24-25育成馬ブログ(日高①)
〇新人職員の速歩ドライビング練習
サマーセールも終わり、現在日高育成牧場では54頭(ホームブレッド7頭、市場購買馬47頭)のJRA育成馬を繋養しています。これまで当ブログでも何度かご紹介してきましたが、近年騎乗馴致の際に速歩でのドライビングを行っています。今回は、新人職員の速歩ドライビング練習についてご紹介したいと思います。
2年ほど前から我々は騎乗馴致段階で“速歩でのドライビング”を積極的に取り入れています(写真1、動画1)。まず、速歩のドライビングでは「左!」「まっすぐ!」「右!」「まっすぐ!」「左!」「まっすぐ!」「右!」・・・という風に、短時間で多くのコマンドを馬に出し続けることとなるため、馬が人にフォーカスし、人から出される命令にすぐに応えようと従順になる効果があると感じました。その結果、以前より人の言うことをきく馬が増えた気がしています。
また、常歩よりも速いスピードでドライビングを行うことにより、馬が本当にまっすぐ進んでいるか、開き手綱の扶助を理解しているかが確認でき、結果として騎乗調教開始後にまっすぐ走れる馬が増えました。例えて言えば、自転車を運転する際に、ゆっくり漕ぐとフラフラしてしまいますが、ある程度のスピードを出し続けることでまっすぐな状態を維持できるのと同じ理屈です。スタッフたちには速歩で進む馬と同じ速さで移動しなくてはならないため苦労をかけましたが、そのおかげで走路での騎乗調教開始直後からまっすぐ走れる馬を作ることができました。
(動画1)速歩でのドライビング
昨シーズンからは具体的に、「8の字」や「コの字」といった図形をきれいに描いてドライビングおよびその後の各個騎乗をするように指示しました。「8の字」のドライビングでは直線部分で左右のハミをあえてフリーにすることで、ハミが外れている状態ではひたすらまっすぐ前進していれば良いことを教えていきました(図1)。「コの字」のドライビングでは覆い馬場の出入口など馬が気をとられそうなポイントをあえてまっすぐに通過させることで、人の指示があるまではまっすぐ走り続けなくてはならないことを教えこみました。その結果、馬にとって“まっすぐ走り続けることがオフ”の状態を作ることができ、更にまっすぐに走れる馬が増えたと実感しています。
さてこの「速歩でのドライビング」ですが、誰でもいきなり出来る訳ではありません。騎乗することとは別のスキルが要求されるため、今年初めて日高育成牧場勤務になった新人たちには育成馬の騎乗馴致開始前に乗馬を用いて速歩ドライビングの練習をしてもらっています。
ドライビングで馬を曲げるためには、曲がりたい方向(左に曲がりたいなら左)の手綱を短く持つ方法と、曲がりたい方向と逆の方向(左に曲がりたいなら右)の手綱を伸ばす方法の2つのやり方がありますが、今回はどちらかといえば簡単な前者の方法についてご紹介します。まず、左に曲がりたい場合、レーンを2本とも右手に持ちます。次に空いた左手で2本のレーンを束ねている箇所より前方(馬側)で左のレーンを持ちます。そうすると、左のレーンが右のレーンより短くなり、左のレーンが張られるため、馬が内方姿勢となり左に曲がります(図3)。これが基本の動作となり、あとは人の脚力で速歩をする馬についていき、この動作を繰り返せるように練習するのみです(写真2、動画2)!
(動画2)速歩ドライビング練習風景
以上、今回は新人職員の速歩ドライビング練習についてご紹介いたしました。今シーズンも9月4日から育成馬の騎乗馴致を開始いたします。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。