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2025年6月15日 (日)

夏の始まりは熱中症に注意

運動科学研究室の胡田です。

 初夏を迎え、各地で夏日を記録する日が増えるようになりました。近年では、人の熱中症に関するニュースが頻繁に報じられるようになっていますが、競走馬にとっても熱中症は深刻な問題になっています。熱中症といえば真夏に警戒されるイメージが強いですが、実は、夏の始まりであるこの季節こそ特に注意が必要です。

「熱中症警戒アラート」などで耳にする暑さ指数(WBGT)は、一般的に8月に最も高くなります。そのため、熱中症は8月が最も多く発生しそうですが、競走馬における熱中症の発生割合は意外にも8月よりも6月・7月に多い傾向があります

Photo_3・4-9月における競走馬の熱中症発生状況(Takahashi et al., Equine Vet J., 2020改変)

 その理由として考えられるのが、「暑熱環境への身体の適応の可否」です。人においては、体がまだ暑さに慣れていない夏の始まりの時期は、急激な気温上昇に対応しきれず、熱中症の発生リスクが高まることが知られています。まだ十分な研究成績はないものの、競走馬においても、寒い冬から涼しい春といった一連の比較的低温な気候から、やたら暑くなる猛暑への移行期において、身体が十分に暑熱に順応できていないことが要因となって熱中症になりやすいのではないかと考えられます。

 本格的な猛暑到来まではまだ少しありますが、人も馬も健やかに過ごせるよう体調の変化に気を配り、運動後にはしっかりクーリング(冷却)することや、こまめな水分補給など、今の時期から熱中症への備えを怠らないようにすることをお勧めします。