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本格的に育成業務を開始しました!(宮崎)

 去る8月29日、サマーセールで購買した16頭が宮崎育成牧場に入厩しました。北海道から馬運車に揺られ続けること48時間。疲れていないはずはないのですが、初めて降り立つ宮崎の地で元気一杯の姿をみせてくれました。輸送環境に恵まれたこともあり、輸送性肺炎を発症したり疲労のために休養を余儀なくされたりする馬はおらず、非常に順調な長距離輸送を実施することができました。

 

 宮崎に到着した馬たちはマイクロチップを用いた個体識別と入厩検疫用の採血を行った後、「アナボリックステロイド」検査を行うための採尿を実施しました。JRAでは毎年、市場で購買した1歳馬のアナボリックステロイド(AS)検査を実施しています。筋肉増強作用を有するASは競馬の公正を害する「禁止薬物」に指定されており、繁殖機能に障害を与えることからも、使用するべきではない薬物です。購買馬が「アナボリックフリー」であることを確認するため、今年は全国の市場で購買した40頭分の尿検査に加え、全馬の血液検査も実施しています。日本競馬のイメージを損ねるASが、今後も使用されないことを願っています。

 

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宮崎到着後にAS検査用の採尿を行うシンコウイマージンの12(牡、父:アジュディミツオー、サマーセール購買馬、購買価格:525万円)。初めての環境にも臆せず、堂々とした振る舞いを見せる期待馬です。

 

 さて、今回16頭が無事に入厩したところで、今シーズン育成する22頭(牡10頭、牝12頭)が揃いました。これからは基礎体力を養成するための長期間の夜間放牧と、騎乗馴致開始に向けた「しつけ」をじっくり行います。今年の22頭は(現時点では)皆大人しく、体温計を用いた検温や裏堀り、馬体洗浄などが行えるようになるまであまり時間を要しませんでした。10年前の育成馬と比較したら本当に驚くほど大人しく、扱いやすい馬ばかりです。これは生産牧場の技術・意識が高くなり、子馬のうちからしっかりと手をかけられているためだと思います。さらに、セリ上場前にコンサイナー(立ち姿や歩き方、馬体のつくりや毛ヅヤ、躾などを改良して好条件で売却できるように委託される業者)による躾がしっかりなされている馬が増えてきたため、大人しいだけでなく人間との信頼関係が構築されている馬も多くなりました。

 

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入厩から1週間、馬体の洗浄を行う牝馬。写真左がバブリングブライドの12(牝、父:タニノギムレット、セレクションセール購買馬、購買価格:525万円)、写真右がロージーズシスターの12(写真右、牝、父:スペシャルウィーク、サマーセール購買馬、購買価格:525万円)。顔にシャワーをかけられても平気になりました。

 

 入厩してしばらくは環境に慣らす目的で昼放牧を実施しますが、今回入厩した16頭は宮崎の環境にすぐ慣れたため1週間足らずで夜間放牧に移行しました。現在は先に入厩していた6頭を含む全馬22頭が夜間放牧を行っています。

 

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早朝、青々とした放牧地で夜間放牧を行うメジロレーマーの12(牡、父:ハーツクライ、購買価格:1,417.5万円)。兄にフィールドルージュがいる良血馬です。

 

 先に入厩した6頭の騎乗馴致も非常に順調です。現在はラウンドペン(円形馬場)内で騎乗して、速歩ができるまでになりました。今後500m馬場での騎乗に移っていきますが、慎重かつ大胆に進めていきたいと思います。

 

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補助者が離れて速歩運動を行うウィギングの12(牡、父:キンシャサノキセキ、購買価格:693万円)。9月下旬から500m馬場での運動を開始します。

 

 『魅せる育成』をコンセプトに開かれた育成業務を展開している当場では、8月25日に開催したイベント「馬に親しむ日」で育成馬の展示を行いました。当日ご来場いただいた地元九州の皆様にお披露目したのは「九州産馬」ルックミーウエルの12です。ご来場いただいた2,680名のお客様の前で、牝馬ながら帯同馬なしで凛々しい立ち姿を披露できました。

 

Photo_5イベントで地元の皆様にお披露目されたルックミーウェルの12(牝、父:オンファイア、購買価格:325.5万円)。当日は生産者の本田土寿氏も応援に駆けつけました。

 

 『魅せる育成』第2弾として予定しているイベントは、昨年も開催した「一般市民向け育成馬見学会」です。10月19日(土)の午後、ご来場いただきました皆様に育成馬22頭の比較展示を行う予定です。詳しくは場内の掲示板もしくは宮崎育成牧場ホームページのイベント情報をご覧ください。職員一同、皆様のご来場を心よりお待ちしております。

離乳 ~その4~(生産)

本年、日高育成牧場で実施した離乳方法は以下のとおりです。

 

【1週目】7組の母子のうち、2頭の離乳を実施。

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【1週目】穏やかな性格の牝馬(本年出産なし)をコンパニオンとして導入。

 

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【2週目】3頭の離乳を実施

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【3週目】残り2頭の離乳を実施

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【離乳後】

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この方法の利点は、

同じ群の多くの馬が落ち着いていることです。

 

離乳直後は、放牧地を走り回りますが、

周りの大多数の馬が落ちついているため、われに帰って、群の中に溶け込みます。

離乳後、数時間の監視をしていますが、大きな事故につながるような行動はありませんでした。

 

どのような方法を実施しても、母馬がいなくなった子馬のストレスは回避できません。

しかし、このような段階的な離乳により、可能な限りストレスを緩和することができると思います。

 

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コンパニオンとして導入した繁殖牝馬を中心に落ち着いた様子をみせる当歳

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

離乳 ~その3~(生産)

 離乳を実施するうえで、考慮しなくてはならないリスクには以下のようなものがあります。

 

①成長停滞

 

②悪癖の発現

 

③疾患発症(ローソニア感染症など)

 

④事故

 

これらのリスクをゼロにすることはできません。

しかし、予防策として、

 

「離乳前に固形飼料を一定量食べさせておくこと」

「ストレスを可能な限り抑制すること」

 

以上のことを念頭においた離乳の実施方法により、

リスクを最小限に抑制することは可能です。

 

このため、実施時期や環境にも注意を払う必要があります。

 

著しい暑さ、激しい降雨、アブなどの吸血昆虫など子馬のストレスとなる環境要因をなるべく回避することに加え、栄養豊富な青草が生い茂っている時期に実施することも重要です。

 

つづく

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離乳直後にフェンスを飛越したことによる事故

離乳 ~その2~(生産)

 離乳の実施時期は、概ね生後5~6ヶ月齢というのが一般的になっていますが、牧場によっては早くて3ヶ月、場合によっては7、8ヶ月齢と遅い場合もあるようです。

 

離乳の実施時期を考慮するうえで、

「栄養面の離乳」と「精神面の離乳」の2つを念頭に置く必要があります。

 

「栄養面の離乳」

母馬がいなくなった場合に、それまで母乳から摂取していた栄養を固形飼料で代替することができるようになっていること、すなわち、1~1.5kgの飼料を食べることができるようになっているかどうか。

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「精神面の離乳」

放牧地で母馬と一定の距離があること、また、他の子馬との距離が近づいていること。

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3ヶ月齢を過ぎると、母子間距離が長くなり、子馬間距離が短くなる。

 

「栄養面」および「精神面」の両者が概ね達成される時期が、概ね生後3~4ヶ月ですので、

必然的に、これ以降が適切な離乳時期といえるのかもしれません。

 

つづく

離乳 ~その1~(生産)

本年生まれた7頭のホームブレッドは順調に育っており、

以前に当欄で触れたホルモン処置の乳母付けをした子馬は、

現在では乳母とともに、実の母子のように寄り添って過ごしています。

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しかし、その母子にも別れの時、すなわち離乳の時期がきました。

 

離乳の目的は、母馬が次の出産に備えるためです。

このため、野生環境におかれた馬では、出産の1~2ヶ月前になると、

子馬の方から自然に哺乳しなくなり、母子が離れていくようです。

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離乳

 

サラブレッド生産においては、過剰成長などに起因するDOD(成長期整形外科疾患)の予防として、母乳の摂取抑制を目的とした早期離乳も実施されています。

 

つづく

活躍馬情報(事務局)

 先週日曜日の函館競馬10Rすずらん賞におきまして、JRA育成馬フクノドリーム号が優勝しました。同馬は日高育成牧場で育成調教され、今年4月に開催されたブリーズアップセールにて取引された馬です。

また、本年当セールで取引された育成馬は、7頭が勝ちあがり10勝目をあげました。今後のますますの活躍を期待しております。

 

2013090110r_g

9/1 4回函館競馬6日目 第10R すずらん賞 2歳OP 芝 1,200m

フクノドリーム号(キャニオンリリーの11) めす 2歳

【 厩舎:杉浦 宏昭(美浦) 父:ヨハネスブルグ 北海道サマーセール購買 】