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育成馬ブログ(生産編①) その2

前回(その1)に引き続き

○クラブフットの対処法(生産①) その2

 

・装蹄療法①:ヒールアップ法

 まず、最初に行ったのは、蹄踵部を上げることで深屈腱を弛緩させること

を目的とした「ヒールアップ法」でした。エクイロックスという充填剤を

蹄踵部に接着するもので、1週間ほど(5月22日~5月29日)継続しましたが、

良化しなかったため次の療法に切り替えました。もちろん「ヒールアップ法」

で良化する症例も多く認められますが、本例に対しては効果がなかったようです。

 

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図3 ヒールアップ法(蹄踵部を上げることで深屈腱を弛緩させる)

 

・装蹄療法②:エクステンション法(ヒールダウン)

 次に行ったのは「エクステンション法」でした。ヒールアップとは正反対な

考え方になりますが、蹄尖部に充填剤を接着し、ロングトゥの状態にすること

で深屈腱を伸ばし、クラブフットを治療する方法です。深屈腱を無理矢理伸ばす

ような形になるため、同時に腱を伸ばす効果のあるオキシテトラサイクリンを

2日に1回、計3回投与しました。また、蹄尖部を引き摺って充填剤が摩滅し

効果がなくなってしまうのを防ぐため、特殊蹄鉄を作成し(図4)、それを

蹄尖部にエクイロックスで接着しました(図5)。

 

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図4 特殊蹄鉄(蹄尖部の摩滅を防ぐ)

 

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図5 エクステンション法(ヒールダウン)

 

●昼夜放牧を再開したタイミング

 エクステンション法(ヒールダウン)を5月30日に行った後は良化し、

6月14日にはクラブフットが治癒したため装蹄療法を終了できました

(図6)。クラブフット発症の原因となった昼夜放牧への切り替えまでには

もう1週間ほど時間をおき、6月23日から昼夜放牧を再開しました。

その後は良好に経過し、クラブフットの再発は認められませんでした。

今回の症例から学んだのは、昼夜放牧を開始した直後はクラブフットの兆候が

ないか子馬を良く観察することが大切であるということです。

また、対処法の選択肢をあらかじめ複数用意しておき、症例の状況に応じて

臨機応変に対応することが重要だと思われました。

 

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図6 治癒後の蹄

 

今回の記事が子馬のクラブフットの管理に少しでもお役に立てば幸いです。

育成馬ブログ(生産編①) その1

○クラブフットの対処法(生産①) その1

 

 クラブフットは生後3~6ヶ月の間に多く発生すると言われているため、

これからの時期に注意が必要な病気です。今回は、昨年JRA日高育成牧場で

発生した症例についてご紹介します。

 

●クラブフットとは

 クラブフットとは球節以下の外貌がゴルフクラブのように見える蹄病です。

原因は、深屈腱の拘縮や腱と骨の成長速度のアンバランスと言われています

が、いまだ発症機序は明らかにされておらず、予防法も確立していません。

発症時期は生後3~6ヶ月の間が最も多く、その進行は極めて速いことで

知られています。早期発見・早期処置によりある程度の進行は抑制できます

が、当歳時に形成された蹄形の完全治癒は望めません。

以下にクラブフットの指標となるグレード(Dr. Reddenによる分類)

を示します(図1)。

 

・グレード1

  正常な対側蹄に比較して蹄角度は3~5度高く、軽度な肢軸の前方破折に

 より、蹄冠部の軽い肥厚が認められます。

・グレード2

  正常な対側蹄に比較して蹄角度は5~8度高く、肢軸の前方破折のため

 蹄冠部は肥厚し、蹄輪間隔は蹄踵側で広くなります。

・グレード3

  蹄尖部は凹湾し、蹄踵部の蹄輪幅は蹄尖部の2倍になります。蹄叉尖の

 前方の蹄底には、蹄骨による圧迫痕が認められ、蹄冠部は著しく肥厚

 します。X線所見では蹄骨のローテーション、先端部の脱灰とリッピングが

 認められます。

・グレード4

  蹄角度は80度以上、蹄尖壁は顕著な凹湾となります。蹄踵部の蹄輪幅は

 蹄尖部の2倍以上となり、蹄踵壁の高さは蹄尖部と同等か、高くなります。

 X線所見では蹄骨の著しいローテーション、先端部の明瞭な脱灰と丸い

 リッピングが認められます。

 

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図1 クラブフットのグレード(Dr. Reddenの分類から)

 

●JRA日高育成牧場で発生した症例

 昨年、JRA日高育成牧場の当歳馬で発生した症例について紹介します。

3月20日に生まれた牝馬で、5月17日に昼夜放牧(13時放牧、8時集牧の

19時間放牧)を開始しました。すると、5月18日の朝には歩様の硬さが

認められ、5月19日の朝にはクラブフットが確認されました(図2)。

進行が極めて速いと言われているとおりに、発見された時にはすでに

グレード2の状態になっていました。同馬の場合、昼夜放牧を開始した時期と

クラブフットが発生した時期が一致していたため、放牧を昼放牧

(8時放牧、15時30分集牧の7.5時間放牧)に切り替え、装蹄療法を行いました。

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図2 JRA日高育成牧場の当歳馬に認められたクラブフット(グレード2)

(つづく)

活躍馬情報(事務局)

7月15日 日曜日の福島8R(3歳500万下牝)で、

宮崎育成牧場で育成されたモルフェオルフェ号が、スタートから先頭を奪い

そのまま逃げ切り2勝目を挙げました。

 

 

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7月15日 2回福島競馬6日目 第8R  3歳500万下牝 芝 1,200m

モルフェオルフェ号(スマッシュの15) 牝

【 厩舎:大江原 哲 厩舎(美浦) 父:オルフェーヴル 】

 

また、同日の函館9R(下北半島特別)では、

日高育成牧場で育成されたタイセイソニック号が、

最後方大外から末脚を爆発させ、2勝目を挙げました。

 

 

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7月15日 2回函館競馬4日目 第9R  下北半島特別 芝 1,200m

タイセイソニック号(ヴィエナトウショウの15) 牡

【 厩舎:西村 真幸 厩舎(栗東) 父:ディープブリランテ 】

今後のさらなる活躍を期待しております。

活躍馬情報(事務局)

7月7日 土曜日の福島5R(2歳新馬)で、

日高育成牧場で育成されたイチゴミイルフィーユ号が、

最後の直線で末脚を爆発させ、うれしい初勝利を挙げました。

本年度売却したJRA育成馬の中でも初勝利です。

 

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7月7日 2回福島競馬3日目 第5R  2歳新馬 芝 1,200m

イチゴミルフィーユ号(ホシノメガミの16) 牝

【 厩舎:林 徹 厩舎(美浦) 父:ヨハネスブルグ 】

 

また、7月8日 日曜日の函館10R(立待岬特別)では、

日高育成牧場で育成されたプレトリア号が、大外から鋭い伸びを見せ、

2勝目を挙げました。

 

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7月8日 2回函館競馬2日目 第10R  立待岬特別 芝 1,200m

プレトリア号(ダイワエタニティーの15) セン

【 厩舎:中川 公成 厩舎(美浦) 父:ヨハネスブルグ 】

今後のさらなる活躍を期待しております。

活躍馬情報(事務局)

6月30日 土曜日の福島11R(テレビユー福島賞)で、

日高育成牧場で育成されたレジーナフォルテ号が、

最後の直線で粘りの末脚を見せ、5勝目を挙げました。

 

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6月30日 2回福島競馬1日目 第11R  テレビユー福島賞 芝 1,200m

レジーナフォルテ号(ナイキトライアンフの14) 牡

【 厩舎:佐藤 吉勝 厩舎(美浦) 父:アルデバラン 】

 

また、7月1日 日曜日の函館1R(3歳未勝利)で、

宮崎育成牧場で育成されたリリープリンセス号は、

3コーナーで先頭を奪った後はそのまま逃げ切り、うれしい初勝利を挙げました。

 

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7月1日 1回函館競馬6日目 第1R  3歳未勝利 ダート 1,000m

リリープリンセス号(プリンセスイブの15) 牝

【 厩舎:安田 隆行 厩舎(栗東) 父:バゴ 】

 

 今後のさらなる活躍を期待しております。