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騎乗馴致の前には、歯の検査(日高)

朝夕の冷え込みも始まり、山の緑も色づき始めました。育成馬の馴致も順調に進んでいます。1015日からは317頭の馴致も開始しています。今年は、これまでの過程で特に馴致を遅らさなければならない馬は出てきておらず、結局のところゆっくり調教を行う4群を設ける必要はなさそうです。

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93日に馴致を開始した第1グループは、800mトラック馬場で誘導馬を先頭に騎乗調教を行っています。

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924日に馴致を開始した第2グループは、騎乗を前に場内各所で十分なドライビングを行っています。

さて今回は、馬の口の中、歯の話です。

馬の騎乗に際して、ブレーキやハンドルの役割を果たすのがハミです。そのハミは図にあるように、前歯と奥歯の間(歯槽間縁といいます)に装着されます。放牧地で草を食むのには何の問題もありませんが、騎乗してコントロールするためには、人工物であるハミの装着が不可欠です。そのハミが口腔内に気持ちよく収まり、良好に機能するためには、ハミと歯によって頬や口角の皮膚が傷つかないように、その可能性のある部分の歯の角(とがった部分)を滑らかにするとともに、咀嚼に不必要な歯を抜く必要があるのです。

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前歯と奥歯(臼歯)の隙間を歯槽間縁といいますが、この存在がハミの装着と馬への騎乗を可能にしたといっても過言ではありません。前歯と奥歯の間の黒い●がハミを装着する位置です。Aが狼歯(やせ歯とも言われ、ハミが引かれた際に口角の皮膚を傷つけてしまうことがあります)、Bが犬歯(牡馬のみにあり、通常ハミ受けとは関係ありません)です。

手順として、まず指で狼歯の有無や歯のとがり方をチェックし、必要な場合には、口を開けて直接眼で見て確認します。

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歯や口の中の異常をチェックしている獣医スタッフ。ヘッドライトを使用し、奥歯の状態まで確認します。

狼歯が有る場合には、根から完全に抜歯します。馬の臼歯は咀嚼による摩滅を補うため一生伸び続けます。そのため根は非常に深く抜歯は困難ですが、狼歯は咀嚼には関与せず根も浅いため、抜歯用のノミで綺麗に抜歯することができます。

狼歯は牡牝に関係なく、およそ2/3近い馬に生えてきますが、その大きさや形は様々で、左右片方だけの場合や下顎にあることもあります。

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上顎臼歯の前面にある大きな狼歯。

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抜歯された左右の狼歯。比較は単4電池。比較的大きな狼歯ですが、抜歯の後は特に治療も必要とせずに治癒します。

抜歯が終わったら、今度はハミに当たる可能性がある前臼歯の一番手前の部分を滑らかにするため、歯をヤスリ(歯鑢:しろ)で削ります。馬の上顎は下顎に比べて幅が広く、咀嚼を繰り返すことで上顎臼歯の外側と下顎臼歯の内側が尖ってきます。その鋭利な部分を滑らかにするわけです。

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歯の処置専用の大きめの無口を付け、馬用のヤスリで歯を削っているところ。上顎の奥歯(臼歯)の外側を処置しています。

一度処置をしても、前述の通り馬の歯は一生伸び続けるため、ハミを付けて騎乗する限りは定期的にチェックする必要があります。育成馬達は、4月に行われるBUセールの前に再度チェックを受け、整歯された後に上場されます。