細菌の分類学とDNA解析について
こんにちは、微生物研究室の佐藤です。
私は先日、静岡県で細菌同定のための遺伝子配列解析について研修を受けてきました。そこで今回は、細菌の分類学について紹介させていただきます。
分類学(taxonomy)とは、あるものを共通の特性に基づいてグループ分けしそれぞれの違いを区別していく学問です。具体的には、種やグループを識別して名前(学名)を付けることを目的としています。細菌の分類や同定の手法は、科学の進歩とともに大きく変わってきました。
1900年代初頭は、菌の形や大きさといった「形態学的特徴」や、細菌が増殖できる環境条件などの「生理学的特徴」で分類されてきました。その後、1960年代頃からは、細胞壁のアミノ酸や菌体内の脂肪酸の組成などの「化学分析」による分類が主流となりました。そして、1977年にフレデリック・サンガーによってサンガー法(ジデオキシ法)が発表されてからは、大きく状況が変わりました。1980年代以降は、細菌のリボソームRNA遺伝子(rDNA)のDNA塩基配列に基づく分類が行われるようになりました。それにより、1980年時点では細菌種の数は約1800種でしたが、2025年現在では約25000種まで増加しました。さらに近年では、細菌の持つ全ての遺伝情報(ゲノム)の塩基配列を読み解く「ゲノム解析」の開発が進み、これまで以上に細かい違いを分類できるようになっています。
分類学は、地球上の膨大な種類の生物(細菌)の進化の歴史や関係性を理解するために、必要不可欠な学問です。身近な自然を観察する時、ぜひ分類学の視点を取り入れてみてください。きっと、これまでとは違う発見があるはずです。
写真:魅惑の静岡おでん
牛すじや黒はんぺんなどの具材や黒い見た目が特徴的で、だしの香りが深く染み込んだ優しい味わいはとてもお酒に合いました!