北海道で1歳馬セリ開催される

79日には日本競走馬協会主催のセレクトセール、16日には日高軽種馬農業協同組合等主催の北海道セレクションセールの各1歳セリが開催されました。セリ上場馬は前者ではセリ前々日の7日から、後者では本年度から1歳馬と当歳馬のセリ日程を入れ替えたことで、セリ前日の15日からセリ会場に入きゅうしたことで、より事前に馬をチェックしやすい体制になったのではないかと思います。

JRAでは1歳馬を購買するに当たり、血統はもちろんのこと上場される全ての馬を見て、馬体や肢勢、馬の動き等を総合的に勘案して購買候補馬を選定しています。一昨年からセレクトセールではノドの内視鏡所見と四肢関節部のX線所見、北海道セレクションセールでは四肢関節部のX線所見が開示されるようになり、候補馬選定に必要な情報が新たに加わりました。

開示情報を利用する上で大切なことは所見を的確に評価し判断することです。馬は生き物であり、全く所見もない馬は珍しいくらいで、所見があっても競走には影響がないと考えられる場合もあります。せっかく気に入った馬を所見があるというだけであきらめてしまうのはもったいないことだと思います。JRAではこれまで集積してきた種々の所見と競走期パフォーマンス成績との関連について取りまとめています。また、セリで購買される方を対象として、内視鏡検査やOCD※1に関する小冊子を作成していますので、ぜひ活用していただきたいと思います。

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セリ前日に複数の目で1頭々々念入りに馬体検査を行い、購買候補馬を選定します。

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馬体検査に併せて、歩様検査で馬の動きをチェックします。

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今年から上場者であるコンサイナーのブースが登場しました。購買者のニーズに対応する環境作りがセリ市場の活性化につながるのではないでしょうか。

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レポジトリーのX線画像のイメージ写真:球節部の種子骨の形、辺縁や線状陰影の数や太さによりG0(所見なし)からG3まで4段階に評価します。この種子骨はG2のものです。

OCD※1OCDOsteoChondoritis Dissecansの略で日本語では離断性骨軟骨症といいます。OCDは成長中の長骨と関節の表面の軟骨が正常に発達せず、軟骨としてそのまま表面に残ってしまうときに発生します。

待望の屋外1600mダートトラック開場

日高地方も長い冬が終わり、春の到来を告げる幕開けとして、日高育成牧場の屋外調教施設の1600mダートトラックが326日に開場しました。日高育成牧場は4月上旬に育成馬展示会をこのコースで開催していますが、ここ数年は開場が遅れ、展示会の1週間前ほどにやっと使用可能となり、ぎりぎりの状況で展示会に間に合わせていました。しかし、今年は暖冬と路盤改修工事のおかげで、昨年と比べて約10日早いオープンとなり、十分余裕を持って展示会に望むことができます。

そのため、昨年まではブリーズアップセール用の調教ビデオ撮影を展示会当日に併せて行っていましたが、今年は展示会とは別に46日に調教ビデオ撮影日を設定することができ、皆様に1日でも早く調教の様子をご覧頂くことができると思います。現在のところ日高からは51頭のJRA育成馬を423日に阪神競馬場で開催される第3回ブリーズアップセールに上場する予定でいます。

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初めて1600mダートトラックで駈歩を行うJRA育成馬。

 育成馬展示会はJRA育成馬のお披露目の場だけでなく、1月から騎乗研修を続けていたBTC研修生のお披露目の場でもあります。3ヶ月に渡る厳しい訓練の成果で、職員と併走してスピード調教できるまで成長してくれました。

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調教ビデオ撮影風景:左はエルソルの05(牡:父タニノギムレット)、右はグロウゲンザンの05(牡:父スクワートルスクワート)

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調教ビデオ撮影風景:左はハローヘレンの05(牡:父ヘクタープロテクター)、右はハロースィーティの05(牡:父ティンバーカントリー)

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調教ビデオ撮影風景:左はレモングラスの05(牡:父アグネスタキオン)、右はレガシークラウドの05(牡:父スクワートルスクワート)

坂路調教2本(日高)

ブリーズアップセールまで残すところ1ヶ月半となり、JRA育成馬の調教も日ごとに強さを増してきています。12月中旬からスピード調教日として週2回の屋内坂路調教を行っていますが、坂路は平地に比べて馬への負荷が大きいため、最初のうちは坂路調教1本のみとし、次に屋内800m走路で駈歩1000m後に坂路調教1本と徐々にステップアップし、2月下旬からは坂路調教2本を開始しました。

3年前に坂路調教2本を行ったときは、運動強度が強くなりすぎたせいか歩様が悪くなる馬が出たため、いつ開始するかずっと頭を痛めて、なかなか決断がつかなかったのですが、もう十分に体力がついたと判断して、牡馬を対象として行うことに決めました。

1本目はハロン20秒程度の速度として、6-7頭が1団となり駆け上がる集団調教とし、馬群の中で我慢させることを覚えさせ、2本目はハロン16秒程度で2頭併走調教としました。ほとんどの馬がじっと手綱を持ったまま楽な手応えで駆け上がり、調教後の息使いも楽で、一段とパワーアップした印象です。

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坂路1本目の集団調教:左からハローヘレンの05(牡:父ヘクタープロテクター)、オグラテスコの05(牡:父チーフベアハート)、アラビックナイトの05(牡:父コロナドズクエスト)、リキアイワンダーの05(牡:父キャプテンスティーヴ)、オグリウェルズの05(牡:父デヒア)、ハロースウィーティの05(牡:父ティンバーカントリー)

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1本目の調教を終え、2本目のスタート地点に向かうJRA育成馬。

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坂路2本目の併走調教:左からフェアリーアフランの05(牡:父バブルガムフェロー)、マチカネホホエミの05(牡:父ヘクタープロテクター)

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坂路2本目の併走調教:左からレモングラスの05(牡:父アグネスタキオン)、ミスムーンライトの05(牡:父ゴールドアリュール)

V200測定(日高)

タイトルからいきなり「V200」という聞き慣れない言葉で恐縮ですが、JRA育成馬は毎年2月と4月の2回、調教中の心拍数を測定し体力評価を行っています。

心拍数は最高心拍数※1に達するまで、速度が速くなるに従い、直線的に増加することから、下図のように心拍数が200/minのときの速度(m/min)を求めることができます。この値をV200と呼び、有酸素運動能力2の指標として用いられています。V200が大きいほど心拍数が200/minのときの速度が速く、同じ速度で走るときの心拍数は低いことから有酸素運動能力が高いことになります。

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V200の算出方法:グラフの横軸に速度、縦軸に心拍数をとり、データをプロット(青点)し、回帰直線(黒線)を引きます。そこで、心拍数が200の時の速度(赤線)を求めることで、V200(赤字)が算出できます。

V200はヒトでは個体ごとの有酸素運運動能力の科学的指標として確立していますが、馬の場合は人が騎乗しての野外試験のため、速度の規定が難しいこと、馬の情動や騎乗者の体重・技術の影響を受けることから、個体ごとの有酸素運動能力の指標としては精度が高いとはいえず、現在のところ群れ全体の調教進度の判定に利用しており、育成期の適正な調教強度を検討するうえでの科学的指標の一つとして用いられています。

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ハートレイト(HR)モニターと呼ばれるこの装置は、鞍下ゼッケンと腹帯に電極を装着することで、騎乗者の腕にはめた時計に心拍数が記録されます。

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HRモニターを装着して併走調教を行う左ヤナビの05(牝:父ボストンハーバー)、右イシノエスパーの05(牝:父キングヘイロー)。最後はハロン18秒程度で調教を行いました。

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過去9年間のJRA育成馬の2月のV200の推移:牡牝ともに02年以前より、03年以降のV200が高い傾向にあることがわかります。これは近年、JRA育成馬に早い時期からより強い強度の運動を負荷していることから、2月の時点で有酸素運動能力が高くなっているものと考えられます。

最高心拍数※1:これ以上は運動強度を強くしても上昇しないと考えられている心拍数。ヒトでは220-年齢拍/min、馬では220230/minといわれている。

有酸素運動能力2:運動能力の一つの指標で、酸素を利用してエネルギーを産生する能力のことをいう。

育成馬検査(日高)

130日(火)、31日(水)の両日、JRAの本部生産育成対策部員2名が来場し育成馬検査が行われました。検査担当の2人は前日夕方に日高入りする予定でしたが、千歳空港が降雪のため閉鎖、急遽変更した羽田-帯広便まで欠航してしまい、一時は開催が危ぶまれましたが、翌朝の帯広便で到着し、何とか検査が実施できました。

育成馬検査ではJRA育成馬の調教状況や馬体をチェックします。これらを把握した上で、ブリーズアップセールの名簿作成作業が開始されます。例年この時期には肩跛行などで休養を要する馬が出るのですが、幸いなことに本年度は現在のところほぼ順調に調教を実施できています。

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11頭立ち馬と引き馬で検査を行います。この日は小雪のぱらつく天候でしたが、翌日はなんと雨中での検査となりました(本部のある検査員が来ると必ず天気が・・・)

昨年1218日(月)に喉頭蓋エントラップメント※1整復術を実施したイナリカレンの05(牝:父マイネルラブ)は順調に回復し、14日(木)から騎乗調教を再開し、現在は他馬と同程度の調教を行えるまでになっています。同馬は臨床的には異常呼吸音等の症状はなく、全馬に実施している内視鏡検査で発見することができました。この病気に罹患した有名馬にはシーキングザパールなどがいます。JRA育成馬では過去にアスカノヒミコ03年産)が発症、手術後ブリーズアップセールで売却され中央で勝利を挙げています。2_2

屋内800m走路でハロン20秒程度の併走調教を行うイナリカレンの05(右)、左はタガノブルードレスの05(牝:父コロナドズクエスト)

喉頭蓋エントラップメント※1:喉頭蓋は喉頭の入り口にある弁のようなもので、飲み込む食物が気管に入り込まないように蓋をする役割を持っています。喉頭蓋エントラップメントは喉頭腹側にある披裂喉頭蓋ヒダが喉頭蓋の背側面を包み込む疾患で、競走馬に見られる、ノドの病気の一つです。放置しておくとプアーパフォーマンスの原因となる場合があります。手術は披裂喉頭蓋ヒダを縦正中切開することにより正常な位置に整復します。

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左は術前の映像で矢印に示すように喉頭蓋が披裂喉頭蓋ヒダに包まれている。右は術後2週間の映像で喉頭蓋が露出し正常に回復している。

BTC生徒実践研修(日高)

15日よりBTC生徒の騎乗研修が始まりました。BTCでは事業の一つとして、将来、生産地で技術的中核となるべき育成調教技術者の人材養成事業を行っています。日高育成牧場では、実際に競走馬となる若馬を経験させることを目的として、JRA育成馬や当場で生産した研究馬を用いて、秋にはブレーキング実習、年明けからは騎乗研修を実施し、バックアップしています。

彼らは訓練用馬と違い、軟らかく反応の早い若馬に戸惑い、最初はなかなか上手に騎乗することはできません。時には落馬もすることもありますが、日々経験を積むことで馬とともに成長し、卒業間近の4月上旬には当場で開催されるJRA育成馬の展示会で、訓練の成果を披露してくれるはずです。

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 覆馬場で速歩を行うBTC生徒:騎乗姿勢はまだ何となくぎこちない。

 

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 屋内800mトラックにて単走で駈歩を行うBTC生徒

JRA育成馬は現在、馴致による群分けから、牡牝による群分けに変り、牡馬は2400mの駈歩を牝馬は1600mの駈歩を実施しています。例年この時期はアクセス路が凍結して屋内坂路にいけないのですが、今年は雪がなく、週に2回ほど1000mに延長された屋内坂路でF20-18程度のスピード調教を行っています。また、馬の闘争心を養うために併走調教を行っています。

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屋内坂路馬場に向かうJRA育成馬:右手に見えるのが屋内坂路馬場。1月だというのに全く雪がない。

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併走でスピード調教を行う左はミスクラブアップルの05(牡・父シンボリクリスエス)、右はプライヴェイトアイの05(牡・父アラムシャー):徐々に力強い走りができるようになってきました。

BTC:財団法人軽種馬育成調教センターの略で、浦河町にある日高育成総合施設軽種馬育成調教場の運営・管理を行うほか、育成調教技術者の養成等の事業を行っています。

育成馬にライトコントロール(日高)

明けましておめでとうございます。本年もJRA育成馬日誌よろしくお願いします。

昨年に引き続いて、今年のJRA育成馬に1220日からライトコントロールを始めました。ライトコントロール法とは、繁殖牝馬には一般的に用いられている方法で、季節繁殖性の動物※1である馬に対して、電球や蛍光灯の照明で人工的に日照時間を長くし、性腺機能の発達を促すことで、初回排卵を早め、種付や出産時期を早めることができます。

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ライトコントロールは馬房内に100ワット電球一つを点灯し、冬至の1220日頃から4月まで、タイマーで人工的に昼14.5時間、夜9.5時間の環境を作るだけで、安価で手軽に行えます。

話は宮崎育成牧場に勤務していた10年近く前に遡りますが、冬季の育成は北の日高より南の宮崎で馬が仕上げやすいこと、アメリカの2歳トレーニングセール上場馬の調教はカリフォルニアやフロリダで行われていたことから、暖地育成に着目していました。その結果、冬の宮崎は日高と比べて日照時間は長く、気温は暖かく、性ホルモンの分泌時期が早く濃度が高いことがわかりました。性ホルモンは骨や筋肉の発育に関与しており、馬の成長が早くなっているのではないかと考えました。

そこで、昨年度日高の育成馬に光の刺激であるライトコントロールを実施したところ、牝馬の性ホルモンの分泌時期が早く、濃度が高くなること、牡馬の筋肉量の増加が多い可能性があること、冬毛の脱毛が促進されることがわかりました。冬季に気候条件の悪い日高で、早い時期に強いトレーニングが必要な育成馬には、ライトコントロールという飼養管理方法が有用ではないかと思います。今年も引き続き研究を実施しております。これまでの詳しい成績はこちらをご覧下さい

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雌の血中プロジェステロン(黄体ホルモン)はライトコントロール群が明らかに濃度が高く、早期に排卵していることがわかります。

12日には今年で97回目を迎えた新年恒例の「騎馬参拝」が行われました。人馬の無病息災を祈願し、日高育成牧場から浦河神社まで往復20kmの道のりを馬に騎乗して参拝します。浦河神社の101段の石段を駆け登る「騎馬参拝」は大勢の観客が詰めかける浦河の正月の風物詩となっています。3kiba1

浦河神社の参拝を終え、石段を降りる乗馬:テレビや新聞の報道では石段を駆け登るシーンが使われますが、実は降りるほうが数段恐いのです。4kiba2

公道を隊列を組んで進む乗馬を車が追い越しているところ:日高育成牧場から浦河神社の往復は公道を通るので細心の注意が必要。今年は雪がなくて大助かり。

季節繁殖性の動物※1:年間を通して排卵して1年中出産が可能なヒトと違い、馬は冬季は卵巣が活動を休止し、春になり日照時間が長くなると排卵が始まり交配が可能となります。通常馬の初回排卵は4月頃始まりますが、ライトコントロール法により、2-3月に初回排卵を誘発することが可能となります。

ゲート練習(日高)

日高育成牧場のゲート馴致は宮崎育成牧場と同様、ブレーキング時にドライビングで通過することから開始し、騎乗後は広いゲートから徐々に狭いゲートへと毎日通過を繰り返すことで慣らしていきます。最終的には扉を閉めてゲート内で駐立後、常歩で発進するところまで教えています。一つだけ違うところは暖か~い宮崎は練習用ゲートが屋外にありますが、寒~い日高は屋内にあることです。

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毎日、覆馬場でウォーミングアップ後にゲートを通過してから主運動を行っています。先頭はレモングラスの05(牡:父アグネスタキオン)

調教は事前にウォーキングマシンで運動後、馬装して覆馬場に集合します。そこで速歩のウォーミングアップと歩様検査を行い、馬に異常がないことを確認してから、主運動とクーリングダウンを行い、約50分間の騎乗運動が終了します。

主運動は現在、第1・2※1は屋内800m走路で駈歩2400mまたは延長された坂路1本、第34※1は屋内800m走路でそれぞれ駈歩1600mと1200mの調教を行っています。第12群の馬は単走だけでなく、闘争心を養うために徐々にスピードを増して併走調教も行っています。

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真剣な眼差しで歩様をチェックする獣医知識を持った調教責任者。初期の段階で異常を発見して対応することが大切です。

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併走調教を行う左オグラテスコの05(牡:父チーフベアハート)、右エイシンベーリングの05(牡:父カリズマティック)。徐々にスピードを上げた中で力強い走りができるようになってきました。

 1211日(月)にBTC利用者を対象とした意見交換会を開催しました。4回目となる今年は「育成馬の肢蹄管理」をテーマとして、肢軸検査2を参考にした装削蹄等、日高育成牧場の方針を話題提供した後で会場の皆さんと意見交換を行いました。育成場での調教の重要性が増す中、装蹄技術向上へのニーズは高まっています。そのためには装削蹄を装蹄師に任せきりにするのではなく、育成場の責任者や獣医師が連携してディスカッションしていく必要性を痛感しました。

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BTC利用者、装蹄師、獣医師等50人を越える参加者で、熱気あふれる意見交換が行われました。

14※1:日高育成牧場では馬の入厩日、性別、馬格、疾病、生年月日等を参考にして、ブレーキングを開始した時期で4群に分けています。

肢軸検査2:レントゲンで蹄と第1・2指(趾)骨の角度を確認する検査。3骨の肢軸が一致するように装削蹄を行います。

屋内坂路馬場リニューアルオープン(日高)

700mから1000mに延長工事を行っていた屋内坂路馬場が完成し、121日にリニューアルオープンしました。新しい馬場の感触を確かめに早速JRA育成馬を連れて行ってきました。

700mの旧スタート地点から手前側に300m延長されたコースは、新スタート地点から川に沿って緩やかな右カーブを描きながら旧コースに接続しています。馬場材はウッドチップで非常にクッション性がよく走りやすく、スタート地点から約350mは平坦で、その後200m2.5%、300m3.5%、50m5.5%の傾斜で残りがゴール前の踊り場となっています。

スタート地点は屋内直線馬場と同様な作りとなり、混雑時でもゆったりと旋回できるように改善されました。右カーブでゴール地点を視認できないため、スタート地点にはモニターが設置され、途中の状況を確認できるようになっています。屋内のため見た目はコーナーがきつそうな印象を受けましたが、騎乗した感想ではほとんど気にならないということでした。

BTC利用者が待ち望んでいた馬場の完成です。栗東や美浦トレセンでは坂路延長後に馬の故障が増えた実例がありオーバーワークへの注意が必要ですが、上手に利用することで強い馬づくりの進展が期待できる素晴しい施設の完成だと思います。

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延長された屋内坂路馬場:左手の登り口から右端までが新設された部分で、緩やかな右カーブで旧コースと接続しています。

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スタート地点:常歩でゆったり旋回しながら出発を待ちます。中央やや右にモニターと赤字でタイム計測番号が表示されています。先頭からエイシンベーリングの05(牡・父カリズマティック)、ミスムーンライトの05(牡・父ゴールドアリュール)、レモングラスの05(牡・父アグネスタキオン)、チアリーダーの05(牡・父スキャターザゴールド)

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集団で屋内坂路を駈け上がってくるJRA育成馬:先頭はミスクラブアップルの05(牡・父シンボリクリスエス)、ウッドチッブコースはクッション性がよく走りやすいコースとなっています。

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調教を終えクーリングダウン中のJRA育成馬:雪景色の日高山脈と青く澄んだ空がとても美しい。

グラス坂路で調教を行っています(日高)

日高育成牧場の「日高育成総合施設軽種馬育成調教場」には様々な調教施設がありますが、その中でも全長約2400mのグラス坂路馬場は当場自慢の馬場の一つで、景観が素晴しく施設見学のコースにも組み込まれています。JRA育成馬の第1※111月からこのコースで調教を行っています。最大勾配約4%の自然の丘陵を利用した坂路は若馬には結構タフで、調教中に鹿、狐、雉等の野生動物に遭遇することもあり、常に神経を集中させておく必要があります。また、アクセス路は砂利敷きの坂道で、最初のうちは砂利が蹄を刺激して馬は歩きづらそうでしたが、何日か経つとスムーズに歩けるようになってきました。霜が降りて馬場状態が悪化する前までの短い期間の利用ですが、屋内の恵まれた施設だけでなく、様々な環境を経験することは人馬にプラスになると期待しています。

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スタートから約600m地点で4%の勾配を上ってきた馬群が見えてきたところ。遠くには太平洋が望めます。

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スタート地点から1000mを過ぎたところ。柏の木はすでに葉を落としています。

生産地は10月を過ぎると年明けから続く、出産・種付け・離乳2・せりという多忙なシーズンが1段落し、次の出産が始まるまで、生産者や育成者等を対象とした講習会が盛んになる充電期間となります。

1030日には美浦の勢司調教師と栗東の角居調教師を迎えて、人材養成の考え方や馬のメンタルトレーニング等、強い馬をつくるために両調教師が日頃考えて実践していることについての講演が開催され、約400名の来場者と熱気あふれる意見交換が行われました。競走馬になるためにはたくさんの人の手が入ります。馬の取扱い意識が統一されることは大切なことで、今回の意見交換会は意義のある催しであったと思います。

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講演会風景:直後にオーストラリアのメルボルンカップでデルタブルースとポップロックがワンツーフィニッシュしたことで、よりインパクトの強い講演会となりました。

111日には当場主催で日高・胆振地区の獣医師を対象として「馬の上気道疾患と内視鏡検査」の講習会を開催しました。上気道疾患はせりにおける情報開示等で、生産者や購買者の関心が高まっているところでもあり、少しでも参考になれば幸いです。なお、育成期の上気道所見と競走期パフォーマンスの関連について興味のある方はJRA育成研究のデータがありますのでご覧下さい。

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馬がトレッドミル3運動中に内視鏡検査を行っているところ。上気道疾患を診断する際に馬が運動中の状態を観察することが必要な場合があります。

1※1、:日高育成牧場では馬の入厩日、性別、馬格、疾病、生年月日等を参考にして、4群に分けてブレーキングを開始しています。第1群は95日から開始しました。

離乳2:生後約6ヶ月で子馬が親離れすること。

トレッドミル3:馬用のルームランナー、人が騎乗せず馬を運動することができます。