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育成馬ブログ 生産編②「その2」

3.後膝のレントゲンの馴致

 

市場レポジトリーでは、

購買者から後膝のレントゲンが求められるようになりました。

もちろん、上場しない場合であっても、

この部位の撮影を実施する機会は少なくありません。

 

一方、後膝や股間にレントゲンのカセットが触れて馬が蹴り上げて、

撮影者や撮影補助者が大怪我をするケースも少なくありません。

このため、まだ体が小さく、力が弱い当歳のこの時期に

後膝のレントゲンの馴致を実施することをおすすめします。

 

敏感な馬については、最初はタオルパッティングから実施し、

徐々にカセットに慣れさせていきましょう。

 


YouTube: 後膝レントゲン検査の馴致

 

(※タオルパッティングを用いた方法については、こちらをご覧ください)

https://blog.jra.jp/ikusei/2016/03/post-84bd.html

  

 

当歳馬の躾の基本的な考え方

 

以上の躾の基本的な考え方は、

「人間が馬に求めていることは、

危険なものでも痛みを伴うものでもないと、馬に納得させること」です。

  

例えば、レントゲンのカセットが股間に触れたところで、

痛みを感じる馬はいません。

これまで触られたことが無い部位であり、

本能的に「何か痛い目に遭うのではないか」と、

恐怖を感じているだけです。

 

他の馬と離れて不安を感じるのは、

自分だけ群と離れて、守ってくれる馬がおらず、

痛い目に遭わされるのではないかと、

恐怖を感じているだけです。

  

このため、人間が馬に対して

「カセットが股間に触れても痛くないこと」

「1頭だけで残されても人間が安心感を与えてくれること」

を納得させることが、

人馬の信頼関係の構築に繋がります。

  

紀元前の哲学者クセノフォンは、

「馬を群衆に慣れさせる方法は、

馬を群衆のいるところに連れていき、

騒音や目に見えるものすべてが

怖いものではないということを教えることだ」と言っています。

2000年以上、

連綿と世界中のホースマンに受け継がれてきた

馬の躾の基本方針ですね。

                          

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

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育成馬ブログ 生産編②「その1」

・離乳後、当歳馬をしつけるための「3つの方法」

 

離乳直後の当歳馬は、

「母馬」という絶大な安心感を喪失するため、

少なからず精神的に不安定な状態に陥ります。

このため、馬によっては

離乳後に取扱いが困難になる場合もあり、

これまで以上に人に対する信頼感や

安心感を育む努力が必要になります。

  

一方、放牧地で十分な青草を食べながら、

他の馬たちと一緒に自発的な運動をすることが、

この時期の子馬の健康な成長にとって必要不可欠であるため、

必然的に人間と接する時間は限られます。

このため、短時間で効果的な躾を実施することが求められます。

  

そこで、今回の育成馬ブログでは、

離乳後の当歳に対して日高育成牧場で実施している

「集放牧の時間を利用した躾」について、

3つの方法をご紹介します。

毎日継続して、これらを実施することで、

人馬の信頼関係をしっかり構築していくことができます。

  

1.間隔を離した引き馬

 

集放牧時、群のままで前の馬との間隔をつめる引き馬では、

馬は落ち着いて歩きます。

しかし、場合によっては、引いている人ではなく、

前の馬をリーダーとして認識しています。

このため、前の馬との間隔を空けることで、

引いている人がリーダーとなり、人馬の関係を構築します。

「常に馬の意識を人間に向けさせること」を念頭に置き、

前に歩かない馬や、逆に前に行きたがる馬の場合、

引いている人が馬のスピードをコントロールしましょう。

 

Photo 

前の馬との間隔を空けた引き馬

  

2.駐立・常歩展示の練習

 

集放牧時に、

放牧地と厩舎の途中で駐立・常歩展示の練習をします。

重要なことは、必ず1頭で実施することです。

落ち着くからといって、

他の馬を近くに残しておくことは、「全く意味がありません」。

馬が寂しがったとしても、

人間がリーダーとなって安心感を与えましょう。

 

駐立および常歩展示、

いずれの場合であっても重要なことは、

「人と馬の距離感」です。

特にリード(引き綱)はゆったりと保持し、

決して短く保持して

無理矢理抑え付けることがないように気を付けましょう。

ここでも同様に、

馬の意識を人間に向けさせることがポイントになります。

 


YouTube: 駐立展示の練習

 

 


YouTube: 常歩展示の練習

 

つづく

活躍馬情報(事務局)

11月5日の京都1R(2歳未勝利)で、

日高育成牧場で育成されたエッシャー号が優勝しました。

通算5戦目、1番人気に応えての勝ち上がりとなりました。

同馬は本年4月に開催された

2016年JRAブリーズアップセールで取引されました。

今後の活躍を期待しております。

 

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 11月5日 5回京都競馬1日目 第1R  2歳未勝利 ダ 1,200m

エッシャー号(グラッドリーの14) 牡

【 厩舎:中竹 和也 厩舎(栗東) 父:サウスヴィグラス 】

「強い馬づくりのための生産育成技術講座2016」開催のご案内

競走馬の生産育成にたずさわる皆様への

情報提供・技術普及を目的とした

「強い馬づくりのための生産育成技術講座2016」を

以下の日程で開催いたします。

  

開催日時および場所

 ① 平成28年11月14日(月) 18:00-19:45

   浦河町 浦河総合文化会館・文化ホール4F

 ② 平成28年11月15日(火) 18:00-19:45

   日高町 門別総合町民センター・大集会室2F

  

講演内容:

・  『馬鼻肺炎の予防対策』

(JRA競走馬総合研究所 分子生物研究室 辻村行司) 

・  『育成後期の運動器疾患』

(軽種馬育成調教センター 軽種馬診療所 安藤邦英) 

・  『レポジトリにおけるX線所見について』

(JRA日高育成牧場 生産育成研究室 佐藤文夫)

 

司会進行: 羽田哲朗(JRA日高育成牧場 生産育成研究室)

日高軽種馬生産振興会青年部連合会

 

【主催】

 JRA日高育成牧場

 日高軽種馬生産振興会青年部連合会

【後援】

 日高軽種馬農業協同組合

【お問い合わせ】

 JRA日高育成牧場 生産育成研究室

 TEL:0146-28-2084(土・日・祝除く9:00~17:00)

 

事前申し込みは不要、入場無料でご参加いただけますので、

多くの皆様のご来場をお待ちしております。

 

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昨年の様子(左:浦河町、右:日高町)

 

活躍馬情報(事務局)

10月30日の東京2R(2歳未勝利)で、

日高育成牧場で育成されたサノサマー号が優勝しました。

堂々の1番人気に応え、通算4戦目での勝ち上がりとなりました。

同馬は本年5月の北海道トレーニングセールで取引されました。

 

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 10月30日 4回東京競馬9日目 第2R  2歳未勝利 ダ 1,600m

サノサマー号(パピュラの14) 牡

【 厩舎:中舘 英二 厩舎(美浦) 父:サマーバード】

  

さらに、同日の東京3R(2歳未勝利)では、

日高育成牧場で育成されたフジマサクイーン号が優勝しました。

ダートがわり2戦目となる3戦目での勝ち上がりとなりました。

同馬は本年4月に開催された

2016年JRAブリーズアップセールで取引されました。

 

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10月30日 4回東京競馬9日目 第3R  2歳未勝利 ダ 1,400m

フジマサクイーン号(チューベローズの14) 牝

【 厩舎:菊川 正達 厩舎(美浦) 父:シニスターミニスター】

 

両馬の今後の活躍を期待しております。