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活躍馬情報(事務局)

10月29日日曜日の東京1R(2歳未勝利)で、

日高育成牧場で育成されたビレッジキング号が、

好スタートから先手を奪ってそのまま押し切り、

6戦目での待望の初勝利となりました。

 

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10月29日 4回東京競馬9日目 第1R  2歳未勝利 ダ 1,400m

ビレッジキング号(スパイシーソースの15) 牡

【 厩舎:土田 稔 厩舎(美浦) 父:キングヘイロー 】

 

さらに、同日の東京4R(2歳新馬)では、

宮崎育成牧場で育成されたヒシコスマー号が、

最後の直線で大外から見事に差し切り、初戦での初勝利となりました。

 

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10月29日 4回東京競馬9日目 第4R  2歳新馬 芝 1,400m

ヒシコスマー号(コスマグレースの15) 牡

【 厩舎:清水 久詞 厩舎(栗東) 父:ブラックタイド 】

 

今後の活躍を期待しております。

育成馬ブログ 日高③

●育成馬のデンタルケアについて ~狼歯~

 

北海道は徐々に気温が低くなってきており、

秋の訪れとともに冬の気配も感じられます。

9月上旬から馴致を始めた育成馬の牡馬は騎乗馴致も終わり、

集団でのキャンター調教を始めています。

一方で、牝馬は10月上旬から騎乗馴致を始め、

現在はダブルレーンによるドライビングを中心に行っています。

 

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騎乗調教(牡)の風景

 

さて、今回は騎乗馴致の準備として大事な

デンタルケア「狼歯の抜去」について、ご紹介します。

 

 

○「狼歯」とは?

 

第1前臼歯の別名です。

馬の進化の過程で退化した歯で、

ハミが収まる部分に生えています(図・写真1)。

ここにハミが当たると痛みを感じるため、

口向きが悪くなる原因となります。

このことからJRA育成馬では馴致が始まる前に全頭抜歯しています。

 

Photo_2狼歯(図) A:狼歯 B:犬歯

 

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馬の左狼歯(写真1)

 

海外の教科書では牡馬の14.9%、

牝馬の24.4%に狼歯が萌出すると書かれています。

本年のJRA育成馬においても、

確かに牡馬(27頭中19頭萌出)より

牝馬(30頭中27頭萌出)に多く認められました。

一方、教科書とJRA育成馬との萌出割合は大きく異なっていますが、

調査年齢や品種に違いがあるのかもしれません。

 

狼歯には太い歯や細く小さい歯、

埋没している歯など様々な形態のものが認められます。

写真2は同じ馬から抜歯した左右の狼歯です。

大きさ、形も左右で異なっているのが分かります。

ほとんどの馬が上顎に生えていますが、

まれに下顎にも生えていることもあります。

 

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抜去した狼歯(写真2)

 

狼歯には歯根がなく、歯肉との結合がゆるいため、

比較的容易に抜去出来ます。

抜歯後の縫合などは必要なく、歯肉は1週間で治癒します。

抜歯する際には、写真3のような先端が円形や半円形の道具を使います。

抜歯の最中で狼歯が折れて根元が一部残ることもありますが、

その後に問題になることはありません。

(もちろん全て取りきることがベストです。)

 

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抜歯の道具(写真3)

 

狼歯を抜去後は、臼歯の尖っている部分を鑢(ヤスリ)で整えていきます。

これで騎乗馴致の準備「狼歯」+整歯が終了です。

これで馬がハミをより快適に受け入れられる環境になり、

スムーズに騎乗馴致が進みます。

育成馬ブログ 宮崎②

●雨天時の夜間放牧が馬体重に及ぼす影響(宮崎)

 

○育成馬の近況

 

2群に分けて騎乗馴致を進めている育成馬の近況をお伝えいたします。

9月上旬から騎乗馴致を開始している1群(牡馬10頭)は、

最初の3週間はドライビング中心に馴致メニューを組み、

現在は500m馬場において速歩および

ハッキング程度を行えるまでになっています。

11月からは1600m馬場でのキャンター調教を実施する予定です。

 

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写真① 500m馬場で隊列を整えた速歩を実施する1群牡の育成馬

 

1群牡のドライビング動画

  

一方、10月上旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬12頭)は、

ドライビングを開始したところです。

11月からは角馬場において集団での速歩調教を開始する予定です。

 

○夜間放牧の1歳馬を襲った豪雨

 

馬を管理していると、雨や雪などの悪天候時に放牧すべきか

舎飼いにすべきか頭を悩ます時があります。

予報とは異なって、夜中に雨が屋根を襲う音で目覚め、

放牧している馬を集牧した経験をお持ちの方も

少なくないのではと思われます。

今回は天気予報と大幅に異なる豪雨に見舞われた際に、

夜間放牧を実施していた馬の体重の変化について触れてみたいと思います。

 

事の経緯は、日本列島に甚大な被害を及ぼした台風18号が

9月17日朝に宮崎に直撃するという予報、

および15日夕方から16日朝までの降雨量は

最大で10mm/h未満という予報を鑑みて、降雨量はいくらか多いが、

48時間の馬房内管理となることは回避すべきとの判断を下し、

15日夕方から夜間放牧を実施したことから始まりました。

 

しかし、上記の予報に反して、

台風18号が秋雨前線を刺激した影響を受け、

15日23時以降から降水量が10mm/hを超え、

16日6時には最大となる34mm/hの豪雨を認めました。

なお、16日0時からの1時間あたりの降水量は下図のとおりであり、

放牧中の総雨量は約250mmに達しました。

 

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図① 9月16日未明から午前中の降水量

(日本気象協会 tenki.jp より)

 

6時の時点において、目視で全馬の異常を認めなかったこと、

また、激しい豪雨および放牧地から厩舎への馬道が冠水しており、

人馬の安全を考えた場合には集牧可能な状況でなかったこと、

さらに前日の13時に馬体重測定を実施していたことから、

豪雨時の放牧が馬体重に及ぼす影響を把握するため、

集牧を前日の馬体重測定時刻である13時に行い、

馬体重を測定することとしました。

 

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写真② 豪雨による馬場および馬道の冠水

 

○豪雨により馬体重は減ったか?

 

放牧前後において馬体重の減少を認めたのは1頭のみ(-1kg)であり、

その他の21頭は増加を認め、

そのうち4頭(牡牝それぞれ2頭)は10kg以上増加していました。

平均増加量は6.6kg(牡:6.4kg、牝:6.8kg)でした。

なお、集牧直後の体温については39.5℃が最も高く、

5頭が39℃を超えており、これらは全て牝馬でした。

これらの馬は治療することなく、翌日には平熱に復しました。

 

体重増加の原因は不明ですが、集牧の1時間前には雨は止んでいたため、

測定時には馬体はほぼ乾いており、

汗コキを用いて水分を取り除くことは困難な状態であったことから、

体重増加が馬体に含まれた水分に起因することは否定されました。

GPSを装着していなかったために推測の域を出ませんが、

豪雨のために放牧地での運動量が大幅に減少したため、

エネルギー消費が減少したことが原因の一つとして挙げられます。

その他、体重測定の直前まで青草を摂取していたために

水分摂取量が増加したこと、また牡に関しては、

馴致を実施しなかったことも一因であるものと推測されます。

 

事前に総雨量が250mmにも達することが分かっていれば、

必ず舎飼いを行っている程、

また夜中も集牧すべきではないかと自問自答する程の豪雨であったため、

体力消耗に伴って体重が減少しているものと推測していましたが、

ほとんどの馬が増加する結果となりました。

馬は元来、草原で暮らす動物であるため、

夜間放牧の環境に慣れさえすれば、

降雨による影響は私たちが想像しているほどではないのかもしれません。

 

そういえば、アイルランドでの研修中に、

昼夜放牧を実施している馬の管理の秘訣は、

馬体の油を落とさないことであり、

そのためにシャンプーはもちろん真冬でも

お湯で馬体を洗浄することは避けなければならず、

馬の手入れの基本はブラッシングであるといわれたことを思い出しました。

私達が馬のために良かれと思って実施している

シャンプーやお湯での洗浄は、

実は馬の自然の抵抗力を減退させているのかもしれません。

セリで美しい馬体の馬ほど、購買後に夜間放牧を実施すると、

皮膚炎を発症しやすいということも関係があるのかもしれません。

 

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写真③ 夜間放牧管理では馬体の油が不可欠なのかもしれません

(写真はアイルランドの夜間放牧の様子)

育成馬ブログ 生産編③(その2)

●繁殖牝馬の飼養管理

 

○分娩前の運動(GPSを用いた調査)

 

ケンタッキーでは分娩前に繁殖牝馬が放牧地内をどのくらい運動しているか、

GPS装置を使って調査してみました(図3)。

その結果、24時間放牧の群では、

移動距離が1日7.6km程度であったのに対し、

昼放牧群では2.4km程度まで移動距離が減少しました(中央値)。

 

参考までにJRA日高育成牧場では

昼放牧時の移動距離は2.5km程度とケンタッキーと同等ですが、

ウォーキングマシンを使用した運動でさらに2.5km程度常歩しているため、

合計では5.0km程度歩いているという計算になります。

 

次回詳しく述べますが、米国では分娩時に積極的に介助するため、

分娩前に運動を負荷して筋肉を維持しておくという考えには

至らないのかもしれません。

反対にJRA日高育成牧場では

分娩時になるべくヒトが介助しない“自然分娩”を推奨しているため、

運動を負荷して分娩時に必要な筋肉を維持しています。

 

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図3 分娩前の運動(GPSを用いた調査)

 

○繁殖牝馬の飼葉

 

繁殖牝馬の飼葉は、

タンパク質が14%の大粒のペレットが使用されていました。

詳しい成分については図4に示したとおりです。

朝と夕方の1日2回4ポンド、約1.8kgこのペレットを与えるのが基本で、

繁殖牝馬のボディコンディションスコアに応じて量を増減させていました。

 

分娩後の3日間はふすま、スイートフィード、コーン油を混ぜて

お湯でふやかしたブランマッシュを与えていました。

 

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図4 繁殖牝馬の飼葉

 

次回は分娩と交配(種付)について述べたいと思います。

育成馬ブログ 生産編③(その1)

●繁殖牝馬の飼養管理

 

前回から引き続き「ケンタッキーの馬産」について

紹介していきたいと思います。

今回は、繁殖牝馬の飼養管理についてお話します。

 

○繁殖牝馬の飼養管理の違い

 

日本(日高地方)と米国(ケンタッキー州)の

繁殖牝馬の飼養管理の違いについて図1にまとめました。

まず分娩前の管理についてですが、

日本では分娩前にウォーキングマシンもしくは

引き馬による運動を課す牧場が多いのに対し、

米国ではそのような特別な運動は課されていませんでした。

 

また、近年日本では分娩時に子馬を引っ張らない

“自然分娩”が普及しつつありますが、

米国では子馬を引っ張りかつ母馬に鎮痛剤を投与するなど、

積極的な分娩介助がなされていました。

ヒトの医療で出産する際に“無痛分娩”が普及していることが

背景にあるのではないかと考えられました。

 

種付の際には、日本では牧場のスタッフが

母子両方を馬運車に載せて種馬場まで連れて行くのが一般的ですが、

米国では牧場のスタッフは立ち会わず、

輸送業者が種馬場まで母馬を連れて行く、

その際子馬は馬房内に置いて行くというスタイルが普及していました。

 

そのほか、日本ではエコー検査で子宮内に空気が認められた場合など

必要な馬のみ陰部縫合いわゆるキャスリックが行われていますが、

米国では伝統的に牝馬全頭に対し陰部縫合が行われていました。

 

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図1 繁殖牝馬の飼養管理の違い

 

○分娩前の繁殖牝馬の放牧

 

繁殖牝馬の管理について、個別に説明していきます。

まず分娩前の放牧については、

空胎馬は基本的に24時間放牧されていました(図2)。

感染症予防のため、空胎馬は妊娠馬から隔離され、

本場から離れた分場で管理されていました。

 

妊娠馬については、分娩予定日まで1ヶ月以上間隔がある馬については

空胎馬と同じく24時間放牧され、放牧地で飼付がなされていました。

分娩予定日の1ヶ月未満になると、分娩厩舎付近に集められ、

1日8時間程度の昼放牧に切り替えられていました。

放牧地で分娩してしまうこともあるため、30分毎にスタッフが見回り、

分娩監視をしていました。

 

放牧地の広さを決める際の目安に

“1 acre, 1 horse(ワンエーカー、ワンホース)”という言葉が

使われていました。

これは馬1頭当たり1エーカー(約0.4ヘクタール)以上の

広さが必要という意味です。

この基準より広い放牧地が用意できれば、

馬は栄養面でも運動面でも支障をきたすことなく

すこやかに成長することができると考えられていました。

 

また、温暖なケンタッキーと言えども12月から2月までは

寒さで放牧地の牧草が伸びなくなるため、

草架を使用し放牧地内に乾草が置かれていました。

中に入れる乾草はルーサン、もしくは

ルーサンとオーチャードのミックスが使われていました。

 

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図2 分娩前の繁殖牝馬の放牧

 

(つづく)