育成馬ブログ 生産編⑥(その1)
「交配誘発性子宮内膜炎」について
○「交配誘発性子宮内膜炎」とは
そもそも「子宮内膜炎」とは文字通り繁殖牝馬の子宮内に炎症が起き、
受胎率が低下するやっかいな病気の一つです。
一般的には細菌や真菌(カビ)などの感染が原因で起こることが
知られていましたが、近年必ずしも感染が原因とは限らず、
交配(種付け)後の精液に対する過剰な免疫応答や子宮機能の低下により
精液の排出が上手くいかないことが原因で起こる子宮内膜炎が
存在することが明らかとなっています。
前者を「感染性子宮内膜炎」、
後者を「交配誘発性子宮内膜炎(Breeding Induced Endometritis
もしくはPost-Mating Induced Endometritis)」
と呼んで区別することが提唱されています。
○診断と治療のポイント
交配の24時間後に排卵確認を兼ねて経直腸超音波検査を行い、
子宮内の状態を観察します。
そこで、子宮内貯留液が2cm以上認められる場合(写真1)、
もしくは炎症反応が8時間以上持続する場合、
「交配誘発性子宮内膜炎」と診断されます。
ここで綿棒によるぬぐい液検査(子宮内スワブ検査)を行っても、
細菌が検出されないことが「感染性子宮内膜炎」との違いです。
写真1 種付けの24時間後に子宮内貯留液が2cm以上認められる
治療にはコルチコステロイド製剤(デキサメサゾン、プレドニゾロン)の
全身投与、子宮洗浄、子宮収縮剤(オキシトシン、クロプロステノール)の
投与などがあります。
「交配誘発性子宮内膜炎」には同じ馬が毎年繰り返して発症するという
特徴があるため、過去に同病を発症したことのある繁殖牝馬に対しては
炎症を抑えるためアセチルシステインを
交配前に子宮内に注入するという方法もあります(写真2)。
写真2 交配前にアセチルシステインを子宮内に注入
(つづく)