浦河で当歳馬の品評会が開催されました(日高)

1027日(金)に浦河町軽種馬生産振興会青年部の主催による当歳馬の品評会が開催されました。品評会は準備が大変なことや地区の意識が変わったこと等で、近年開催数が減っていましたが、浦河地区では青年部の努力で復活しました。当日は10頭の当歳馬が出陳され、大勢の人の前で立ち姿や歩きが披露されました。当歳馬の馴致等、事前の準備は大変だったと思いますが、青年部が活性化しお互いに刺激しあうことは必ず地区の振興につながっていくことと思います。

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品評会で見事に最優秀賞を獲得した(有)酒井牧場から出陳されたペリウィンクルの18(父:マヤノトップガン)。馬の手入れ、チフニーを付けての展示や馬体の作り。さらに馬の引きかたや馬自身の歩き等いずれも高評価でした。

日高育成牧場では馬の成長を把握するために、月に1度、測尺(そくしゃく)を行っています。一般的には、き甲の頂点から地面までの垂直距離を測る体高、き甲の頂点に近い部位を通って、胸郭のまわりを測る胸囲、左前肢の管中央の周囲を測る管囲の3部位からなります。測尺は簡単にできるため、昔から馬の大きさを知る指標として用いられています。

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測尺部位:赤線は体高でき甲から地面までの距離、白線は胸囲で胸郭の周囲長、青線は管囲で管部の周囲長

さらに月に2度、体重とボディコンディションスコア(BCS※1を測っています。体重の推移を知り、馬の脂肪のつき方をみることで、成長や調教強度に応じた飼料給与量が適切であるか判断し、馬の適正な発育に努めています。

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ボディコンディションスコア(BCS※1:外貌からみた馬体の脂肪のつき方を1から9までで数値化したもの。育成馬の標準は概ねスコア5で、太るほど数値が高くなり、痩せるほど数値は低くなります。日高育成牧場では肋骨部、背中央部、尾部の3部位を測定しています。

また、一昨年からエコー機器を用いて馬の臀部の脂肪厚を測定しています。この値から馬の体脂肪率や除脂肪体重を推測することができます。冬季間の牝馬は体重が増えても脂肪として蓄積されるだけで、なかなか筋肉量が増加しにくい傾向にあり、図らずしも「冬場の牝馬は仕上がりにくい」という厩舎格言を裏付けた結果となりました。

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エコー機器を用いて臀部の脂肪厚を測定しているところ。馬の臀部にプローブを当てるだけで、簡単に測定することができます。

ブレーキングの様子がNHKニュースで放映されました(日高)

920日(水)から第2※1のブレーキングを開始しました。これに併せてNHK室蘭放送局の太田記者が取材に来ました。やらせなしのぶっつけ本番でしたが、初めてのラウンドペンでのランジングにもかかわらず、どの馬も人の指示に従いスムーズにこなしてくれました。また、第1※1のドライビングや馬房での騎乗の様子も併せて撮影しました。太田記者は人が騎乗できるまでに多くの過程があることや馬が素直に従っている姿に感心していました。この模様は当日と翌日に北海道内で放映されました。130秒という短い枠の中で全てを紹介することはできませんでしたが、競馬に詳しい方でも競走馬として出走するまでのことをご存知の方は多くないと思います。これからも機会を捉えて積極的に発信していきたいと思います。

Img_1983_1 ラウンドペンでのランジングを撮影する太田記者。ブレーキング初日で上からの撮影にも動じず、エイシンベーリングの05(牡・父カリズマティック)はとても素直にランジングを行えました。

ドライビングとは馬の後ろで、人が2本の調馬索(ロングレーン)を用いて馬を操作することで、馬の背に騎乗することなく口向きを作るために行います。口向きは車で例えるとハンドルとブレーキに該当し、これ無くしては安全に騎乗することはできません。これまでのブレーキングの過程は安全にドライビングに移行するためのものといっても言い過ぎではないほど重要なステップです。

061024pic2 コーンを用いてドライビングでスラロームを行うショッキングピンクの05(牝・父スターオブコジーン)また、ドライビング中でゲートを通過しておくと、騎乗してからのゲート馴致が容易になります。

061024pic3ドライビングでゲートを通過するスイートイブンの05(牝・父ティンバーカントリー

1群の馬たちは順調にブレーキングを消化し、104日(水)から屋内800m走路での騎乗調教を開始しました。誘導馬に先導され、まだフラフラした足取りですが着実に競走馬としてのステップを歩み始めています。

061024pic4 誘導馬に先導され800m走路を運動するJRA育成馬:右からミスクラブアップルの05牡・父シンボリクリスエス)、リキワイワンダーの05(牡・父キャプテンスティーヴ)、メンデスキャンドルの05(牡・父フォーティナイナー)、誘導馬、ヒットザボードの05(牡・父コロナドズクエスト)、レガシークラウドの05(牡・父スクワートルスクワート

1※1、2※1:日高育成牧場では馬の入厩日、性別、馬格、疾病、生年月日等を参考にして、4群に分けてブレーキングを開始しています。第1群は95日から開始していました。

ブレーキング(騎乗馴致)を始める前に(日高)

ブレ-キングとは馬に鞍をつけて人が騎乗できるように教育することです。馬にとってみれば、わけのわからない馬具を付けられ、胸部を締め付けられた上に背中に跨られるわけで不安で一杯なはずです。しかし、この過程を経なければどんなに走る能力があっても競走馬になることはできません。馬が納得して自ら受け入れ、心に傷跡を残さないようにすることが肝心です。

馬は自然界では集団で生活する動物であり、必ず群れの中に順位が形成され強いリーダーのもと群れは安定します。対人関係も同様で、人が馬のリーダーになることで馬は人と一緒にいることに安心して信頼するようになります。馬に接する基本は褒めることですが、特に牡馬は自分がボスと勘違いしやすい傾向があり、ときには毅然とした態度で序列を明確にすることも必要です。ただし、馬を怖がって懲戒することは百害あって一利なしです。

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パッティング:タオルを用いて全身をパタパタと叩きますが、馬はじっとしています。

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ストラップ馴致:ベルトのようなストラップを用いて、馬の胸部を締め付けることに慣らします。

日高育成牧場では円滑で安全にブレーキングを進めるために、事前に様々な準備を行っています。タオルを用いたパッティングもその一つです。タオルで全身を隈なく触り、最終的にはパタパタと叩きます。最初は不安で体を硬くさせていた馬が、慣れると全く動じなくなります。パッティングは馬が人を受け入れてくれたかのバロメーターになります。特に敏感な部分である頭頂部、胸下、飛節の上は念入りに実施します。

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日々の馬体チェック:馬をつなぐことなく肢元を触っても馬はじっとしています。

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ウォーキングマシンの馴致:放牧地への行き帰りにウォーキングマシンを通します。

サマーセールが終了し、JRA育成馬が入きゅうしてきました。

8月21日から25日まで、新ひだか町の北海道市場でサマーセールが開催されました。1,122頭のサラブレッド1歳馬が上場された大規模なセールですが、売却率は5年ぶりに30%を越え、売却総額も前年を1.3億円ほど上回る、約18.2億円でした。せりの会場では馬を見に来場しているバイヤー(購買者)の数が多く感じられ、実際のせりでも例年以上のせり合いで、目当ての馬を購入することは簡単ではありません。数字だけでなく景気が回復しつつあることが感じられた市場となりました。

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活発なせりあいとなったサマーセール

それでも新種牡馬のアラムシャーやコロナドズクエストの産駒をはじめとして、素質あふれる若馬を購入できたと思います。最高価格馬は1950万円(税抜)で落札した母ハローヘレンの牡馬で、姉に今年の2歳戦で2連勝と活躍しているJRA育成馬ハロースピードがいます。父はマヤノトップガンからヘクタープロテクターに変わっていますが、姉に負けず劣らず伸びのある好馬体をしており、非常に楽しみな1頭です。

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最高価格馬のハローヘレンの05

サマーセールで購入した馬の日高育成牧場への入きゅうは8月30日から始まり、9月1日には今年のラインナップが揃いました。入きゅう時に血液検査、特徴照合や歩様検査等の馬体検査および写真撮影を行いましたが、ほとんどの馬がおとなしく躾られており、牧場やコンサイナーのしっかりした教育の成果が伺えました。馬体の写真撮影には、よりよい映像を得ることを目的として、背景ボードに光線が吸収されにくいモスグリーンを採用したところ、昨年以上に馬体がはっきり見えるようになりました。
 また、レントゲンによる蹄の撮影を行ないました。これは肢軸(しじく)検査と呼ばれるもので、これを参考に今まで以上によい装削蹄につなげられればと思っています。「蹄なくして馬なし」といわれるほど、蹄の状態を把握することは重要です。

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入きゅう時の綿密な馬体検査
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蹄の状態をレントゲン像で確認します

日高育成牧場の育成馬日誌をお届けします!

今回より「JRA育成馬日誌(日高)」をお届けすることになりました。JRA育成馬の近況や調教過程、日高育成牧場の出来事等をお届けしますのでよろしくお願いします。

まずはちょっとうれしいニュースから。日高育成牧場では馬に食べさせる乾草を自給しています。牧草収穫には刈り取りからロールまで連続して3、4日間の晴天が必要で、途中で雨に降られるとパーになってしまいます。今年の夏は天候不順で、長期予報で晴れマークが続いていても急に雨マークに変わったり、晴れマークにもかかわらず雨が降ったりと大気の状態が安定せず、なかなか牧草収穫が捗りませんでした。7月末からやっと夏らしい天候となり、なんとか1番牧草の収穫を終了してほっとしているところです。

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テッターをかけて牧草を乾かします
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ロールベイラーで牧草をロール状にします

JRAでは北は北海道から南は九州まで全国各地で開催される1歳馬市場でJRA育成馬を購入しています。現在、日高育成牧場にはセレクトセールとセレクションセールで購入した17頭のサラブレッドが入きゅうしており、2頭から5頭のグループに分かれて、午後2時から翌朝8時まで昼夜放牧を行っています。暑さとアブのためしばらくの間は快適な放牧環境とはいえませんが、放牧地でおいしい青草を腹一杯食べて9月上旬から始まる騎乗馴致まで英気を養ってもらいたいと思います。

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JRA育成馬の放牧風景

さて、8月21日から5日間の日程で約1300頭の馬が上場される国内最大規模のサマーセールが始まります(注1)。育成馬の仕入れはその後の育成に勝るとも劣らぬほど大切であり全頭をチェックしていきますが、せり期間中だけでは時間が足りず、14日から1週間かけて主要コンサイナー(注2)を中心に事前の検査を実施しています。上場馬の中から磨けば光るダイヤモンドの原石を見つけ出すことは大きな楽しみでもあります。

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真剣な眼差しでの馬体検査

(注1)この文書は8月15日に作成しております
(注2)コンサイナー:せりに上場される馬を飼養管理する専門業者