育成馬ブログ 生産編⑥(その1)
前回から引き続き「ケンタッキーの馬産」について
紹介していきたいと思います。
最終回となる今回は、繁殖牝馬と子馬の獣医療についてお話します。
○繁殖牝馬は基本的に全頭陰部縫合(キャスリック)
陰部縫合いわゆるキャスリックは、
子宮内に空気が入るのを防ぎ受胎率を向上させる手技の一つで、
日本では陰部のコンフォメーションが悪い場合など
必要な馬のみに実施されています。
ケンタッキーでは、オーナーがアメリカ人の牧場では
基本的に繁殖牝馬全頭に対して実施されていました。
一方、オーナーがアメリカ人以外の牧場では、
日本と同様必要な馬のみに実施されていました。
通常、縫合は分娩後および種付後に獣医師が行い、
切開は分娩前および種付前にマネージャーが実施します(図1)。
図1 繁殖牝馬は基本的に全頭陰部縫合(キャスリック)
○子宮内膜炎の診断と治療
繁殖牝馬の不受胎の原因になる子宮内膜炎については、
すべての症例で子宮スワブが採材され、
細菌培養検査および抗菌薬感受性試験を実施し、
検出された細菌およびその細菌に対して
有効な抗菌薬を同定した上で治療が行われていました。
図2のグラフは
ケンタッキー州内の馬病院での子宮スワブ検査で検出された細菌ですが、
日本と同じく連鎖球菌および大腸菌が多いことがわかります。
図2 子宮内膜炎に対しては全ての症例でスワブ検査が行われていた
(つづく)