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育成馬ブログ(日高③)

○2つの嬉しいお知らせ

 

この秋、JRA日高育成牧場に2つの嬉しいニュースが届きました!

 まず1つ目は、9月15日に静岡県のつま恋乗馬倶楽部で行われた「第71回全日本障害馬術大会2019 PartⅡ」の内国産障害飛越競技において,当場職員の塚本敏一選手とフリーデン・アポロ号が見事に優勝を飾ったことです。

 内国産、すなわち国内で生産された乗馬による障害飛越競技の中で、最高峰の試合で優勝した塚本職員は、相棒アポロ号の調教のみならず、当場の育成馬の調教も担当しています。

 競走馬と馬術競技馬、それぞれに対する調教方法の共通点や相違点については、多くの馬関係者から様々な見解が示されていますが、両者に活用可能なテクニックや考え方を個々の馬の個性やステージに合わせて取り入れていくことが最も合理的ではないかと考えます。当場で育成馬に騎乗する他の職員も、やはり乗馬の騎乗や調教に従事しておりますので、今後も両者に対して、それぞれがより適切な方法でアプローチしていくことで、良い結果につなげていければと思います。

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塚本敏一職員とフリーデン・アポロ号

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育成馬に騎乗する塚本職員(中央)

 

 そして2つ目のグッドニュース、10月7日に栃木県の日本装削蹄協会 装蹄教育センターで行われた「第72回全国装蹄競技大会」において、当場の装蹄師、吉川誠人職員が2連覇を飾りました。

 この競技会は、実馬の装蹄や蹄鉄を作成する技術、さらに馬を観察して装蹄方針を決定する判断力など、装蹄師に必要とされる技量を総合的に競うものです。毎年1回開催される本大会で、全国から予選を勝ち抜いた装蹄師や過去大会の優勝経験者を含む36名が腕を競い合うなか、見事2年連続で吉川職員が最優秀選手の栄誉である農林水産大臣賞を授与され、優勝旗を日高育成牧場に持ち帰ってくれました。

 彼は繁殖牝馬や子馬、育成馬および乗馬のフットケアに従事しており、当場には欠かせない存在です。生まれたばかりの子馬、時にトップスピードでの調教を強いられる育成馬、体格の大きな乗馬や繁殖牝馬まで、同じ馬でも異なる形状や性質の蹄を取り扱う装蹄師は、各馬の課題に対する最適解を見つけるという高いスキルが要求されます。

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競技中の吉川職員

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優勝旗を手渡される吉川職員

 

 二人の活躍に刺激を受けた他のスタッフも、負けじとお互い切磋琢磨しながら技術を高めていこうと、場全体で盛り上がっています。

「馬づくりは人づくり」、まさに至言ですね!

活躍馬情報(事務局)

10月27日(日)新潟11R(ルミエールオータムダッシュ)では、日高育成牧場で育成されたレジーナフォルテ号が、ゴール直前で外から見事な差し切り勝ちを見せ6勝目を挙げました!

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10月27日(日)3回新潟6日目11R ルミエールオータムダッシュ(L)芝 1,200m

レジーナフォルテ号(ナイキトライアンフの14) 牝

〔厩舎:佐藤吉勝(美浦) 父:アルデバランⅡ〕

 

今後のさらなる活躍を期待しております。

育成馬ブログ(宮崎②)

○育成馬のブレーキングはじめてます

 9月下旬にセプテンバーセール購買の牝馬3頭が新たに入厩し、本年の宮崎の育成馬22頭すべてが揃いました。一方、6月~7月に入厩した馬たちにとっては、宮崎での生活も数ヶ月が経過し、すっかり環境に慣れて一回りも二回りも体が大きくなって力も付いてきています。しかし、まだまだ競走馬とは言えません。競走馬になるには、いくつものことを教えていかなければなりません。そのひとつが、騎乗するための準備作業であるブレーキング(騎乗馴致)です。

 宮崎育成牧場においても、馴致や管理方法をまとめた「JRA育成馬管理指針」に則って管理しています。今年も9月から牡馬10頭のブレーキングを開始しています。

 今年の宮崎地方は雨の日が多く、豪雨によりラウンドペンとよばれる円馬場が水没することもありました。決してコンディションのよい日ばかりではありませんでしたが、馬と職員の頑張りにより予定通りトラブルなく騎乗まで教えることができています。

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突然の雨にずぶ濡れになりながらも、馬を躾けます

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入念なドライビングで「ハミ受け」を形成しながら、馬場等の環境に慣らします

 

 牡馬の騎乗の目処がついたら、次は牝馬の馴致にとりかかります。牝馬は牡馬よりも気難しいことが多いため、騎乗されることにマイナスイメージを持つことがないよう、馬が送るサインを読みとりながら丁寧に根気強く教え込んでいきます。

 なお、今年は通常のブレーキングに加えて、本年9月に新導入したトレッドミルにも慣らしています。

 近年では民間牧場でも珍しくなくなったトレッドミルですが、当育成牧場においても育成期の馬における効果的な使用法や馬体への影響などについて調査する予定です。結果がまとまるのはまだ先の話ですが、育成馬の健やかな成長とともに興味深い報告ができるよう知見を積み重ねて参ります。

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トレッドミル棟もドライビングで通過させて徐々に慣れさせます

活躍馬情報(事務局)

10月13日(日)京都4R(3歳上1勝クラス)では、日高育成牧場で育成されたノンライセンス号が最後の直線で鋭い伸び脚を見せ、2着に7馬身差をつける快勝。2勝目を挙げました。

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10月13日(日)4回京都4日目4R 3歳上1勝クラス ダ 1,200m

ノンライセンス号(サマーリガードの16)

〔厩舎:松永幹夫(栗東) 父:パイロ〕

 

今後のさらなる活躍を期待しております。

活躍馬情報(事務局)

10月6日(日)4回京都2R(2歳未勝利)では、日高育成牧場で育成されたダイメイコリーダ号が好位置から直線抜け出し3馬身差をつけて快勝しました。

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   10月6日(日)4回京都2日目2R 2歳未勝利 ダ 1,800m

     ダイメイコリーダ号(ミラクルフラッグの17)

     〔厩舎:森田直行(栗東) 父:エスケンデレヤ〕

10月6日(日)4回京都12R(3歳2勝クラス)では、日高育成牧場で育成されたエイティーンガール号がゴール前の接戦を抜け出し3勝目を挙げました。

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    10月6日(日)4回京都2日目12R 3歳2勝クラス 芝 1,200m

     エイティーンガール号(センターグランタスの16)

     〔厩舎:飯田祐史(栗東) 父:ヨハネスブルグ〕

育成馬ブログ(生産②)

離乳~コンパニオンホース導入の効果~

 

 9月に入り、朝夕はめっきり涼しくなってきました。今年生まれた当歳馬たちも放牧地内で母馬から離れて行動する時間が増え、生産牧場では離乳の時期となりました。当ブログにおいても過去にも何度か離乳の方法について取り上げています。

https://blog.jra.jp/ikusei/2011/09/post-26e4.html

https://blog.jra.jp/ikusei/2013/09/post-405b.html

https://blog.jra.jp/ikusei/2016/09/

 

 JRA日高育成牧場では「間引き法」と呼ばれる当歳馬ではなく母馬を別の放牧地に移動する方法を行ってきました。これに加え「コンパニオンホース」の導入による離乳後のストレス緩和を試みてきました。今回は、離乳時の当歳馬の体重データから、コンパニオンホースの効果を検証してみたいと思います。

 

コンパニオンホースと間引き法

 現在、当場で行っている離乳の方法を簡単にご紹介します。まず、子育て経験豊富な子付きではない牝馬(コンパニオンホース)を離乳前に母子の馬群に入れます(図1)。次に、放牧地で離乳する母馬を2~3頭間引いて、別の放牧地に連れていきます(図2)。この作業を1週間に1回ずつ行っていき、最終的に当歳馬の群に母馬はいなくなり、コンパニオンホースが1頭いる状態にします(図3)。コンパニオンホースは乳汁こそ出せませんが、母馬がいなくなって不安でいななく当歳馬たちの中でどっしり構えているため、離乳後のストレス緩和を期待してこの方法を取り入れてみました。

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図1 コンパニオンホースの導入

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図2 間引き法

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図3 離乳後の当歳馬とコンパニオンホース(矢印)

 

コンパニオンホース導入の効果の検証~当歳馬の体重データから~

 当場では2013年から離乳時のコンパニオンホースの導入を始めました・2009年生まれ以降のJRAホームブレッド82頭の体重を比較したところ、コンパニオンホース導入前は体重が平均して4.5kg減少していたのが、導入後には平均して2.7kgの減少にとどまりました(図4)。これは統計学的にも有意な差であり、コンパニオンホースの導入により離乳後の当歳馬の体重減少を抑えられることがわかりました。

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図4 コンパニオンホース導入前後の離乳時の当歳の体重減少

 毎年、離乳後の当歳馬のコンディションが崩れてしまうとお悩みの際には、コンパニオンホースの導入も一つの方法としてお考えいただけましたら幸いです。