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育成馬ブログ(生産⑥)

○ブルーライトマスクの効果と活用法

 例年に比べると積雪の少ない暖かい冬となった日高地方でしたが、一転して4月は肌寒い日々が続いていました。そんな日高地方も5月になってからはようやく暖かくなってきており、この春に生まれた子馬たちも元気に日々を過ごしています。

 

ブルーライトマスクによるライトコントロールの効果

 今回は、以前に紹介したブルーライトマスク(写真1)によるライトコントロール(https://blog.jra.jp/ikusei/2020/01/post-2760.html)を試した結果について、報告したいと思います。ライトコントロール法について詳しく知りたい方は、こちら(https://blog.jra.jp/ikusei/2014/01/post-5575.html)を参考にしてください。

 ブルーライトマスク(EquilumeTM Light Mask)は、単眼ブリンカーの内側に青色発光ダイオードが組み込まれており、馬房に集牧しなくてもライトコントロールの効果が得られる製品です。今シーズンの空胎馬7頭の内、このマスクを装着して24時間放牧を継続した群(4頭)と従来の馬房でライトコントロールを継続した群(3頭)に分けて検証を行いました。

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写真1. ブルーライトマスク

 両群のシーズン初回排卵、受胎状況についてまとめた結果は表1のようになりました。両群ともライトコントロールを12月より開始したところ、3月上旬までには全ての馬でシーズン初回排卵が認められました。この結果から、ブルーライトマスクを装着して24時間放牧を実施した状態でもライトコントロールの効果が得られ、シーズン初回排卵の早期化に対しては効果的であると考えられます。

 一方で、受胎状況について見てみると、ブルーライトマスク群では種付した4頭中1頭のみ受胎(※不受胎の中で1頭は2回目の種付で受胎)、馬房群では種付した2頭とも受胎という結果でした。この結果は、24時間放牧では給餌による繁殖牝馬のボディーコンディションスコア(BCS)の維持が難しくなること、夜間に氷点下の環境下に晒されてしまうことなどの影響であると考えられ、繁殖牝馬を受胎に向けて適切な状態に維持するためには、ブルーライトマスクの装着のみでは不十分なのかもしれません。今後は、24時間放牧における適切な飼養管理方法について、さらなる検討を行っていきたいと思います。

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表1.ブルーライトマスクの効果の結果

 

ブルーライトマスクの活用法

 これまで述べてきたように、ブルーライトマスクの装着のみで発情の早期化の効果は得られるものと考えられます。このことから、馬房内にタイマーによるライトコントロールを実施できる設備のない施設では、ブルーライトマスクは有効な選択肢になるものと思われます。当場では、海外から輸入した繁殖牝馬に対して輸入検疫中にブルーライトマスクを装着する試みも行いましたので、その結果についても紹介します。

 2019年に海外から輸入した2頭の繁殖牝馬に対して、12月初旬に輸入検疫施設に入所した時から、ブルーライトマスクを装着しました。ブルーライトマスクの装着は、事前に動物衛生検疫所に申請を行い、許可を得てから装着しています。12月下旬に当場に移動してからは、ブルーライトマスクを装着した状態で昼放牧の管理を行いました。一方で、2018年に海外から輸入した2頭の繁殖牝馬は、12月下旬に当場に移動してからライトコントロールを実施できる設備のある検疫厩舎でライトコントロールを開始しました。つまり、2019年に輸入した2頭については、2018年の2頭に比べると、20日ほど早くライトコントロールを開始しています。

 これらの輸入繁殖牝馬のシーズン初回排卵、受胎状況についてまとめた結果は、表2のようになります。両群とも3月下旬までにはシーズン初回排卵を認めていて、初回排卵の早期化の効果が得られたことを示す結果となりました。一方、受胎状況については、2018年の通常群で2頭中1頭が受胎であったのに対し、2019年のブルーライトマスク群では2頭とも受胎という結果でした。この結果は、ブルーライトマスクによるライトコントロールであっても、馬房内での適切な飼養管理を行えば、早期に受胎させることが可能であることを示す結果と言えるかもしれません。

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表2.輸入検疫中のブルーライトマスクの効果


 以上のように、ブルーライトマスクの装着によるライトコントロールは、初回排卵の早期化に効果的であると考えられます。しかし、その状態での繁殖牝馬の24時間放牧に関しては課題が残っている状況です(図1)。このことを踏まえて、今回紹介した内容を活用していただければ幸いです。

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図1.ブルーライトマスクの効果のまとめ