日高にも1歳馬が入厩しました (日高)

昨年購買した育成馬たちは4月28日に開催されたブリーズアップセール等を経て元気に巣立ち、6月中旬から行われているメイクデビュー競走(新馬戦)に続々と駒を進めてきています。馴致段階から心を注いできた我々育成牧場の職員にとって、育成馬の出走とそのパフォーマンスは大きな喜びの瞬間であると同時に、多くの反省が生まれる時でもあります。

さて、7月に行われたセレクトセール、北海道セレクションセールの1歳セリでJRAが購買した17頭(セレクト3頭、セレクション14頭)のうちの15頭が、7月30日に日高育成牧場へ入厩しました。

馬体検査と写真撮影を行い、5頭以下のグループに分け放牧を開始します。その際、新しい放牧環境に慣れて群れの内の順位が決まるまではしばし争いが絶えないため、最初の放牧では怪我やアクシデントの心配が絶えません。これは特に牡馬で顕著な傾向があります。しかし、騎乗馴致開始までの間に昼夜放牧を経験させておきたいという考えから、我々はこれを必ず通過しなければならないポイントと考えています。少しでも放牧時のリアクションを小さくするために、放牧地を牧柵に沿って引き馬で1周回り、放牧地に慣らします。この時しっかりと馬を御すために、必ずチフニーと呼ばれるハート型のハミを用い、放す直前にはずします。安全のため、人は柵を背にしていつでも外に出ることのできる体勢をとり、全馬一斉に離します。

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放牧地外周を引かれる馬達。必ずチフニーを装着します。新しい環境で早く放してほしいため、少しいらいらしています。

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フレッシュな馬たちの走りです。放牧地のチェックが一段落し、みんなで出入り口に戻ってきました。右からエンドレスチャントの07(牡、父:オペラハウス)、インキュラブルロマンティックの07(牡、父:ボストンハーバー)、ブルーブロッサムの07(牡、父:ストラヴィンスキー)。

今回入厩した牝馬は放牧地を軽く1周しただけで馬同士のいざこざはほとんどなく落ち着きました。牡馬の闘争も比較的少なかったのですが、みんなで走る際に群れから押し出された1頭がフェンスにぶつかり、ちょっとヒヤッとする場面がありました。しかし、大きな事故はなく無事に初日の放牧を終えました。

この時期の放牧で頭を悩ませるのが吸血昆虫です。特にこの時期はアブの発生が多く見られます。日高はアブの発生源となる沢地が多いため、ピーク時のアブの数は半端ではありません。放牧されている馬はおいしく草を食むというよりも、団子状の馬群を作りほとんど動かず、落ち着きなく尾を振り地団太を踏みながらアブを追うという、まさに我慢大会の様相を呈します。

この対策として、日中を避け夜間に重点を置いた放牧になるべく早く移行します。今回の入厩馬は、群が落ち着いた入厩3日後から、夕刻4時から朝8時までの夜間放牧としました。

欧米では私の知る限りアブや吸血昆虫の発生は比較的少なく、こういった悩みはあまりないようです(単独の放牧で、顔にたかるハエを防ぐために頭巾を被せているのを見たことはありますが)。放牧前には既存の忌避剤(虫よけ)の塗布などの対策はしていますが、現状の市販品では忌避力と持続時間が短く、期待するほどの大きな効果はないようです。コスト面にも課題が残ります。新たな忌避剤の開発なども含めた、放牧時の吸血昆虫対応は今後取り組んでいかなければならないことかもしれません。

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アブは皮膚に傷をつけ染み出てきた血液を舐めるため、吸血後も血がにじみます。

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アブに刺されてボコボコになった下腹部。

育成馬の写真撮影(日高)

このところ穏やかな日が続き、いよいよ3月24日(月)から1,600mトラック馬場がオープンしました。これからのスピード調教は、間近に迫った育成牧場の展示会やBUセールの騎乗供覧に向けて、1,000m屋内坂路馬場に加えてこの馬場を併用して行っていくことになります。

馬達はほとんどが1,000m屋内坂路馬場のスピード調教で持ったまま3ハロンを45秒(ハロン15秒ペース)で走れる体力が付いてきています。坂路の傾斜による心肺機能に対する負荷を考慮すれば、そろそろ平坦馬場では3ハロンを13秒台刻みで走る力が付いてきたと考えられます。

さて、今回は写真撮影についてです。

今年から育成牧場職員自らの手で写真撮影を実施することにしました。天候や場所を選び、しっかり馬を立たせ写真撮影する技術、加えて撮影した写真を吟味する選択眼も育成牧場が試行錯誤する中で色々な皆さんに伝えていく部分ではないかという考え方からの取り組みです。

 馬の駐立写真の撮影について、注意しなければならないポイントとしては、

①光線(馬に当たる光)

・順光で、光がやわらかく横目から光が当たる時間帯がベスト。

②撮影場所

・平坦で蹄まできれいに見え、背景のスッキリした場所。

③風向き

・無風が望ましいが、風があっても、タテガミが立たず、尾が股間に巻き込まないこと。

④立たせ方

・四肢をずらして、立った耳がVの字を作る程度に馬の顔を少し撮影者に向ける。

・引き綱は、ゆったりと長めに持つ。

⑤撮影テクニック

などがあげられ、撮影担当者はシャッターを押す瞬間に、馬の四肢が画角に収まり、写した写真をトリミングした時に保持者の手が入らないか、肢を休ませていないかなどチェックし、最後に耳が立ち馬の表情が引き締まっているかを判断します。

今回の撮影において威力を発揮したのがデジタル一眼レフカメラです。連写機能によりシャッターチャンスを逃さないのはもちろんですが、フィルムや現像の費用に加え手間がかからないのが大きな魅力です。

もう一点は、ICレコーダーの活用です。撮影準備が整い、最後に耳を含めた顔の表情を求める段階になってなかなか撮影に集中してくれない馬がいます。そんな時、事前にレコーダーにテレビのコマーシャル等、馬の注意を引きそうな音源を録音しておき馬の左斜め前から聞かせるのです。瞬時に異なったタイプの音を再生、リピート、頭出しができることから効果覿面です。しかし一方で何回も繰り返すとその音に慣れてしまう傾向もあります。再生は極力短時間にとどめ音源を豊富に用意すること、構えるカメラマンと息を合わせることが大切です。ちなみに数頭の例外はありましたが、音源の中で極めつけは、馬の「いななき」でした。

最後に、写真選択の段階になって、その幅を持つためにも、いい写真が撮れたと感じても、最低2~3回は立ち位置を変えて撮影しておく必要性を感じました。しかしそのためには、撮影に携わる全スタッフの、いい写真を撮ることに対する理解と忍耐が求められます。

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昨年造成した日高山脈を望む写真撮影用のお立ち台。ようやく周囲のしばれが取れたものの芝生が生えそろわず少し殺風景ですが、背景の山並みは素晴らしい。左前のICレコーダーの発する音に反応し凛々しい立ち姿を見せています。馬はBUセール番号7番ハートフルソングの06(牡父クロフネ、母父マルゼンスキー)。

それでは購買時の写真と今回撮影した写真との比較をご覧下さい。

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昨年の8月入厩時の写真。四肢は右側を狭く立たせることで、すべての肢が見えるようにします。馬はシラーの06(♂父マイネルラヴ)。馬体は皮膚が薄く購買時より垢抜けており多くの方の注目を集めた1頭でした。春早い撮影では、この写真の緑の芝と青い山並がうらやましく感じます。

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今回3月中旬撮影のシラーの06。BUセールの名簿番号は36番。休むことなくトレーニングを積まれ、1歳時の子供らしさが抜けてたくましくバランスが良くなりました。その力強さが表現できていればいいのですが、いかがでしょう。

色々な撮影テクニックはあるにしても馬の良さを引き出す写真を撮影する一番の要素は天候です。光と風が味方してくれなければ、どれだけ手入れをして、どれだけきれいに立たせてもインパクトのない写真になってしまいます。その天候を待つために撮影が予定通り進まないのは常のことです。できるだけ成長を待ち、冬毛が取れた馬体を撮影してお見せしたいのは人情ですが、お披露目の期日は決まっています。そのタイトなスケジュールのなかで好天の調教後を撮影に当て、現時点の馬たちの馬体をアピールできる写真の撮影を終えることができました。

目標を持った騎乗と隊列(日高)

4月28日に開催されるブリーズアップセールまで残り40日あまり、育成牧場での展示会は残り1ヶ月(4月14日)を切りました。日も長くなり、凍結のため使えなかった1,600mトラック馬場も予定通り3月下旬には使えるようになりそうです。

週2回実施している育成馬の1,000m屋内坂路馬場でのスピード調教は、2本目のスピード指示を、最終3ハロン平均で牡馬は16秒、牝馬は18秒とするまでになっています。手綱を持ったままの余裕の走りを見せており、展示会やセールでは力強い走りを皆様に披露できるのではないかと思います。

さて今回は「目標を持った騎乗と隊列」について書いてみたいと思います。

育成牧場では騎乗に際して走行タイムと走行時の隊列(ポジション)を事前に騎乗者に指示します。その目的は、騎乗者と馬との折り合いの中で乗りやすい位置取りやタイムに甘んじ、ただ漫然と調教を進めるのではなく、他の馬に影響を受けながらも目標を持った騎乗が出来ることを目指しているからです。

与えられる指示は騎乗者の日々の目標でもありますが、当然馬たちの目標でもあります。一朝一夕に目標がクリアできるわけではありませんが、そこを目指して日々歩を進めていきます。

競馬において、競走馬は一群となってもまれる中でレースを進め、直線での攻防に望みます。最終的には、先行逃げ切り、差し、自在等、色々なタイプの競走馬として成長していくのでしょうが、我々は基本ベースとして、位置取りに自在性のある馬を育てたいと考えています。そこでレースでの展開を想定して、群走行の要素を分解して調教に用いるのが隊列です。

また、基本的に馬は走りたがらない動物と考えています。長い年月をかけた改良により、走る素因の一つとして、なるべくテンションの高い競馬に適した馬が選抜されてきていますが、動物の基本としてエネルギーを無駄にせず楽をしたい、無理をしたくないというのが自然です。しかし競馬ではその意に反し全速力で走らなければなりません。そこで生来の性質を利用していかに気持ちよく走らせるかが調教を進める上で大きなポイントとなってきます。馬にとって強引に「走らされた」のではなく、結果として「走ってしまっていた」という自然な流れの中で調教を進展していけたらと考えています。その手法として、どう調教時の隊列を組むかがポイントになってくるわけです。

 騎乗馴致終了後のしばらくは、環境と騎乗されての運動に慣らすことを目的に、誘導馬を先頭にして、まさにランダムな一群で行う調教をこなします。その段階を過ぎるといよいよシングルファイル(1列縦隊)による隊列調教が始まります。

そこではまず、先頭を走ることを学びます。最初は先頭に立つとキョロキョロ、フラフラして真っ直ぐ走れない馬がほとんどですが、誘導馬や僚馬と一緒に走らせることで、人馬共に自信を持って先頭が出来るようになっていきます。最初はできる馬からですが、育成牧場を卒業するまでには先頭馬を指定し、全馬がこなせるようにしていきます。

隊列の主なものは、1列縦隊、2列縦隊、2頭併走があります。

1列縦隊は、縦1列に並んで走りますが、前の馬との間隔の目標は2馬身です。真っ直ぐに走ることはもちろんですが、先行馬への追走、後ろでの我慢、顔への砂のキックバックに慣れる等を学びます。

2列縦隊では横にも馬がいる形になり、より実践に近くなります。横に馬がいても走りに集中できることを求めます。

最後の2頭併走は、直線での競り合いをイメージしたものですが、どちらかが先行する勝ち負けではなく、鼻面をあわせることが基本です。馬の心理として逃げ遅れる恐怖があり、さらに牡馬には闘争心も加わります。それらを利用して求めるスピードを自然に達成させていきます。

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屋内800mトラック馬場での1列縦隊(シングルファイル)による騎乗。さらに前後間隔を詰めていきます。

馬は先頭からラリシェスの06(♀父コロナドズクエスト)、メローホリデーの06(♀父:バブルガムフェロー)、エルカーサリバーの06(♀父:サニングデール)、ワールドウッドの06(♀父:ゴールドアリュール)。

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屋内800mトラック馬場での2列縦隊による騎乗。隊列は整っていますがまだスカスカの状態です。前後左右の間隔はさらに詰めていく必要があります。

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間隔が詰まってきてこの時点では最終形に近づきつつあります。しかし馬や騎乗者の表情の違いを見てもこの隊形の維持にかなり努力をしていることが推察できます。馬は左からウォーターセレブの06(♂父:スウェプトオーバーボード)、ニットウヒマワリの06(♂父:ワイルドラッシュ)、ケイアイバラードの06(♂父:シルバーチャーム)、エイユージュリアンの06(♂父:トウカイテイオー)。

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屋内800mトラック場での併走調教。規定されたスピード(ハロン20秒)を守り、互いにオンザブライドル(持ったまま)で指示通りに併走できています。スピードに余裕があることによる蹴り合いなどを防ぐために左右の間隔はこの時点では馬3頭分程度を目安にしています。

馬場状態の把握とコンディション維持への取り組み(日高)

1月の着任当初は最低気温がマイナス20度まで下がるかもしれないと思っていた寒さも、3月になり底を打った感があります。牧場の南斜面では、解けた雪の間から福寿草が可憐な花を咲かせ、春の訪れを告げています。しかし浦河管区気象台の測候データによれば、本年は2月末までに一日の平均気温がプラスになった日は2度しかありませんでした。 昨年は17日、一昨年が 13日であったことから本年は近年の中では寒さが厳しかったといえるのではないでしょうか。

育成馬達は、屋内800mトラックでの800m+1600m(ハロン21~20秒)調教をベースに週2回、屋内坂路馬場でスピード調教を実施していますが、ほぼすべての馬が2本の駆歩をこなし、2月末時点で、牡馬は2本目の最終3ハロンを17-16-16秒、牝馬は19-19-19秒の指示が出せるまでになっています。

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牧場の南斜面で、雪解けの間から可憐な花を咲かせる福寿草。

 さて今回は育成牧場の調教馬場の状態把握とコンディション維持への取り組みについて書きたいと思います。育成を担当する者にとって常に気になるのが、調教を行う馬場のコンディションであり、それは若馬期特有の運動器疾患の発生を予防するうえで非常に大きな役割を担います。一方それは天候や経年により変化するため、良いコンディションを長く維持することはかなり大変なことです。

育成牧場では、屋内800mトラックが、冬季間の調教の主体をなす施設となっています。馬場のクッション素材は寒冷地向けに冬期間の凍結を防ぐことによるクッションとグリップ力の確保と埃の防止を主眼とし、オイルサンドに細いゴムチップを混入させたもので、新素材の試行を兼ねていました。当初の目的は十分に果たせたのですが、経年により色々な変化をみせ、管理方法についても試行錯誤が重ねられました。

初期の段階では、こまめな馬糞の除去とパワーハロー掛けだけの手間いらずの馬場でしたが、何処まで安全に調教できるか、その当時の育成担当者は、新しい素材の特性をつかむべく調教を進めました。この馬場はゴムチップを含むことで、転圧が利かず、砂が厚く重いという特性があり、調教が強くなると弯膝(前膝の関節がゆるくなってしまう症状)の馬が増え、重度なものでは肩跛行も散見されました。しかし経年と共に砂の細粒化が進みオイルコーティング劣化や、馬糞(なるべく取るようにはしている)由来の埃がオイルに付着することで粘着性と保持力が低下し、硬い路盤への蹄の衝撃によると思われる骨瘤の発生が目立ってきました。また、凍結はないものの埃がひどくなってきたのもこの頃です。そこで使用開始から5年経過した01-02のシーズンからは、馬場のグリップ力とクッション性を向上させるため、ついにオイルサンドに対して散水と不凍剤(塩化カルシウム)の散布を開始しました。

現在では既報にもありますように、ローラーで転圧を加えることでさらに走りやすい馬場の管理が可能となっており、以前は上限がハロン22秒のスピードであったものが、20秒の指示が出せるようになっています。

しかし今後も馬場状態は日々変化していきます。また管理担当者も交代します。そういった状況において一定の良好なコンディションを長く保つためには、馬場状態をある程度客観的に把握していくことが求められます。そこで今年から試行として、①差込加重、②砂厚、③水分量、④計測時の気温を定期的に計測するようにしています。計測は800mの馬場8箇所のそれぞれ内側と外側の合計16箇所で実施していますが、均一で良好な馬場コンディションづくりの大変さを改めて実感する一方で、管理担当者と馬場コンディションの調整状況を、数値を用いてイメージできるようになってきています。

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散水、ハロー掛け後の馬場で、状態をチェックする職員。

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加重計の表示。計器を下に向け、赤いテープが隠れるまでゆっくり砂に押し込むと8cmの加重が計測できます。

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加重計で8cmまでの差し込み加重を測定しているところ。

育成状況の視察においでください(日高)

まず最初に育成馬の近況ですが、昨年8月の下旬から、10月にかけて、セリでの購買時期や馬の成長状況を考慮して、4群に分けて馴致を開始しその後の調教を進めてきましたが、先に馴致を始めた群が後続を待つ形で、現在牡牝ともようやく、同一調教レベルに追いつきました。週2回のスピード調教を坂路で実施していますが、2月15日時点で、牡馬は1,000m(5ハロン)のギャロップの最終3ハロンを17-17-17秒、牝馬は20-20-20秒の指示をクリアすることができるようになっています。今後も1ハロンの瞬間スピードを求めるのではなく、1,000mの坂路馬場をフルに生かして少なくとも3ハロンの平均スピードを上げていくことで、若馬に対して安全にかつ馬に底力の養成ができる調教を目指したいと考えています。

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牝馬も育成馬全体が坂路で1ハロン20-20-20秒をこなせるまでになっています。馬は左からチッキーズディスコの06(父:シンボリクリスエス)、ハッタロッチの06(父:アグネスデジタル)、フランチェスカの06(父:アッミラーレ)。(写真提供は齊藤宗信氏)

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坂路に行かない日は、800m馬場において1周-2周の計3周(2,400m)を2列縦隊で、牡はハロン20秒、牝は22秒を上限とした駆歩をベースに調教を進めています。馬は先頭左がファミリアーストーリーの06(牡 父:Diesis)、マイネマリエの06(牡 父:バブルガムフェロー)。(写真提供は齊藤宗信氏)

さて、そういった現在のJRA育成馬の調教状況、飼養管理は、生産や育成に携わる方、JRA育成馬の購買を希望される馬主、調教師の方々に参考にしていただくこと主眼として常時オープンにしております。事前に「育成状況の視察希望」の旨、育成牧場にまで連絡をいただけましたらできる限り対応させていただいています。

これまでにも多くの育成牧場の方々に来場いただいておりますが、先日は三石の青年部の皆さんが訪れ、熱心に視察されるなかで、本年の調教の進展状況や視察した内容に対する質疑など、多く話題に盛り上がりました。中にはJRA育成の生産牧場の方もおられ、愛馬の成長を見て期待に胸を膨らませていました。来場いただいた方には育成牧場の育成馬管理の基礎を明記した第2版となる「JRA 育成牧場管理指針」や育成馬名簿などをお配りし、でき得る限り当育成牧場の育成内容について理解いただけるように努めています。育成牧場で実施されている手法が少しでも皆さんの育成の参考になれば幸いですし、同時に我々にとっても外部の色々な方々との意見交流は大きな刺激にもなっています。

来場をお待ちしています。

なお、一般のファンの皆様には、夏季(7月~10月)に毎週牧場見学ツアーを実施する予定ですので、日高路への旅行の際には事前連絡の上是非お立ち寄りください。子馬を含めた場内の馬達とのふれあいなども企画しており、育成馬とは趣は違いますが楽しんでいただけると思います。

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覆馬場において、調教前の歩様チェックに際して、各馬の説明に耳を傾ける青年部の皆さん(写真提供は齊藤宗信氏)

調教騎乗における拳と手綱の持ち方(日高)

若手の職員や研修生などに、調教騎乗における拳(こぶし)と手綱の持ち方についてよく質問を受けます。私は基本的には、手綱はダブルブリッジ(図.2 参照)で持ち、手綱を握る拳は、キ甲を通る「サイドレーンの様な拳」が理想だとシンプルに考えています。また安全のためにネックストラップ(馬の頚に掛けた皮ひも)も併せて持つように指示しています。

サイドレーンは騎乗せずに馬を御すときに、馬の頭頚の位置を理想的な位置にコントロールするための馬装具です。育成馬に対しては下の図.1 の様に、馬の頭の位置が理想的になる長さに設定し、制御がきつすぎなり過ぎないように、馬のキ甲を交差させて用います。中間にあるゴム環が緩衝作用を担い、このゴムと同様の役割を拳が行えればよいのです。サイドレーンは規定の位置に馬の頭頚が納まっていれば馬に何のプレッシャーもかかりません。一方でその枠からはみ出そうとすれば明確に「ダメ」と制御します。この明瞭さが馬の理解を早めます。またキ甲に拳を軽く置くメリットは、馬の頚が動く基点がキ甲であり、走行時の馬の頚の動きを妨害することが少ないからです。両足でアブミに立ちふくらはぎで馬とコンタクトを取る調教騎乗においては、よほどのバランス感覚を持った熟練した騎乗者でなければ、手綱を持つことだけでは拳を一定の位置に置くことは困難です。ましてや相手はまだ走行の安定しない若馬なのです。押さえつけるような硬い拳ではなく、弾力のあるゴムをイメージして、そっと拳をキ甲に添えることの大切さを伝えています。持ち上げる様な高い位置の拳、頚にまで下げた低い拳は騎乗者にとってバランスが悪いだけでなく、馬自身の自然な動きまでも阻害してしまうため慎みたいものです。

また、ダブルブリッジは、手綱を二重にして持つため握りを強くすることができ、行きたがる馬に、じっと我慢させる場合には特に有効な持ち方です。また安全の面でもキ甲の左右に拳を分けて位置させることにより、馬が急反転した場合などにもバランスを崩しにくくなります。どんな時でも、少なくとも片手だけ手綱を2重に持つシングルブリッジ(図.3参照)にすることだけは心がけたいものです。

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図.1 馴致段階でのサイドレーンの装着。キ甲の部分で左右のサイドレーンを交差させる。このイメージを騎乗者の拳にも求めています。

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図.2 ダブルブリッジの持ち方

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図.3 シングルブリッジの持ち方

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図.4 駆歩騎乗時の適切な拳の位置。サイドレーンの様な拳のイメージを大切に。(モデルはBTC研修生と研究馬)

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図.5 ブリッジにしていないと、腕が開いてバランスを崩してしまう危険性が高くなります。手綱のブリッジは、馬のとっさの動きに対して、バランスを崩すことが少なくより安全と考えています。(モデルはBTC研修生と研究馬)

順調に調教が進んでいます(日高)

ここ2週間、連日厳しい寒さの続く浦河ですが、先日はマイナス19度まで冷え込みました。地球温暖化の影響もあるのか、育成牧場では数10年来マイナス20度の大台は記録されていないと聞いており、さらに寒さの増すこれから2月末までには経験できるかもしれません。その一方で、降雪は少なく、アクセス路が確保できるため、年が明けてからも順調に週2回の1,000m屋内坂路馬場でのスピード調教が積めています。

現在、意図的に若干牝馬の調教を遅らせており、坂路では、牡馬は2本(2頭併走で2本目のスピード指示は最後2ハロンを18秒-18秒)、牝馬は1本(2列縦隊でスピード指示は最後2ハロンを22秒‐20秒)としています。牝馬の調教を遅らせている理由としては、経験的に冬の寒い時期から調教量を増やした場合、故障が多く精神的にもテンションが高くなり飼いの食いが落ちてしまうなどの難しさがあるからです。最近のデータでは、季節繁殖動物として春に発情の始まる牝馬は、冬期間は卵巣が活動しておらず性ホルモンが動いていないことがわかってきており、そのあたりのことも牝馬調教の難しさに影響しているのかもしれません。

4群に分けて馴致を行いましたが、群間の運動内容格差は徐々に詰まってきています。その一方で、徐々に四肢の熱、すくみなどの運動量の限界を示すサインを見せる馬も出てきており、これまで以上に注意を払いながら調教を進めていかなければならない段階に入ってきたと感じています。

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厩舎地区から屋内坂路馬場 約2km離れた覆坂路に向かう育成馬達。

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 1,000m屋内坂路馬場での併走調教。スピード指示は、最後の2ハロンを18秒‐18秒。右はハートフルソングの06(♂:父クロフネ)、左はアーチェリーの06(♂:父シルバーチャーム)。非常に軽快なフットワークで、計測されたタイムは3ハロンの合計で58.1秒(ハロンごとでは21.6→18.4→18.1秒)。持ったままの指示で馬に余裕のあるこの時期としては、蹴り合いなどの事故を防ぐには理想的な間隔を保った併走だと思います。これから求めるスピードと距離がさらに高くなるにつれて、併走での馬の間隔は詰めていくことになります。

より良い育成を求めて(日高)

今回新しく日高育成牧場で育成馬日誌を担当することになりました。よろしくお願いいたします。

前任者の最終コメントにもありますように、育成中の56頭の馬達は順調に馴致調教を積まれてきており、私は非常に良い状態で育成担当のバトンを引き継ぎました。この状態に満足することなく「強い馬づくり」を目指して、よい伝統は着実に受け継ぎそのレベルを維持していくとともに、新しい視点からさらに色々な取り組みをしていきたいと考えています。その中で私が考え感じたことなどを織り交ぜて、試行錯誤の心の機微を少しでも皆様にお伝えできたらと思っています。これまで同様これからの日誌も楽しんでいただけたら幸いです。

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気持ちも新たに、高い頂を求めて。山は日高山脈の名峰で、日高育成牧場の背後にそびえる野塚岳(1353.2m)です。馬はナナコフレスコの06(父:コマンダーインチーフ)。活躍中のエイシンパンサーの妹です。

JRA育成馬の近況(日高)

今回はJRA育成馬たちの近況を紹介したいと思います。

第1,2群の牡馬は12月21日より2本の坂路調教を行っています。坂路2本は若馬にとってかなり強い運動負荷となるため、例年開始時期には頭を悩ませていますが、本年度は馬の動きや手応え、調教後の息遣いや息の入りなどから十分に体力がついていると判断して、初めて年内に2本目の坂路調教を試みました。1本目は集団でハロン22秒程度、2本目は2-3頭併走でハロン18秒程度の速度で、もったまま楽な手応えで駆け上がってきます。

第1,3群の牝馬は屋内800mトラックで1000mの駈歩を行った後に、集団でハロン20秒程度の坂路調教を1本行っています。牝馬は運動強度が上がると特に飼葉食いが悪くなる場合があるので、様子を見ながら慎重に調教を進めています。

第4群の馬は屋内800mトラックで、ハロン24秒程度の速度で、距離を伸ばして1600mの駈歩を行っています。今後、馬の状態を見ながら調教進度を上げていきたいと思っています。

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2本目の坂路をハロン18程度で併走する第1,2群の牡馬。右はマイネマリエの06(牡:父バブルガムフェロー)、左はリッショウスキーの06(牡:父ジャングルポケット)。

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集団で坂路調教を行う第1,3群の牝馬。先頭右端はミロヴァダンスの06(牝:父スペシャルウイーク)、中央はダンシングザードの06(牝:父ネオユニヴァース)、左端はチッキーズディスコの06(牝:父シンボリクリスエス)

本年度は前の馬について我慢することや馬込みの中でも折り合いをつけることを目的として、屋内800mトラックでも集団調教を行っています。直線の坂路と違い、コーナーが結構きついため、騎乗者の技量は要求されますが、有効な隊列ではないかと思っています。

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800m屋内トラックで集団調教する第1,2群の牡馬。先頭の右はシュバルブランの06(牡:父シルバーチャーム)、左はシラーの06(牡:父マイネルラヴ)

例年、跛行等の運動器疾患で長期の戦線離脱を余儀なくされる馬に悩まされるのですが、幸いなことに現在のところ全頭が順調に調教を実施しています。本年度は体力のある馬はより強く、無理をしない方がよいと判断した馬はゆっくりというように、個体の状態により調教進度の差を大きく設けていることが特徴です。また、毎日ウォーキングマシンを活用し、運動時間を長くしていることや馬場管理もこの結果に結びついているのではないかと考えています。

屋内800mトラックはオイルコーティングした砂にゴムチップを混ぜたオイルサンドという素材で、今話題のポリトラックにちょっと似た特性を持つ馬場です。馬場管理は調教の合間に2回と終了後の計3回ミキシングハローを用いて蹄跡を均し、ミスステップが起きにくいようにしています。また、定期的な散水やレベルハローを掛けてクッション砂厚を10cmの均等な深さに保つことで、常にクッション性がよく、しかもグリップ力に優れた馬場を維持できるように努めています。

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ミキシングハローはクッション砂をほぐす爪ハローと転圧するローラーを組み合わせたハローです。左はハロー掛け後の状態です。

今回で育成馬日誌の担当は最後になります。次回からは後任が引き継ぎますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

BTC利用者との意見交換会(日高)

今年5回目を迎えたBTC利用者との意見交換会は、「坂路調教の効果と馬場の特性」というテーマで12月12日(水)に行いました。昨年700mから1000mに延長したことで調教強度が増して、トレーニング効果が上がった坂路馬場、今注目されているニューポリトラックを含めた馬場の特性等、安全かつ効果的なトレーニングをコンセプトに意見交換を行いました。このように利用者同士がお互いに刺激を与えあえる環境にあることがBTCの強みであり、利用馬の活躍にも繋がっているのではないかと思います。

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意見交換会風景:気楽に参加できるのがこの会の特徴です。

また、11月29日(木)には総研から笠嶋研究役を招いて、獣医師を対象として不治の病といわれる屈腱炎について技術講習会を開催しました。胸骨の骨髄液を採取して、培養した幹細胞を移植する屈腱の再生療法への関心は高く、特に再生療法は万能な特効薬ではなく、正しい知識を理解したうえで治療を行う必要があるという言葉が印象的でした。

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胸骨の骨髄液を採取する場所をエコーで確認しているところ。第3あるいは第4胸骨腔から採取します。

JRA育成馬の紹介はこれまで馴致開始の早い第1・2群を中心にお伝えしてきましたが、いよいよ第3群の牝馬も12月12日から坂路調教を開始しました。また、馴致最後の第4群も800m屋内トラックで駈歩調教まで進み、全馬の足並みが揃う日は遠くないようです。

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第3群の坂路調教(一部第1群の牝馬を含む):初日にしては真直ぐ走ってくれました。集団調教の左からナイスジュノーの06(牝:父シルバーチャーム)、チケットトゥフライの06(牝:父ブライアンズタイム)、シルクマーメイドの06(牝:父コロナドズクエスト)、ディアンの06(牝:父マリエンバード)、メローホリデーの06(牝:父バブルガムフェロー)、ハッタロッチの06(牝:父アグネスデジタル)

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第4群の800m屋内走路での調教:1列縦隊で前の馬について走ります。徐々に真直ぐ走れるようになってきています。先頭右からフジノバンナの06(牝:父ステイゴールド)、ナナコフレスコの06(牝:父コマンダーインチーフ)、エルカーサリバーの06(牝:父サニングデール)