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ドライビング~騎乗まで(宮崎)

1本レーンでのランジングを教え、ローラー(腹帯)を装着することが可能になった馬は、次のステップとして、2本のレーン(ダブルレーン)を用いてのランジングを教えていきます。その際、2本目のレーンを馬の外側面に回して後肢(飛節の上)の後にまわし、御者が両手で保持して実施します。後肢にレーンが触れた際に、敏感な馬では蹴る等の反抗を示すこともありますが、根気よく馬を慣らします。

2本レーンでのランジングに慣れた後、馬の後方に人が移動し、馬を後方から動かすドライビングを教えていきます。最初はラウンドペンの中で実施し、ドライビングで方向変換等を行うことから始めます。ドライビングに慣れてきたら、ラウンドペンの外に出て今後騎乗する場所等、様々な場所をドライビングで歩かせ、馬の前進気勢と口向きを作っていきます。

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ブレーキングを開始して6日目。ローラーおよびサイドレーンを装着し、ダブルレーンでのランジングを行っています。サイドレーンはキ甲をクロスして装着しており、頭頸の位置を安定させています。馬はディマーの06(牝・父アラムシャー)。(928日)

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ラウンドペンの中でドライビングを行いながら右方向に方向変換を行っています。馬はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(104日)

ドライビングが確実に出来るようになった後、騎乗のステージへと進んでいきます。騎乗は、数日かけて馬の横でジャンプをしたり、背中に体重をかけたりして騎乗動作や体重負荷に慣らした後、馬房の中で実施します。騎乗者が脚を使って馬を動かせることができるようになったら、少し広いラウンドペンの中で騎乗し、やがて走路での騎乗が可能となります。

馴致を開始して2週間から3週間で騎乗することが可能となるわけですが、このように短期間で進められるのも、近年、コンサイナーがセリ前に引き運動を十分行う等、手をかけるようになってきたことが大きいと思います。セリにおいて、美しくプレゼンテーションされ、活発に大きく歩く馬は多くの購買者の目を引くことにつながります。したがって、セリの23ヶ月前に生産牧場からコンサイナーに預けられた1歳馬は、引き運動で人の指示に従って活発に歩くことが出来るように、また、購買者の前で暴れたりせず大人しく立っていることを教育されています。この中で、人と馬との信頼関係と人のリーダーシップの基礎が形づくられ、環境が変わったときの精神面安定や騎乗馴致時の理解力向上に役立っているのだと思います。

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体重負荷に慣らすための「横乗り」を行っています。馬はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(105日)

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馬にとって、生まれて初めて人に騎乗された緊張の一瞬です。騎乗者は馬の様子を確認しながら、徐々に頭を上げようとしています。馬はミスバンダムの06(牡・父サニングデール)。(105日)

馬体写真撮影の変遷(日高)

近年、せり名簿に併せて馬体写真カタログを作成するせり主催者が増えてきました。写真により、事前に馬体をイメージできるというメリットがある反面、写りが悪いとマイナスイメージを与えてしまう怖さもあります。

1回目となった2005JRAブリーズアップセール開催にあたり、写真カタログ用の撮影を3月中旬に行いました。日高では撮影場所の選定にあたり、平坦で脚元がよく見えて、しかも雪などの自然現象の影響が最小限の場所ということで、初年度は厩舎の中庭で撮影することにしました。

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1回のJRAブリーズアップセール用の写真:馬は重賞を2勝したダイワパッション号(牝:父フォーティナイナー)

背景にクリーム色の壁と緑色の馬房の扉が写ってしまい、背景がうるさく感じられました。そこで、2年目はアイボリー色のボードを背景に撮影を行いました。

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第2回のJRAブリーズアップセール用の写真:馬は新馬、オープンを連勝して、先週の秋華賞に出走したハロースピード号(牝:父マヤノトップガン)

ボードで背景はすっきりしましたが、アイボリー色は明るすぎたため、やや馬体が暗く見えてします傾向がありました。そこで、3年目はボードをモスグリーン色に変更しました。さらに今まで1回だった撮影回数を、入厩間もない時期と売却前の時期の2回とすることで、写真で馬体の成長が比較できるように工夫しました。

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第3回のJRAブリーズアップセール用の売却前の写真:馬は今年の2歳新馬を勝ったベストロング号(牡:父コロナドズクエスト)

ボードをモスグリーン色にしたことで、これまでの欠点は解消されたものの、撮影条件上、馬とボードの距離を近づけての撮影となるために、背景にもピントが合ってしまい、どうしても馬体を浮き上がらせることができませんでした。そこで、今年は日高山脈を背景にした撮影場所を新たに作りました。放牧柵が少し気になりますが、これまで以上に馬のよさを引き出せる場所だと思います。今後もよりよい写真撮影を目指していきたいと思います。

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今年作った新たな撮影場所。下をウレタン敷きにすることで、馬の肢元がはっきり見えます。遠くには美しい日高山脈の山々が広がる素晴らしい背景です。

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背景が遠くなり、ズームレンズを用いて被写界深度を浅くすることで、馬体を浮き上がらせることができました。馬は今年のサマーセールでJRA最高価格馬(税込み1312.5万)となったシラーの06(牝:父マイネルラヴ)。写真からも皮膚の薄い素晴らしい馬体の持ち主であることがわかります。今年のJRA育成馬期待の1頭です。

ランジングについて(宮崎)

まだ、日中は30℃前後の暑い日が続いていますが、さすがに朝夕は涼しく過ごし易くなってきたようです。馬たちも南国・宮崎の環境に慣れ、入厩したときよりも一回り成長し、ブレーキングを開始できる体格になってきました。宮崎では、7月に入厩した9頭(牡5・牝4)を第1群として920日から騎乗馴致を開始しました。

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騎乗馴致を開始する前のプレ馴致として引き運動を行っています。すでにコンサイナーがセリ馴致として教えているのですが、人との約束事を再確認し、また、群れで行動することで集団調教にも慣らしていきます。(917日)

まず、初日にはラウンドペン内で、馬を引いて壁際を歩くことに慣らすことから開始し、壁に沿って落ち着いてランジングでの速歩ができることまで要求します。

教えるにあたって、人が馬に与える「人から離れなさい・前に進みなさい」という人のプレッシャー(馬を推進するための声や鞭などを含むアクション)とラウンドペンの壁が馬に加える「これ以上、外には行けない」という壁のプレッシャーを上手にコントロールしながらラウンドペンの壁際を走ることを馬に教えます。人が馬に与えるプレッシャーが強ければ馬は慌てて走るために後肢で前肢を踏みかけたり、壁にぶつかったりすることに、弱ければ馬が内側に入ってくるということになります。馬は人の与えるプレッシャーに対して敏感に反応します。例えば、人が(ペン内で動いている)馬の真横に対面して、側面よりもお尻方向にずれれば、それだけで馬を前方に推進し、逆に人が馬の頭方向にずれると減速しようとします。したがって、そのようなプレッシャーと声のコマンドwalk, trot, standや、常歩!速歩!とまーれなどの号令)を同時に使用しながら、馬が上手にできたら、プレッシャーを解除し馬をほめることで理解させ、馬自ら前に進んで壁沿いを走ることを教えていきます。よくパブロフの犬に例えるのですが、人のアクションを伴った強いプレッシャーと同時に声のコマンドを使用することで、やがては音声の指示に置き換えて馬を動かすことができるようにするということです。この際、一度にたくさんのことを教えようとして馬の頭の中をコンフューズ(混乱)させないよう、シンプルに教えていくことが重要だと考えています。

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Day1、馬は初めての経験なのでどのように回っていいのか解らず、壁沿いを走らずに壁からのプレッシャー(矢印)を感じ、内に入ってこようとしています。馬はミスバンダムの06(父・サニングデール)(920日)

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Day1、御者が馬に対して近づき、さらに補助者が必要に応じて後方から推進を与えることで、馬を壁に沿って走らすことが可能となります。馬はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)(920日)

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Day3、ローラー(腹帯)を初めて装着したときの反応です。背を丸めながら跳ねて内に入ろうとする馬に対して、御者は馬に近づくことで外に行くようにプレッシャーを与え、同時に補助者が馬を前方に推進することで壁に沿って走らせます。馬はやがてローラーを受け入れ、落ち着きます。馬はアトラスマーカーの06(牝・父ティンバーカントリー)(922日)

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Day4、ローラーを装着して2日目です。吉本場長の見守る中、本日は頭頚の位置を安定させるためにサイドレーンを装着しました。馬はラブイズトゥルーの06(牡・父スペシャルウィーク)。(923日)