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09年日高育成牧場生産馬がJRA育成馬厩舎へ(生産)

 馬産地日高では、朝夕の冷え込みが一段と増し、日高颪も吹き荒れ、冬の気配が感じられます。そんな中、昨年より本ブログで近況をお伝えしていた2009年の日高育成牧場生産馬である1歳馬7頭は、繁殖厩舎からJRA育成馬厩舎へと巣立っていきました。今後は、1歳市場で購買した他の育成馬と同様に騎乗馴致が行われ、来年のブリーズアップセールに向けて調教が進められます。

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JRA育成馬厩舎へと移動し、ブレーキングが開始された09年日高育成牧場生産馬 写真はハギノゴールドキーの09(牡 父デビッドジュニア

日高育成牧場では、1998年より繁殖に関する研究を行ってきましたが、昨年度から「母馬のお腹の中から競走馬までの一貫した調査研究や技術開発」を目的として、新たな取り組みを行っています。この取り組みのなかで、昨年誕生したのが、前述の7頭であり、“自然な状態での管理”というテーマに基づき、JRA育成馬厩舎へ入厩するまで、厳冬期も昼夜放牧を継続してきました。

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ハギノゴールドキーの09(牡 父デビッドジュニア)の1日齢(左)、5週齢(右)

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同じく4ヶ月齢(左)、10ヶ月齢(右)

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同じく14ヶ月齢(左)、18ヶ月齢(右)

写真で振り返ると順調に育ったように見えますが、生産馬を順調に1歳に育て上げるまで、生産者の方がいかに苦労されているのかをわずかながら、実感することができました。

これら7頭のなかでも、思い入れのある1頭を紹介いたします。その馬はハギノゴールドキーの09(牡、父:デビッドジュニア)です。同馬の母であるハギノゴールドキーは、当場において繁殖研究が開始された1998年より繋養され、受胎率も非常に高く、多くの研究成果に貢献し、さらに、学生のための直腸検査等の実習にも利用され、長きに渡って、繁殖研究を支えてきました。しかし、昨年、19歳で出産した産駒を最後に、高齢のため、繁殖生活にピリオドを打ちました。さらに、繁殖生活引退後の本年度も、4月にお伝えした育児放棄が起きた際に、ホルモン処置によって泌乳を誘発し、乳母として導入した代理母としても活躍し、当場の“カマド馬”的な存在です。前述のハギノゴールドキーの09は、この馬の多くの産駒のなかでも、ターフを駆けるチャンスを持つ最初で最後の唯一の産駒になるため、自然と期待が高まっています。

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多くの研究成果に貢献し、繁殖研究を支えてきたハギノゴールドキー

一方、本年生まれた当歳馬は、9月下旬から開始した分場での24時間放牧管理によって、のびのびと過ごしています。昨年は“自然な状態での管理”というテーマで、厳冬期も昼夜放牧を実施し、給餌についてもエンバクなどの濃厚飼料を最小限に止め、チモシーやルーサンなどの粗飼料を主体にしました。その結果、厳冬期には、成長の停滞を認め、冬毛も非常に伸びました。1歳の夏ごろまでには、馬体も回復したために、厳冬期の昼夜放牧の是非についてまでは言及することはできませんでした。そこで、本年は、厳冬期の昼夜放牧群と昼放牧群に分け、様々な項目について比較検討を行う予定です。興味深い結果が得られた際には、このブログでもお伝えしたいと考えております。

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分場で24時間放牧管理を行っている当歳馬たち

育成馬 活躍馬情報(事務局)

 夏の猛暑から一転し、秋を通り越し急激に冬の足音が近づいている気がします。惜しい競馬を続けながらも、なかなか2歳育成馬は勝ち星手前で足踏みを続けておりました。ようやく先々週7頭目の優勝馬が誕生しました。

 1031日の4回京都競馬8日目1R2歳未勝利において優勝いたしました湯窪幸雄厩舎所属のアマノレインジャー号(牡・2歳・父:タイキシャトル)です。6戦目の勝利となりましたが、同馬は掲示板をはずすことなく堅実に走っておりました。今後益々の活躍を期待しております。

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2010年度育成馬の入厩完了(日高)

日高地方では“雪虫”が飛び交い、日々、最低気温が更新され、冬の訪れを感じさせる今日この頃です。そんな中、10月中旬に行われたオータムセールでの購買馬2頭が、1022日に入厩を終え、そして、「生産からの育成業務」というテーマの中、昨年、当場で誕生した7頭のJRA生産馬が、1025日に繁殖厩舎からの移動を終えました。これによって、日高育成牧場所属のJRA育成馬63頭の入厩がすべて完了しました。

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JRAのオータムセールでの最初の購買馬となったマンデームスメの09(牡・父:クロフネ

JRAは例年サマーセールまでで購買を終えており、オータムセールでの1歳馬の購買は、本年が初めての試みとなりました。ここ数年、コンサイナーや各牧場のセリ馴致の技術が著しく向上し、ほとんどの購買馬は、人の指示に対して従順であるために、10月末に入厩したとしても、ブレーキングが遅れることなく、順調に進むものと考えています。また、オータムセールは本年から前半の月・火は主に新規の上場馬部門、後半の水・木はサマーセールからの再上場馬部門という区分がなされました。4日間のロングランで800頭以上が上場されるという大規模なセリですが、購買者が狙いを絞ってセリに参加できるこの区分は、お客様のニーズにマッチした対応であったと思います。

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JRAが生産した育成馬第1号のフジティアスの09(牡・父:デビッドジュニア

オータムセールの購買とともに、本年からの新たな取り組みという点では、JRA生産馬の育成厩舎入厩も同様になります。1歳のJRA生産馬7頭は、「母馬のお腹の中から競走馬までの一貫した調査研究や技術開発」を目的として、1歳セリで購買した馬と同様に育成し、ブリーズアップセールに上場する予定です。昨年誕生した7頭は、“自然な状態での管理”というテーマに基づき、今回の入厩まで、厳冬期も昼夜放牧を継続してきました。セリのための馬体づくりも無関係に、濃厚飼料を最小限に、青草を主食として初期育成、および中期育成を行ってきました。そのためか、少し、お腹周りに余裕がある体型となっています。オータムセール購買馬とともに、最も遅い第3群でのブレーキングが、10月末から開始されています。他の育成馬同様に、ブリーズアップセールを経て、無事、競走馬になってくれることを願っています。

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800m屋内トラックでキャンターを行う第1群の牡馬

さて、9月上旬から騎乗馴致を開始している第1群の牡馬は、1列縦隊で800m屋内トラック2周の調教メニューをこなしており、非常に順調です。

一方、10月上旬からブレーキングを開始した第2群の牝馬は、ようやく騎乗ができるようになりました。一般的に、牝馬は、牡馬と比較して、騎乗に至るまでに、順調さを欠くことが少なくなくありません。第2群の牝馬のなかにも、ランジングレーンがお尻に触れることを嫌う馬、腹帯を嫌う馬、さらには騎乗するのを嫌う馬などがいます。

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人と同じで牡よりも牝の方が繊細なようです。腹帯に慣らすための、はじめてのローラー装着では、圧迫を感じてかぶったり、立ち上がろうとすることがあります。人は瞬時に追いムチや声によって、馬を前へと推進します。馬はハッピースキャットの09(牝・父:マンハッタンカフェ

このように、牝馬は非常に繊細であるために、『馬を支配』しようとするのではなく、『馬を導く』ことが、牡馬以上に必要であることを、再認識しています。例えば、馬に対して何らかの要求を行ったときに、すぐに答えを求めるのではなく、馬に考える時間を少し与える余裕を持つことが大切です。考える時間を与えずに、すぐに答えを求め、人が強引に支配する方向に進んでしまうと、特に牝馬はストレスを感じるのではないかと考えています。したがって、従順なように見える牝馬のなかにも、ストレスを内に秘めている馬もいるのではという前提で、日常の小さな変化も見逃さないようにしたいと心がけています。