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○ 「胆振地区生産育成技術講座」と「BTC利用者との意見交換会」(日高)

北海道では12月に入っても最高気温が10℃を上回る日もあり、道内各地で12月の最高気温を更新しています。ここ浦河も例年と比較すると非常に暖かく、12月上旬に馬服を着せてパドックに放牧していると、少し汗ばんでいることもあるほどでした。このような暖冬は、馬を管理する我々にとって事故防止の観点から大歓迎ですが、スキー場のオープンが遅れるなど影響を受けている方々もいるので、北海道らしい冬が早く来ることを願っています

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暖冬のために坂路へ向かう途中に見える山でさえも積雪は僅かのようです。左からチジョウノテンシの09(牡 父:ケイムホーム)とタシロスプリングの09(牡 父:ファンタスティックライト

育成馬の近況について触れさせていただきます。馴致を開始した時期の早い順から第1群、第2群、第3群と3つに分けており、第1群は牡馬、第2群は牝馬、そして第3群は牡牝混合となっています。調教スピードの差こそあるものの、全ての群ともに800m走路において、一列縦隊での1周のキャンター実施後に手前を変え、2列縦隊での2周のキャンターを実施し、総距離2,400mのキャンターを行えるまでになっています。1群および2群については、12月から坂路での調教も開始し、順調に調教をこなしています。年内はスピードにこだわらず、特に牝馬は精神面を重要視し、リラックスした馬なりのキャンターでの調教に主眼を置き、年明けから徐々に運動強度を上げていく予定です。

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1群および2群については12月から坂路調教も開始しています。先頭左はタシロスプリングの09(牡 父:ファンタスティックライト)、右はレディービーナス(牡 父:フジキセキ

さて、ここからは11月下旬に行われました「胆振地区生産育成技術講座」と、12月上旬に行われました「BTC利用者との意見交換会」について触れてみたいと思います。

「胆振地区生産育成技術講座」は、胆振軽種馬農業協同組合および同組合青年部の共催で行われ、日高育成牧場のスタッフが講師として招かれました。当日は胆振地区のみならず日高地区からも多くの生産育成関係者の皆様に足を運んでいただき、会場は200名を超える満員となりました。

参加者の多く方々が講習会のことをインターネットで知ったということを聞くと、改めてインターネットによる広報効果の大きさを実感しました。

講習テーマは「仔馬の飼養管理について」および「競走馬の育成調教について」の2点で、前者では2年前から当場で取り組んでいる「生産からの育成業務」での研究成果から得られた知見である「pH値の測定による客観的な分娩予知方法」および「ホルモン剤投与による空胎馬への泌乳処置」によって乳母として導入に成功した例を紹介し、その他出生から離乳までの初期育成管理について、また後者では「馬自身のバランスでの走行」について講演いたしました。講演後には質問も多数いただき、また、参加者の真剣な眼差しに圧倒された講習会となりました。会場の設営等にご尽力いただきました事務局の皆様方には、この場を借りて御礼申し上げます。

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200名を超える方々に足を運んでいただいた「胆振地区生産育成技術講座」の様子。

BTC利用者との意見交換会」は12月の恒例行事となっており、本年は「若馬の騎乗に対する考え方」というテーマに基づき、強い馬を作るには騎乗者が何を考え、どのような騎乗を心がけるべきかについて、騎乗者の観点から5名のパネリストの方々を中心に活発な意見交換が行われました。5名のパネリストの方々のお話には、非常に説得力がありました。これは馬を取扱い、そして調教するなかで、自身で悩み、最善の策を考え、そして行動し、自身の経験を得てきた自信の表れではないかと感じました。一方、現状にとどまることなく、常に良いものを模索していこうという姿勢も非常に感じられました。何事も馬の調教と同様、私自身、「前進気勢」が最も重要であるということを感じずにはいられませんでした。非常に刺激を受けるとともに、多くのヒントをいただくことができました。

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例年同様に活発な意見交換が行われた「BTC利用者との意見交換会」の様子

育成馬 活躍情報(事務局)

一段と寒さが厳しくなってまいりましたが、競馬場では熱戦が繰り広げられております。今週1219日(日)は中山競馬場で朝日杯フューチュリティステークス(GI)、そして来週1226日(日)には今年の競馬の総決算である有馬記念(GI)とBIGレースが行われます。皆さんも奮ってご参加ください。

さて、先週1211日(日)におこなわれました5回阪神3日目第6レース 2500万円下(芝1,400m)において、今年最高価格で落札されましたエイシンオスマン号(育成馬名:ゲルニカの08 父:ロックオブジブラルタル 牡 松永昌博厩舎 馬主:平井 豊光氏)が優勝し2勝目をあげました。益々の活躍を期待しております。

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 本年の育成馬の成績を振り返りますと、2010 JRAブリーズアップセール等で売却したJRA育成馬77頭中81.3%にあたる63頭が中央競馬に出走し、現在までに7頭が勝ちあがっております(中央のみの成績)。今後の活躍をご注目ください。

育成馬見学会(宮崎)

南国の地、宮崎では朝晩は冷え込む日が多くなってきました。しかし日差しがある日中はポカポカと暖かく、半袖で騎乗する職員もまだまだ大勢います。豊富な日差しを受けて育った青草をたっぷりと食べ、十分な運動量を確保するために行っている夜間放牧も、半数近い馬に対し126日まで実施しました。

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写真1:夜間放牧中の育成馬

現在のところ、すべての馬が調教を順調に消化しています。馴致を最後に開始した第2群(牡6頭、牝6頭)も、1127日には1,600m馬場での調教を実施できるまでになりました。今後は全馬の足並みを揃え、本格的なトレーニングをスタートすることになります。

では、最近の調教内容が特に目につく育成馬を紹介いたします。オーロラマキシマムの09(父シルバーチャーム)は、調教時の動きが日に日にパワフルさを増しています。現在500m馬場でのウォーミングアップの後、1600m馬場に入り1200mのキャンターを2本(23/F程度)実施しています。S1群(1群の中でも千葉・青森で購買して早期に宮崎に入厩、馴致を開始した群)5頭全頭が順調にこのメニューを消化していますが、オーロラマキシマムの09が最も手応えがよく、調教後の息遣いもスムーズでまだまだ物足りない顔をしており、今後の成長が楽しみです。

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写真2オーロラマキシマムの09(牡、鹿毛、父:シルバーチャーム

さて、「魅せる育成」に取り組んでいる宮崎育成牧場では「一般の方々向けの育成馬見学会」という新しい試みを1127日に実施しました。これは地元宮崎の方々に育成馬を見学していただく機会を設け、育成牧場の業務内容を披露することで競馬やJRA育成馬に対する更なる興味を喚起することが目的です。今回は、3月に行った育成馬展示会に来場していただいた方々をご招待して実施いたしました。

第一回目となる今回は、好天のもと約30名の招待者が来場しての育成馬見学会となりました。この日のために比較展示の練習を重ねてきた育成馬たちは、多くの来場者に見つめられて戸惑いながらも練習の成果を十分発揮し、見学者に満足していただける展示ができたのではないかと思います。来場者からも、「1歳馬は暴れて危険な動物だと思っていたので、じっくり見られて楽しかった」、「こんなに近くで競走馬の卵である育成馬を見ることができて嬉しかった」という声をいただくことができました。

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写真3:育成馬見学会の様子とデュプレの09(牝、青毛、父:バゴ

参加者の方々にアンケート形式で協力していただき、「どの馬の毛艶が良く見えるか」「現時点で最も気に入った育成馬はどれか」を調査し、「第1回 宮崎市民が選ぶグッドルッキングホース」を選定しました。この結果、セイントリープレアの09(牡、黒鹿毛、父:オペラハウス)とプライムオブユースの09(牝、鹿、父:アドマイヤムーン)が牡牝それぞれのトップに選ばれました。今後も育成馬に接する機会の少ない一般の方々に協力していただき、育成馬の成長とともにこの順位がどう推移するのか興味がもたれるところです。

1時間行った見学会の後も育成厩舎内を見学したり、場外発売所に足を運ばれたり、乗馬の試乗会に参加されたりと、来場者の皆様にはお楽しみいただけたのではないかと考えております。

今後は、今回アンケートに記入していただいた内容を参考にして、場外発売所に来場された競馬ファンの方々や育成牧場に遊びに来ても育成馬を近くで見る機会が少ない方々にも育成馬を披露する機会を定期的に設け、育成馬が成長していく様子を楽しんでいただければ、と考えています。そして育成馬に興味を持っていただくことで競馬が好きになり、競馬産業の裾野が少しでも広がることこそが、私たち宮崎育成牧場職員の願うところです