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育成馬ブログ 生産編⑤(その1)

冬期の子馬の蹄のケア ~白線裂~

 

当場では、当歳から1歳にかけての冬期も昼夜放牧を実施しています。

冬期の昼夜放牧のメリットとして、

馬本来の生活形態である「群れ」で

多くの時間を過ごすことによる精神的な安定、

屋内で長時間繋養される場合と比較して

換気が良い屋外で過ごすことによる感染症予防などがあげられます。

 

デメリットとしては、

降雪による青草の摂取量減少、

運動量低下などがあげられます。

これらに対しては、

放牧地へのロール乾草設置や

ルーサンなどのコンパクト牧草を各所に散布、

ウォーキングマシンによる運動などの対策を実施しています。

 

一方、冬期の昼夜放牧による上記以外のデメリットとして、

蹄の感染症があげられます。

当場でも例年この時期は子馬の蹄感染症に悩まされています。

では、なぜこの時期に蹄の感染症が多いのでしょうか?

 

Photo

冬期放牧の悩みの1つは蹄の感染症

 

 

この時期の蹄感染症の原因の1つとして、

白線裂があげられます。

白線裂とは、

白線(蹄下面に見られる蹄底と蹄壁の境界。白帯ともいわれる)の

角質が腐敗あるいは崩壊することで、

蹄底と蹄壁が離開する状態です。

 

Photo_2

白線の構造(蹄底)

 

1白線の構造(矢状断面)

 

1_2

 

1_3 

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(上)正常蹄  (中)軽度の白線裂 (下)重度の白線裂

 

 

冬期に白線裂の発症が多い原因として、乾燥した空気、

放牧地の地面の凍結および泥濘(ぬかるみ)などが考えられます。

これらによって、

蹄の角質が脆弱化して白線が腐敗・崩壊します。

人間でもこの時期の水仕事で

手指の肌荒れに悩まされるのと同様です。

 

1_4 水仕事による手指の肌荒れと同様、

冬期の地面の凍結や泥濘(ぬかるみ)が白線裂の要因

 

 

白線裂が悪化して蹄内部にまで空洞が拡張すると、

離開部位から細菌や真菌などが侵入することで、

蹄内部における感染が成立、

すなわち膿瘍が形成されることによる疼痛を伴う炎症がおこり、

跛行を呈します。

軽症例の場合には、

そのまま自然治癒することも多いのですが、

重症例の場合には放牧を中止せざるを得ませんし、

治癒に時間を要する症例も少なくありません。

 

1_5白線裂から細菌などが侵入し膿瘍を形成する。

 

(つづく)