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育成馬ブログ 日高⑨(その1)

○乳酸値から振り返る育成馬の調教について

 

 今回は第14回のブリーズアップセール(http://jra.jp/training/bus.html)

上場予定の日高育成牧場の育成馬の調教についてご紹介します。

 当場での調教は、屋内800m馬場(もしくは屋外1600m馬場)

および屋内1000m坂路を組み合わせて行っており、

1週間のうち1もしくは2回は坂路コースで強調教を行っています。

その際の運動強度、すなわちスピード設定は、馬の状態や騎乗者の感触など

従来の指標に加えて、坂路調教直後に測定する乳酸値を用いて

決定しています。

 

 

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坂路調教の様子

(左:ソングオブサイレンスの16 右:セイウンクノイチの16)

 

 乳酸とは、調教時に筋肉で産生される糖の代謝物です。

走行速度が一定以上になると、有酸素エネルギーに加え、

無酸素エネルギーが利用されるようになり、乳酸が産生されます。

走行速度の上昇とともに産生量が増加し、血中濃度が上昇するため、

血中乳酸値は調教時の運動負荷を評価する指標として有用です。

 

  

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図2.走行速度と乳酸値の関係性

 

 乳酸値については以前の記事をご参照ください。

http://blog.jra.jp/ikusei/2017/04/post-10db.html

 下図は昨年と本年の育成馬について、同じ時期の坂路の上がり3Fタイムと

乳酸値を比較したものです。同じタイムで走行した場合でも、

今年の乳酸値が昨年よりも全体的に高いことがわかります。

 

 

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坂路上がりタイム(3F)と乳酸値の関係

 

 また、下図は個別の馬ごとの坂路上がり3Fタイムと乳酸値です。

A,Bは昨年、C,Dは本年の育成馬の3月下旬における測定値です。

同程度のタイムであるにも関わらず、乳酸値に差が認められます。

ばらつきはありますが、本年は概ね3-4mmol/l程度高い値を示しています。

 

 

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昨年と本年の育成馬の坂路上がり3Fタイム(秒)と乳酸値(mmol/l)(3月下旬)

 

 これらの結果は、「今年の育成馬は体力が無い」ことを

示しているのではなく、BTCの坂路馬場の管理状況が

大きく変わったことに影響を受けていると考えられます。

昨年までのBTC坂路は、経年劣化によってウッドチップが

細かかったことに加え、散水と転圧によって、

比較的「走り易い」馬場に管理されていました。

しかし、今シーズンからは新しいウッドチップを多量に補充し、

散水および転圧を行わないことで、より運動負荷がかかる馬場作りが

行われています。このため、同じタイムで調教を行った場合、

昨年よりも高い乳酸値が出るようになりました。

 つまり、本年はより負荷がかかるトレーニングを積むことができている

と考えられます。

(つづく)