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育成馬ブログ 宮崎④

○初期馴致の目的(宮崎)

 11月下旬までは日中に暑いと感じることもあった南国宮崎でも、最低気温が10℃

を下回り、最高気温も15℃を下回る日が徐々に増えてきており、本格的な冬を迎え

ようとしています。とはいえ、北海道の10月上旬ぐらいの気温であり、さらに例年と

比較すると気温が少し高いため、冬は南国で過ごすのが人馬ともに良いと実感して

おります。

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写真① 南国宮崎では12月に入っても秋に播種したイタリアンライグラスが繁茂しています。

育成馬の近況

 宮崎育成牧場所属のJRA育成馬の近況をお伝えいたします。9月上旬から騎乗

馴致を開始している1群(牡馬11頭)は、角馬場での速歩およびハッキング、500m

トラック馬場で約800mのハッキングを実施し、その後1600mトラック馬場に場所を

変えて一列縦隊で1200mと1600m、合計2800mのキャンターを実施しています。

スピードはハロン22~24秒程度とゆっくりとしたキャンターですが年内は落ち着いて

真っ直ぐ走行させることを主眼に置いて調教を進めていきたいと考えています。

 一方、10月上旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬11頭)は、11月中は

角馬場および500mトラック馬場において速歩中心の調教を実施してきましたが、

12月に入ってからは、1群の牡と同様に1600mトラック馬場でのキャンター調教を

実施できるまでになりました。まだまだ、何かに驚いて走行中にフラフラすることも

ありますが、牡と同様に落ち着いて真っ直ぐ走行させることを第一に調教を進めて

います。

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写真② 1600m馬場で隊列を整えたキャンターを実施する1群牡の育成馬。

先頭からエレガントトークの14(牡 父:マンハッタンカフェ)、

スイートピグレットの14(牡 父:クロフネ)、ラブシービルの14(牡 父:サマーバード)、

エーシンブランディの14(牡 父:ヴァーミリアン)。                                                                              

初期馴致の目的

 JRA育成馬に対する初期馴致は「育成牧場管理指針」に基づいて実施しています。

初期馴致のプロセスのなかで重点的に取り組んでいるのはドライビングです。

ドライビングというのは、騎乗せずに2本のロングレーンを使用して、馬車の御者の

ように馬を後ろから制御することです。欧州では競走馬の騎乗に先立って実施されて

います。初期馴致時に実施するドライビングには、後方からの御者の指示と内方の

リードレーンの操作を馬に対して受け入れさせる効用があります。つまり、騎乗前に

馬に「扶助」を受け入れさせるために実施しています。

 初期馴致の最終目標は人が馬に騎乗することであるため、可能な限り早く騎乗した

方が効率的であるという考え方が一般的であるかもしれません。しかし、何をすれば

良いかということを理解していない若馬に対して、約束事である「扶助」を一つ一つ

繰り返して確実に理解させることが最も重要であるため、ドライビングを重点的に実施

すべきであると考えています。

                                                                

ドライビング動画リンク

https://www.youtube.com/watch?v=POrJ6MKYjdQ&feature=youtu.be

                                                                          

 本年は9月中旬から10月下旬まで馬場の改修工事が行われたため、工事車両が

往来し、さらに工事が進行するなかでのドライビングの実施となりました。当初は、

馬が驚くために馴致中には工事を中断していただこうと考えていましたが、人と馬との

信頼関係を構築するとともに、工事が行われている環境に慣らしさえすれば、重機の

音や動きに対応することが可能となっていきました。

 馬の馴致調教とは、決して人が思い描いたひとつの「型」に馬をはめ込むことでは

なく、馴らすことによって馬が自ら進んで行動するように導くことであるということを

改めて理解することができました。馬の行動は人が導いた結果であるということを

肝に命じ、馬の目線に立って馬の個性を考えながら馴致調教を進めていきたいと

思います。最良のホースマンとは、ひとつの「型」に馬をはめ込んで問題を解決する

のではなく、多くの引き出しを持ったなかで状況に応じて対応できる者のことであり

さらに、どのような状況下でも、「忍耐強く」馬と接することができる者のことではないか

と思っています。

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写真③ 本年は馬場改修工事が行われたため、工事車両が往来するなかでの

ドライビングの実施となりました。

 

活躍馬情報(事務局)

 先週土曜日の阪神1R(2歳未勝利)で、日高育成牧場で育成されたモウカッテル号

が優勝しました。同馬は2015年JRAブリーズアップセールで取引され、4戦目での

勝ち上がりとなりました。 

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12月5日 5回阪神競馬1日目 第1R  2歳未勝利 ダート 1,400m

モウカッテル号(ロングビクトリアの13) 牡

【 厩舎:森 秀行 厩舎(栗東) 父:アンライバルド 】

 以下の表は、ブリーズアップセール出身馬の過去5年の2歳時成績です。先日

11/29に、本年のセール出身馬の8割がデビューを果たしております。過去5年で

みると、7~8月に5割の馬がデビューし、年内には8割の馬がデビューしていると

いった状況です。12/6現在で10頭が10勝を上げていますが、残念ながら2勝以上

をあげた馬は出ておりません。さらなる活躍を期待したいところです。Photo_3

 

育成馬ブログ 日高③

○  厳しい寒さの中で(日高)

  去る11月24日、JRA日高育成牧場のある北海道浦河町では例年より少し遅めの

初雪が観測されました。11月までは気温も少し高めで過ごしやすい日も多かった

今冬ですが、ここにきて寒さが厳しくなってきました。毎日の最低気温は氷点下に

達し、放牧地の水桶は凍りついています。寒さに呼応するように、育成馬たちの調教

メニューはどんどん強度を増していきます。

 

育成馬の近況

 JRA育成馬の近況をお伝えします。9月初旬に馴致を開始した第1群(牡23頭)は

屋内800mトラックで1周+2周の縦列調教(ハロン24-22秒程度、前馬との距離:

1馬身)を繰り返し行い、前後の馬に慣らし真っ直ぐ走る訓練を行ってきました。

11月には屋外1600m馬場での縦列調教(1周:ハロン22秒程度)も併用し、馬場

凍結のため1600m馬場が使えなくなった27日からは屋内坂路馬場でのキャンター

調教を開始しました。屋内坂路馬場で調教する日は屋内800mトラックでキャンター

2周のウォーミングアップをしてから坂路を1本駆けあがります。現在は馬場に慣らす

ことが主目的で、体力がつくのを待って強度をあげていきます。


YouTube: 屋外1600m馬場で駆歩調教を行う第1群の牡馬

 

動画1.屋外1600m馬場で駈歩調教を行う牡馬たち。

先頭からハンプトンコート14(父:バゴ)、パピュラ14(父:サマーバード)、

カネマサバレリーナ14(父:スマートファルコン)、

ゴッドビラブドミー14(父:デュランダル)、クルミ14(父:ストリートセンス)、

シルクアウローラ14(父:ケイムホーム)。

 

 また、10月初旬に馴致を開始した第2群(牝21頭)は現在、屋内800mトラックで

1周+2周の縦列調教(ハロン26-24秒程度、前馬との距離:1馬身)を繰り返し

行っている段階です。当初は落ち着きのない馬や我慢のきかない馬もいましたが、

ここにきて綺麗な隊列で安定した調教ができるようになりました。力強い走りをみせて

くれる馬も増えてきて、日々の成長を肌で感じることができます。まもなく、屋内坂路

馬場での調教を開始する予定です。


YouTube: 屋内800mトラックで駈歩調教を行う第2群の牝馬

 

動画2.屋内800mトラックで駈歩調教を行う牝馬たち。

先頭からタヒチアンメモリ14(父:フリオーソ)、

サンセットロード14(父:ロージズインメイ)、

ハローオンザヒル14(父:ゼンノロブロイ)、フェルガーナ14(父:サマーバード)、

ダノンスズラン14(父:ステイゴールド)。

 

 最後に馴致を開始した第3群(牡7頭、牝8頭)はまもなく馴致を完了できるところまで

きています。現在は屋内800mトラックで行う両手前1周ずつの縦列調教を通して、

現段階の目標と考える①前に(Go forward)、②真っ直ぐ(Go straight)

落ち着いて(Go calmly)走ることを教えています。第3群の15頭は段階的に

無理なく調教強度を増やしていき、年内に1・2群と合流することを目指しています。


YouTube: 屋内800mトラックで駈歩調教を行う第3群

 

動画3.屋内800mトラックで駈歩調教を行う第3群の馬たち。

先頭からトミケンソリッド14(牝、父:アンライバルド)、

誘導馬をおいてリスキーディール14(牡、父:シンボリクリスエス)、

シャトルシャロン14(牡、父:ヨハネスブルグ)、

クィーンマーメイド14(牡、父:トビーズコーナー)、キャリコローズ14(牡、父:パイロ)、

イフリータ14(牝、父:ケイムホーム)

 

育成馬検査を実施しました

 11月25日、26日にJRA馬事部生産育成対策室の職員が来場し、育成馬検査を

行いました。この検査は購買以降の馬体の成長具合や調教進度などを確認する

定期検査で、騎乗馴致が終わる11月下旬と調教が本格化する1月中旬の計2回

実施しています。

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 この検査の主目的は現時点の馬の状態を把握することですが、育成馬と毎日

接している我々が見落としている点や「お客様が来られた時にいつでも対応できる

準備ができているか」を確認することも目的にしています。検査では「馬がよく躾け

られており美しく手入れされ、かつ人馬の一体感を感じさせる展示・引馬(リード)が

行えるか」をみるベストターンドアウト賞の審査も併せて実施しました。審査では、

これまでの騎乗馴致で培ってきた人馬の信頼関係や日頃の手入れ、何より「お客様に

見て頂く」姿勢が試されます。育成馬には「見られる」経験を積み重ねることで落ち

着いた展示ができるようにしつけ、購買関係者の皆様が来場された際に楽しんで馬を

みていただけるよう訓練しています。

  北海道はこれから本格的な冬を迎えます。日々成長していく育成馬の姿を見に、

ぜひ日高育成牧場まで足を運んでください。皆様のお越しをお待ちしております。