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分娩に関する注意事項(生産)

前回お伝えしたように、本年の初産駒は破水から出産までの時間が7分と短く、極めてスムーズに生まれました(写真1)。当育成牧場の分娩監視においては3つのステージ、すなわち、第1段階(発汗・不穏~破水)、第2段階(破水~娩出)および第3段階(娩出~後産の排出)の時間を記録しています。この中で第2段階の時間は、子馬の健康状態および生存率において極めて重要です。

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写真1 本年度の初産駒(ビューティコマンダの13)。破水後の時間は短く、スムーズな分娩でした。

分娩の第2段階が40分を超えると子馬の健康被害リスクが高まる

米国McCue博士が実施した妊娠馬1047頭の大規模な分娩調査によると、第2段階の平均時間は16.7分(2~152分)であり、7割強が20分以内に娩出しています。重要なことは、40分以上の時間を要した場合、死産、罹患率(生後5日以内の疾患発症)および死亡率(生後5日以内)が、20分以下の分娩と比較してそれぞれ16.1倍、7.9倍および2.5倍に上昇することです。このため、子馬の健康を考慮した場合、可能な限り迅速な分娩が望ましいと考えられます。もちろん、第2段階に時間を要しているということは、分娩に際して何らかの異常がある可能性が高いため、破水後の胎子の状態をいち早く確認することが重要であることは言うまでもありません。なお、緊急時に破水時刻を正確に記録するためには、携帯電話の発信履歴が役立ちますので有効活用しましょう。

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図1 第2段階(破水から分娩まで)の時間を記録しておくことは重要であり、その際には携帯電話の発信履歴が役立つ。

安全な分娩のための重要なポイントは?

一方、分娩時間を短縮させるために、胎子を人為的に牽引することは推奨されません。過度な牽引は子馬の健康状態のみならず、母体においても分娩後の子宮機能の回復に悪影響を及ぼす可能性があるからです。もちろん、胎位異常やレッドバッグなどの緊急時の場合はこの限りではないため、母馬の怒責(いきみ)にあわせた適切な力および方向による早急な牽引が必要となります。

以上のことから、分娩に際しては、

1.分娩兆候をいち早く察知すること(適切かつ継続的な分娩監視の徹底)

2.破水時間を記録すること(第2段階の経過時間の把握)

3.破水後の胎子の状態を確認すること(膣内検査の実施)

が重要であり、状況によっては、異常胎位の整復や獣医師への連絡などの迅速な対応が必要となります。このための事前準備として、分娩時疾患や胎位整復の予備知識の習得、酸素ボンベの準備、および獣医師への連絡体制や近隣の馬診療施設への搬入方法の確認などが必要となります。

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写真2 破水後は胎子の状態を早急に確認する。

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写真3 レッドバッグや新生子馬無呼吸症などの緊急事態に備えて、酸素ボンベを準備する。

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    ※毎月第一火曜日が新作の初回放送(ただし1月は8日が初回放送)

   ・放送内容

       1月号  非分娩馬への泌乳誘発および乳母としての導入

       2月号  分娩後初回発情種付けにおける受胎率

       3月号  分娩および分娩直後の当歳馬の管理