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セリと育成馬を知ろう会 in ひだか(日高)

今夏の記録的な残暑が影響しているのか、本年は北海道各地において、過去100年間で最も遅い初雪、特に旭川では明治21年からの観測史上で最も遅い初雪を記録しています。しかし、冬は必ずやってくるもので、11月中旬には日高山脈に初冠雪を、浦河でも11月下旬には初雪を認めました。

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写真1.調教を終えクーリングダウンを行う馬の背景にある日高山脈は11月中旬に初冠雪を認めており、冬の到来を感じさせます。

3群に分けて騎乗馴致を進めてきたJRA育成馬の近況ですが、各群とも順調に進んでいます。現在は、全群とも800m屋内トラック馬場での調教を行えるまでになりました。そのなかでも、9月上旬から騎乗馴致を開始している1群(牡馬24頭)は、800m屋内トラック馬場での調教実施時には、1列縦隊で1周した後、手前を変えて二列縦隊でキャンターを2周、合計2,400mのキャンターを行っています。また、1群の牡馬はBTC1600mトラック馬場においても1周のキャンター調教を行っています。この広い調教コースでは、ある程度のスピードで(F2320程度)まっすぐに走行することを馬に教える目的で調教を実施しています。

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写真21600mトラック馬場での調教を行う1群の牡馬。先頭はマチカネアオイの10(牡 父ヴィクトリー)、2番手は12年ファンタジーステークス勝ち馬「サウンドリアーナ号」の半弟であるオテンバコマチの10(牡 父アルデバラン)

一方、10月初旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬23頭)は、牝馬ということもあり、牡馬と比較して、騎乗に至るまでの過程において、腹帯を嫌う馬、ランジングレーンがお尻に触れることを嫌う馬、さらには騎乗直後に“カブル”馬なども認められたため、馬に扶助を理解させることを第一に考え、その理解を日々積み重ねていくように、騎乗馴致に時間を費やしました。その甲斐あって、現在では、800m屋内トラック馬場での集団調教が可能な段階にまで進んでおり、合計2,400mのキャンターを行うまでに至っております。

さて、今回は少しさかのぼって1017日~18日にJRAの馬主の方を対象に行われた「セリと育成馬を知ろう会」についてご紹介いたします。この企画は、比較的馬主歴の短い方を対象に、HBA日高軽種馬農協の主催のもと、JRA馬事部生産育成対策室および当場が協力する形で実施されました。

初日はBTC調教施設および日高育成牧場の広大な調教施設の見学、JRA育成馬(1歳馬)の騎乗馴致や「馬の見方」の紹介、そして、夜には調教師や市場主催者との懇談会が実施されました。翌日の2日目は、HBAオータムセールにおいて、上場馬の比較展示やセリを見学し、購買までの流れを紹介したのち、JBBA静内種馬所において「北米リーディングサイアー」である“エンパイアメーカー”などの種牡馬見学が行われました。

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写真3.ラウンドペン内の騎乗馴致を見学される馬主の皆様

今回の企画は、比較的馬主歴の短い馬主の方々に対して、「馬の見方の理解」「馬のライフサイクルの理解」「調教師と交流」あるいは「セリ市場での購買に向けた体験」をしていただくことを趣旨に行われており、参加された馬主の方からは、「来年セリ市場で購買するための良い経験となった」、「調教師やセリ関係者との接点ができて良かった」などのご感想を頂戴しました。

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写真4.「馬の見方」に関する講義では馬のコンフォメーションに関する説明が行われました

日高育成牧場のJRA育成馬と実際のセリ市場を活用したこのような企画が、馬主の方に「セリ市場に参加しよう」、「競走馬を所有しよう」という意欲を持っていただくきっかけになるよう、来年以降も協力させていただきたいと考えています。なお、JRAでは来年3月にも「育成馬を知ろう会in宮崎」をJRA宮崎育成牧場にて開催予定です。お問合せ等は、JRA馬事部生産育成対策室までご連絡願います。

11月21日に新ひだか町で開催される講習会のお知らせ(事務局)

下記のように講習会が行われますので、興味のある方は是非ご参加ください。

  題    :「育成期のサラブレッドの飼養管理について」

  日 時 : 平成24 1121日(水)

         第1部 講演 18 00 18 45

         第2部 パネルディスカッション 18 45 19 30

                        ( 意見交換会 19 30~ )

  場 所 : 新ひだか町公民館・コミュニティーセンター

  テーマ : 第1部  講演 「育成期のサラブレッドの飼養管理について」

               講師   JRA 競走馬総合研究所 運動科学研究室

                           研究役 松井 朗

            第2部 パネルディスカッション

                     「サラブレッドの飼養管理について

                              ~生産地での実例も交えて」

                    パネリスト

                松井    JRA

                服巻 滋之( ハラマキファームクリニック )

                三浦 久延( ファームコンサルタント 獣医師 )

                谷川 智幸( 株式会社ホクチク )

                澤村 恭平( JRAファシリティーズ株式会社 )

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JRA育成馬の2歳世代初重賞(事務局)

 先週土曜日の5回京都競馬第11レース ファンタジーステークス(GⅢ)において、サウンドリアーナ号(栗東・佐藤 正雄厩舎)が1着となり、JRA育成馬の2歳世代初重賞勝利をあげましたのでお知らせします。

 父ケイムホームは、JBBA日本軽種馬協会の種牡馬で、国内生産馬2世代目にしてJRA初重賞勝利をおさめました。

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11/10 5回京都競馬3日目第11R 芝 1400m外

ファンタジーステークス(GⅢ) 

サウンドリアーナ号(オテンバコマチの10) 牝 2

【厩舎:佐藤 正雄(栗東) 父:ケイムホーム セレクションセール購買】

本年のブリーズアップセールで取引された育成馬は、8頭(新馬戦優勝4頭を含む)が勝ちあがり、9勝となりました。今後のますますの活躍を期待しております。

当歳馬品評会&強い馬づくりのための生産育成技術講座(生産)

 だんだん日も短くなり、冬の訪れを感じる今日この頃ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?当歳馬たちは現在、昼夜放牧を継続していますが、昨年同様厳冬期には「昼夜放牧群」と「昼放牧+ウォーキングマシン群」の2群に分けて管理し、データを集積していく予定です(写真1)。

さて、今回のテーマは、先日行なわれました当歳馬品評会のお話と、近々開催される「強い馬づくりのための生産育成技術講座」のご案内です。

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写真1 昼夜放牧している当歳馬たち

当歳馬品評会

 これは浦河町軽種馬生産振興会青年部の主催で、一時期開催されていなかったそうですが昨年より再開されました。今年はJRA日高育成牧場を含む7つの牧場が参加し、各牧場を巡回する方式で行なわれました(写真2)。参加者全員の投票制で「最優秀賞」「優秀賞1席」「優秀賞2席」が決められ、今年の「最優秀賞」は宮内牧場生産のソフィアルージュの24(牡、父エンパイアメーカー)が受賞しました(写真3)。また、「優秀賞1席」には田中スタッド生産のママラヴズマンボの2012(牝、父ホワイトマズル)、「優秀賞2席」には高村牧場生産のチェリーエンジェルの2012(牡、父エンパイアメーカー)が選ばれました(写真4)。

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写真2 品評会の様子

JRA日高育成牧場にて)

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写真3 最優秀賞受賞馬

(宮内牧場 ソフィアルージュの24 牡 父エンパイアメーカー

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写真4 受賞者の皆さん

 この当歳馬品評会の趣旨は、「これに向けて馬を仕上げていこう」というよりもむしろ日頃の管理のまま展示し、お互いに当歳馬の飼養管理について意見を交換し合い、勉強していこうというものです。昨年はお互い遠慮がちでしたが、再開2年目となる今年はだいぶ打ち解け、「飼料は何をどのくらい与えているか?」「昼夜放牧はいつまで継続する?」などといった基本的なことから、「この時期多発する皮膚病についてどう対処しているか?」「今年ローソニア感染症(※)にかかった子馬がいたが、こうやって対処した」など専門的な会話まで意見を交換することができ、非常に有意義なイベントとなりました。※ローソニア感染症につきましては、前回の当ブログを参照。

 昼食時には学会などで行なわれる「ランチョンセミナー」を模して、JRA日高育成牧場で現在取り組んでいる「研究紹介」を行ないました。今回は昨年の「競走馬に関する調査研究発表会」で日高育成牧場から発表した演題のうち、「幼駒における近位種子骨骨折の発症に関する調査」について紹介し、ここでも活発な意見交換が行なわれました。夜は懇親会が行なわれ、酒の勢いも手伝って(?)生産者の皆さんの馬づくりにかける熱い気持ちが伝わってきました。我々の生産・育成研究の目的の一つが「生産地の様々な問題点を解決するため」ですが、このような交流を通して自分たちの牧場で生産しているだけでは気づかない、様々な問題を認識することができました。

強い馬づくりのための生産育成技術講座

 JRA日高育成牧場では、毎年11~12月に「強い馬づくりのための生産育成技術講座」という講習会を行なっています。これは、生産牧場関係者向けに最新のトピックを紹介するものです。今年のテーマは「レポジトリー」「妊娠期の検査」「厳冬期の昼夜放牧」についてです。「レポジトリー」については、今まで獣医師向けにはたくさん講習会が開かれてきましたが、今回は生産牧場関係者の視点に立った説明をいたします。今までJRA育成馬で蓄積してきたデータをご披露し、大丈夫な所見、注意しなければならない所見について、解説していきたいと思います。「妊娠馬の検査」については、現在は獣医師による妊娠鑑定が種付け後5~7週を最後に行われ、その後は分娩まで何もしないという流れが一般的でしたが、近年胎盤炎など流産の原因となる疾患が血液中のホルモンの数値や超音波検査による胎盤の厚さの計測などで予測できるようになっています。それらについて解説いたします。最後に「厳冬期の昼夜放牧」についてですが、今年7月の「生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム講演抄録」で紹介したJRAホームブレッドを「昼夜放牧群」と「昼放牧+ウォーキングマシン群」の2群に分けて行なった調査の2年分のデータを合わせて発表したいと思います。多数の皆様のご来場を心よりお待ちいたしております。

詳細は下記のとおりです。

強い馬づくりのための生産育成技術講座2012

JRA日高育成牧場では、競走馬の資質向上や生産育成関係者への情報・技術普及を目的として「強い馬づくりのための生産育成技術講座2012」を開催いたします。
入場無料で一般の方もご参加いただけます。皆様のご来場をお待ちしております。

開催日時および場所;

①平成24117日(水) 18:30-20:30

北海道浦河郡浦河町 基幹集落センター堺町会館

②平成24118日(木) 18:30-20:30

北海道沙流郡日高町 門別総合町民センター

研修対象;北海道地区軽種馬生産育成関係者

講演内容

・いまさら聞けないレポジトリー。その基本について知ろう!

中井健司(JRA日高育成牧場業務課)

・お腹の胎子は大丈夫?妊娠期の検査について知ろう!

南保泰雄(JRA日高育成牧場生産育成研究室)

・昼夜放牧のススメ。厳冬期の昼夜放牧は有効か?

遠藤祥郎(JRA日高育成牧場業務課)

司会進行  佐藤文夫(JRA日高育成牧場生産育成研究室)

              日高軽種馬生産振興会青年部連合会

【共 催】

 日高軽種馬生産振興会青年部連合会

【後援】

 日高軽種馬農業協同組合

【お問い合わせ・連絡先】

 JRA日高育成牧場 生産育成研究室

 TEL0146-28-2084(土・日・祝除く9:0017:00

※講演内容につきましては予告なく変更する場合がございますので予めご了承下さい。