「育成馬を知ろう会」を開催しました(宮崎)
3月に入っても厳しい寒さが残る日本列島。しかし、宮崎育成牧場では春の気配を感じることが増えてきました。日中は気温が20度を上回ることも多く、調教中には小鳥がさえずります。騎乗者もジャンパーを脱ぎ、半袖で1日を過ごす者も少なくありません。
場内の桜にも花がつき、だいぶ春らしくなってきました。
育成馬の調教ですが、年明けより1,200mのキャンターを2本行うインターバルトレーニングに取り組んでおり、2月中旬からはスピード調教を開始しました。現在は2本目のキャンターをラスト3ハロン45秒程度(ハロン15秒程度)で走る調教を行っており、基礎体力(心肺機能や筋力)が向上した育成馬たちをみてとても頼もしく、心強く感じます。
さて、当場で3月9日・10日に「育成馬を知ろう会」を開催しましたので簡単にご紹介します。このイベントは、近年馬主になられた方々をお招きし、セリで馬を購買する際の参考としていただくために開催しました。セリで馬を購買する楽しさや購買した馬が競走馬になる過程でどのような調教を行っているかをお伝えするため、馬の見方、選び方および購入する際に注意することなどをご紹介し、育成馬の調教や飼養管理を行っている様子を間近でご覧頂きました。
育成馬の見方や選び方の説明を行いました。馬は17番ロマンスビコーの10(牡、父:シンボリクリスエス)
比較展示の形式で育成馬をご覧頂きました。
JRAブリーズアップセールは、セリに不慣れな方にもわかりやすい「入門編のセリ」として開催しています。その一環として開催されましたこのイベントで、一人でも多くの新規馬主の方々に「セリで馬を買う楽しさ」が伝わり、セリに参加される方が増えることを心より祈っております。
また、このようなイベントのないときでも、馬主・調教師の皆様にいつでも調教や飼養状態をご覧いただける環境を整えています。一人でも多くの方に育成馬をご覧いただき、ブリーズアップセールで「JRAが育成した馬たち」の関係者になっていただけたら幸いです。セール開催まであと1ヶ月少々、気を引き締めて育成馬の管理にあたりたいと思います。
話は変わりますが、宮崎育成馬の現在の装蹄状況についてお知らせします。セールに上場する全馬の四肢装蹄が2月29日に終了しました。今年の育成馬は大きな蹄病もなく、装蹄も順調に行うことができました。入厩当時、体も蹄も小さい馬たちの様子をみながら削蹄を行っていたことを懐かしく思い出します。さらに負荷の大きくなるスピード調教に向け、準備万端です。
今回は落鉄により蹄壁の一部が欠損し、釘を用いた装蹄が困難となった育成馬に接着装蹄(釘を使わず、接着剤で蹄鉄を装着する装蹄法)を実施しましたのでご紹介します。ご存知のとおり、ディープインパクト号は接着装蹄を行って出走していました。接着装蹄は蹄壁が欠損して蹄釘での装着が困難な場合や、蹄壁が薄く蹄釘によるストレスを避けることが望ましい馬に使用されますが、育成馬にもこのような装蹄技術は応用されています。現在、同馬はブリーズアップセールに向けて順調に調教をこなしています。
接着装蹄を施した蹄。調教も順調にこなしています。
宮崎は気候が温暖で年中青草を食べられるため、馬体や蹄の成長には最高の環境といえます。現在、宮崎育成牧場では育成期の調査研究の一環として蹄壁がどの程度伸びるか調べています。また、日照時間の短くなる12月からは半数の馬にライトコントロール法を実施し、ライトコントロール法の有無で蹄壁の成長に違いがあるかについても併せて調査しています。10月から始めた調査で、12月までは見られなかった両群間の成長の差が、12月以降ライトコントロール法を開始した群で蹄壁の成長が早くなる傾向が見られました。今後も調査を継続し、データがまとまりましたらお知らせしたいと思います。