタンパク質を摂取したことにより、馬の健康に悪影響を及ぼしたという報告は
なく、ホームブレッドに与えている要求量の1.4倍程度のタンパク質は過剰な量とは
いえません。
以上のことから、タンパク質含量30%の飼料を過剰に与えない限りは問題ないこと
がわかります。
つづく