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昼夜放牧と昼放牧(ウォーキング・マシン併用)、厳冬期はどちらがBetter?①(生産)

本年の日高地方は非常に寒い日々が続いており、積雪も多く非常に悩ましい時期をお過ごしと思います。そのような環境の中、皆様も例年以上に“厳冬期の当歳馬管理”についても頭を悩ましていることと思います。

さて、前号に記載したとおり、日高育成牧場では昨年11月末より “厳冬期における当歳馬の放牧管理”に関する研究として①昼夜放牧群(放牧時間:2224h)および②昼放牧(67h)+ウォーキング・マシン(以下WM)併用群 (馬服も装着)という2群に当歳(現1歳)を分け、放牧管理を行っています。

そこで、今号では、“昼夜放牧と昼放牧(WM併用)どちらがBetter?①”ということで、結論は出ない内容ですが皆様のヒントになるようなお話を進めていければと思っています。

群分けは昨年の1122日から開始し、1月末で早2ヶ月となりました。2群の比較としては、①被毛を含めた外貌的所見、②GPSを用いた放牧中移動距離、③脂肪の蓄積度合い(臀部の脂肪の厚さを、超音波機器を用いて測定します) ④体重・測尺値の変化、⑤成長に関わるホルモン動態(プロラクチンなど)、⑥ストレス指標(血中コルチゾル値を測定することで推定します)、⑦蹄の成長率など、様々な方向性から検討を行っています。

その中でも、現時点で大きな違いのある項目について紹介します。

まず、①被毛の状態(毛艶)です。すなわち、昼夜放牧群は“クマ”のように長い毛がボサボサの状態になる一方、昼放牧+WM併用群は被毛が薄く、毛の伸びぐあいも非常にゆっくりです。

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写真1:昼夜放牧群(フジティアス10)       

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写真2:昼放牧+WM併用群(ユメノセテアラム10)

      

これは、やはり寒さへの適応度合いの違いもあるのでしょうが、一方で昼放牧群は強制的に連続的な運動をすることによって基礎的な代謝が上昇した結果、被毛が伸びすぎることなく管理できているのではないかと考えています。被毛が伸びるのは、環境への適応のためではありますが、その被毛組織を作るためにはエネルギーがもちろん必要となります。そのような点を考慮すると、エネルギーの節約、また基礎代謝を上昇させるという面では昼放牧+WM併用の方が有利なのかもしれません。

また、次に②GPSを用いた移動距離測定についてですが、前号でも記載したとおり、昼夜放牧群は約710km程度の移動距離が確保できる一方、昼放牧群(67時間の放牧)では約34km程度という結果が出ています。昼夜放牧群の移動距離に関しては、何もしなければ約7km程度ですが、本年はラップ乾草を放牧地の4隅に配置し、またルーサン乾草を適宜同様な場所に撒くことで移動距離を約23km程度伸ばすことが出来ました。ちなみに、昼放牧群も同様な管理をしたところ、昼夜放牧群と比較して変化は少ないですが、ある程度運動距離を延長することが可能でした(0.51km程度)。このように、ただ放牧するだけでなく、作業にひと手間かけて人工的に馬の移動を促すように仕向けるのも放牧管理としては有効なのかもしれません。

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図1:GPSによる放牧地の移動軌跡(1220日)昼夜放牧群:フシティアス10 移動距離:7.1km

本放牧地は4角形ですが、移動が左半分に偏っており、歩行範囲が制限されていることがわかります。これは、図左上のシェルターを中心にして、限られた範囲で運動しているからだと考えられます。

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2GPSによる放牧地の移動軌跡(1月11日)昼夜放牧群:フジティアス10 移動距離:10km

4隅にラップ乾草を配置し、ルーサン乾草を随時撒いたことで移動量が増加し、このような軌跡が認められました。

さて、昼放牧群では、現在(1月末時点)収牧後に6km/hの速度で60分のWM運動を課しています。そのため、歩行距離としては、放牧中の移動距離と併せて昼夜放牧群とほぼ同様になります。しかし、歩く距離が同程度だとはいえ、この強制的な運動が、若馬の下肢部などへ影響を与えないものかどうか?非常に興味深いところです。そのため、我々は触診や歩様検査、またサーモグラフィーなどの機器も用いて比較検討を実施していますが、今のところ跛行などの目立った異常は発生していません。ただ、日によって骨端部や球節周囲に若干帯熱がある場合などもあります。その変化は朝の放牧前に多いため、馬房内で動いていないことによる“立腫れ”などの要因があるのかもしれませんが、WMによる影響ということも考えられます。このような点は皆様も非常に興味のある点だと思いますので、今後も引き続き詳細な検討を行っていきます。

今回はこの二つの項目のみ挙げましたが、いずれの放牧管理にしても長所・短所がありそうです。

今後も、研究結果を検討して、皆様に報告していきたいと思います。読者の皆様におかれましては、このような放牧管理法に関する経験などございましたら是非ご意見頂ければ幸いです!【JRA育成馬メールボックスはこちらです⇒ jra-ikusei@jra.go.jp