Big Dream Stables(宮崎)
宮崎のJRA育成馬たちの調教は、順調に進んでいます。2月中旬現在、駈歩の調教距離は2,500~3,500mほどで、通常日は最後の3ハロンタイムを60秒平均(1F20)、週1-2回の強め調教日は最後の3ハロンタイム51秒平均(1F17)を目安としています。
2/16、V200の測定を実施しました。抑えきれない手ごたえで最後の3Fを48.7秒で駆け抜ける牡馬群。しっかりと併せ馬ができること、前馬のキックバックに慣れることも大切な課題となります。先頭の併せ馬がソプラニーノの08(外側の栗毛。父:ロックオブジブラルタル)とダンツマジックの08(内側の鹿毛。父:コマンダーインチーフ)。後列はディアーブリーズの08(外側の栗毛。父:グラスワンダー)とテンシノユメの08(内側の黒鹿毛。父:リンカーン)。
さて、JRAの仕事として皆さんが思い浮かべるのはどんな内容でしょうか。多くの方は競馬の開催と勝馬投票券(馬券)の発売を真っ先に挙げられるでしょう。私達のJRA宮崎育成牧場にも、かつて宮崎競馬場として明治40年から昭和38年まで競馬が行われてきた歴史があります。
一方、現在私達が取り組んでいる競走馬の育成業務は、競馬の開催以外にJRAが行っている様々な業務の中の1つであり、宮崎では昭和31年の育成馬(旧抽選馬)事業開始に伴いスタートしました。JRAは育成研究、技術開発、人材育成を行い、その成果を生産育成界に普及・啓発し、わが国の軽種馬生産育成技術の向上に役立てることを目的として自ら育成業務を実施しています。
JRA職員としてはやや特殊な部門ともいえる育成業務ですが、広く競馬サークルには日々競走馬(あるいは競走馬を目指す幼駒・育成馬やその母馬たち)と向き合い、試行錯誤しながら強い馬づくりに取り組む多くのホースマン達がいます。そのような人々の存在なくして競馬は成り立たないといえるでしょう。
JRAの育成業務をとおして私が感じたことは、馬の取扱いはもちろん、実際の馬づくりで得られる喜びや悩み、そして難しさなどの貴重な経験の得られる仕事だということです。実際にホースマンといわれる人々の思いや考えに近いものを実体験をもって理解することや、そのような人々との意見交換や交流から何か競馬サークルにプラスとなる新しい発見ができること、またそのような次世代の人材をJRAのなかで育てていくことが大切なのではないかとも感じています。
角馬場での8の字調教:乗馬用として使用してきた馬場ですが、育成馬のウォーミングアップ用として今シーズンから利用、調教のバリエーションを増やしました。左右均一なバランスを養成し、結果として手前変換が上手な「両利き」の馬をつくることが目的です。先頭はテンシノユメの08です。
私達のJRA宮崎育成牧場には、育成馬からダービーをはじめ世界の舞台で活躍できる馬を輩出するという大きな夢があります。そして、夢を夢で終わらせないために、2005年、育成馬厩舎をビッグ・ドリーム・ステイブルズ(Big Dream Stables)と名づけました。その夢に向かって努力を続けるなかで、育成技術の普及・向上が図られ、強い馬づくりに貢献することが目標となります。
Big Dream Stables 第2厩舎(タムロチェリーステイブル)の看板
Big Dreamだけに、ちょっと大きなお話となってしまいましたが、「育成馬日誌」(宮崎)の執筆も今回が最後ということでお許し下さい。次回からは後任が引き継ぎます。今後ともよろしくお願いいたします。
JRA宮崎育成牧場 左側青屋根の2つの厩舎がBig Dream Stablesです。